怪・その16
「後続車」


去年の今頃のことです。

蒸し暑い日が続いていました。

夜、夫が帰ってきて
いつものように晩酌をしていましたが、

「ヘンな車がいてさ」

ぽつり、ぽつり、話しはじめました。

「いつもならまだたくさん
 車が走っているんだけど、
 高速が妙に空いててさ」

「あっちはすごく雨が降っていて」

「妙に青いライトでさ」

「雨の中をぼわあーっと照らされて」

「右後方から照らされたから、
 追い抜くんだと思って、
 ちょっと左に寄せたんだけど」

「なかなか追い抜いてこなくて」

「いきなり雨が上がって」

「そしたら、後ろにいなくて」

「何キロも後ろまでずっと車がなくて」

「そのとき、そこが
 火葬場を通り過ぎたとこだって気がついて」


夫は、ふと箸をおいて立ち上がり、

隣の仏間に行き、

仏壇に手を合わせていました。

(こぢんまり)
この話、こわかった! ほかのひとにも読ませたい。
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2011-08-12-FRI