怪・その14

「アパートのロフトで」

先輩はいわゆる「見える人」です。

そういった体験談には事欠かない人で、
大学の周辺でも
絶対に近寄らない場所などもありました。

私は幽霊という存在を基本的には信じていません。
それは私自身がそういった類のものを
見たことがないからです。
でも怖い話は好きで、そのときも何とは無しに、
怖い話を知らないかと先輩に聞きました。

先輩は少し考えてこの話をしてくれました。

「俺がアパートで体験した話なんだけど‥‥」

先輩は私の住むアパートの
斜め向かいのアパートに住んでいます。
比較的新しく、高めのロフトがついていて、
それなりにキレイなアパートです。

先輩はロフトに布団を敷いていて、
そこを寝床にしていました。

その日は夏から秋に変わる頃だったそうですが、
だいぶ蒸し暑い夜だったそうです。
最初は、蚊の飛ぶような音で目が覚めたといいます。

暑い‥‥とは言っても、
タオルケットをのけると蚊に刺されるかも知れない、
としぶしぶ、首のほうまでタオルケットを引き寄せて
寝返りをうとうとした、その瞬間、

ずんっと自分が重くなる気がして、
金縛りにあったそうです。

やばいやばいやばいやばい

普通の金縛りと、やばい金縛りというのは違うと
先輩は言います。

もう「暑い」という感覚は無かったそうです。
ひたすら寒い、体が動かない。
ふるえているのに体は動かない。

先輩は仰向けの状態で固まっていて、
視界の端にはかろうじて、
ロフトとキッチンを隔てる壁が見える程度。

そこで目が合ったそうです。

壁はロフト部に熱がこもらないように
大きくくり抜かれています。

女の人は微動だにせず、先輩の方を見ていました。

先輩ははじめ、不法侵入かと思ったそうです。
でもその「ありえなさに」気づき、
卒倒しそうになったといいます。

「俺んちのロフト、1.8mくらいあるんだぜ‥‥」

次の瞬間女の人は視界から消え、

『顔色が悪いですよ・・・』

と、耳元で囁いたそうです。

先輩は気絶する瞬間、
消毒液のような臭いを嗅いだそうです。

私は幽霊は信じませんが、
見える人というのはいるのだと思うようになりました。

先輩はその後も卒業するまで
そのアパートに住み続けました。

(ma)

2012-08-17-FRI