怪・その18

「丘の洋館を目指して」

自分が学生だった頃に体験して、
20年も経ったのに
いまだに覚えている出来事です。

ある日、薄暗い海外の田舎のような道を
何かに怯えながら歩いている夢を見ました。

次の日の朝、目が覚めた時は
寝る前に見たホラー映画の影響だと思い、
あまり気に留めませんでした。

でも、それが不思議な出来事の始まりでした。

次の日、私は、
昨日見た夢の中に出てきた道を
再び歩いていました。

目が覚めてから思い出すと
明らかにその前の日に歩き終わったところから
夢が始まっていました。

それが4日ぐらい続いた頃には
私は夢の中で、
霧が立ち込める丘まで辿り着いていました。

丘の先にはほんとうに
ホラー映画に出てきそうな洋館が建っているのが見え、
この頃から夜寝るのが
無性に怖かったことを良く覚えています。

不気味な洋館なのに、
早くそこに行かなくてはならない。

夢の中で私は
早く早くと誰かに急かされるように
洋館を目指して歩きました。

10日ぐらいがたち、
やっと辿り着いた洋館の

扉に手をかけた瞬間

「だめだー」と夢の中に響き渡った声と共に

お腹に衝撃を受け、目が覚めました。

痛むお腹を見ようと上半身を起してみると、
布団に一度も入ってきたことのないうちの猫が
爪を立ててしがみついていました。

いつものように猫をなでようとして、
自分の手が震え、
異様に汗をかいているのに気がつきました。

私は猫を抱きしめ、震えながら、
朝、母が声をかけてくれるまで
動くことが出来ませんでした。

母の声がし、私が腕を解くと
猫は何もなかったように部屋から出て行きました。

それ以来、あの夢の続きを見ることはありません。
また、その猫が寝ている時に布団に入ってきたのは、
この一回きりでした。

今でも思うことがあります。
あの時、ドアを開けていたらどうなっていたのか。

あの震えを思い出すと
あまり良い結果ではなかったように思います。

(H)

こわいね!
2013-08-19-MON