おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson976
もう歳だから、何かを諦めようとしている人へ

86歳のおかんが、
何十年と続けてきたパッチワーク教室に通うのを
辞めると言うから止めた。

私はなんかもう必死になってた。

泣きそうだった。

電話越しだけど、
ものを書く自分の内面までさらけ出して、
全力で止めた。

「やめたくないけど、やめたい。」

母の胸中には、
平凡だけど切ない理由が「2つ」あった。

…………………………

無欲な母が、めずらしく私に、

「おかきを送ってほしい。」

と、しかもたくさん頼んできた。
銀座の老舗の美味しいおかき。
涼やかな美しい花模様の箱を開けると、
一枚一枚、花と俳句がかいてある。

「お世話になったパッチワークのみなさんに、
別れのあいさつに贈りたい。」

という。

「いけん、おかあちゃん、やめちゃあいけん!」

瞬間、私は火が付いたように止めにかかった。

ひごろ、「選択は本人のしたいように」、
「家族でも本人の意志をさまたげてはいけない」、
と言っている私が、なんで止めてるのか?!

「長年続けてきた趣味をたった1つやめただけで、
ガクッとチカラを落としてしまった老人のことを
テレビでやってたよ。

たった1つやめただけで、
前後の作業がごっそり無くなってしまうって。

パッチワーク教室なら、
服を着替える、化粧する、持ち物を準備する、
バスの時間を調べる、バス停まで歩く、
帰って荷解きをする‥‥、っていう前後の
名も無き作業がごっそり無くなって、
ぜんぶ合わせるとすごい量の運動がなくなるって。

それで、がっくり、もの覚えが悪くなったり、
体力を落として老け込む人がいるって。」

私は理由をまくしたてた。
でも言うそばから、こんなこと言いたいんじゃない。
母も説得されない。

「もう歳だから‥‥。」

聞けば、

年長者が1人減り、2人減り‥‥、
とうとう、母が慕っていた年上の女性が亡くなって、
母が最高齢になってしまったんだと、
あとは母よりずっと若い人たちばかりだと。

母のパッチワークのセンスは抜群だった。
若い頃から和裁も洋裁も堪能で。
私が編集者をしてた時、
母の手製のバッグを見た執筆者の先生が、
驚き、惚れ込んで、母にバッグを発注したほどだ。
高額の対価をいくらでも払うと言われたが、
母はあくまで無償で作ってあげた。

できるのに母はいつも謙虚だ。

私はさらに、まくしたてた。

「私が大学の頃から、
おかあちゃんが心臓で入退院するようになって、
なんにもする気がなくなってたときに、
やっと見つけた趣味じゃろ?」

「私やお姉ちゃんの子供のころの服の布や、
亡くなったおばあちゃんの着物の布や、
パッチワークには、
おかあちゃんの歴史と愛情がつまっとるんで!」

「パッチワークは、
おかあちゃんの心が表現できるものじゃろ?」

ついに、母が口をひらいた。

「わたしだって、やめとうない。
やめとうないけど、やめたいんよ。」

本当は辞めたくない。

ついに本当のことを言った、と私は思った。
きっとこの心根を感じ取っていたからこそ、
私は必死になって母を止めていたんだ。

いちばん何を恐れて辞めたいのか、母にたずねると、

1つには、

「迷惑をかけたくない。」

ううーっ、わかる。

若い人の重荷になりたくないんだね、おかん。

おかんの人生は、夫につくし、子どもにつくし、
舅、姑につくし、
自分を犠牲にして、人の役に立ってきたのだ。

それが歳をとって、思うように人の役に立てなくなると、
「何もしてあげられない」、と苦しんでいた母。そこから、
「若いものの邪魔にならないように」、
ひっそり健気に生きてきたのだ。

さらに歳を重ね、体調も悪くなってくると、
いつ何時、教室で気分を悪くして、
人に迷惑をかけるようにもなりかねない。
人さまの迷惑になるのが一番嫌だと母は言う。

もう1つは、

「想うものがつくれない。」

できる人だからこそ、
できなくなっていく自分を受け入れるのが辛いのだ。

人一倍センスが良く、人一倍手先が器用、
若いときはイメージどうりに手が動いて作品がつくれた母。
いいものを見たり、技術を仕入れたり、
どんどん腕をあげていった母。

それが高齢で、できてたことができなくなっていく。
イメージしても手が追いつかない。
目も弱って、根気も続かなくなって。
昔はここまでできたのに、今はこれさえできないと、
できなくなった自分を、自分の目と手で、
これから作品をつくるごとに、認め、受け入れていかねばならない。

わかる! わかるよ、おかん!

文章を書く私だって、きっといつかぶつかる壁だ。

私も昔は2晩徹夜してとことん書いていたことがあった。
でもいまは、1晩の徹夜すら体がガタガタでできない。
もの覚えだって、情報収集力だって、
この先どんどん衰えていく。

そこへデジタルネイティブの
若くて頭も体力も優れた書き手が
どんどん出て来て、どんどん追いこしていって、
時代にどんどんついていけなくなる自分や、
書くものが衰えていく自分、
昔ここまで書けたのに、
いまはこれさえ書けなくなった自分を、
私は認めることができるだろうか?

それでも書き続けていけるだろうか?

私は、20年ネットにコラムを書き続けてきた想いを、
恥も外聞もなく、母にさらけ出した。
「つまらなくなった」と読者に言われた日のことも話した。
泣きそうだった。

最終的に私の口を突いて出てきたのは、

「それでも私はやめん。死ぬまで書く!」

「老いて、衰えた自分にしか書けないことがある!」

「おかあちゃんにも、老いた今しかつくれんもんがある。
若いときにはつくれんかった、
つくりたいとも思わんかった、
老いてこそ表現したい、できるものが必ずある!」

「パッチワークはおかあちゃんの自己表現なんじゃ。
いくつになっても想いは沸いてくる。
うまくカタチにできてもできんでも、
想いを表そうとすること自体が人は楽しいんじゃ。
人は、想いを表わさずにはおられんのんじゃ。」

母は最終的に、続けると言った。

満開の桜のように、
若いときには、たくさんの花を、
枝もたわわに一気に咲かせることができる。
それは多くの人の目を奪い、魅了する。

だけど、老い衰えた老木が、
まわりの人はもう枯れたのかと見向きもしない
忘れたころに、
ひっそり、ぽつん、とひとつ、花を咲かせたら、

それは若い木にない味わいがあり、感動がある。

未来の自分が書く、そんな文章を読んでみたい。

老木にぽつんとひとつ咲かす花。

おかんにも、未来の私にも、そして、
もう歳だから何かを諦めようとしている人にも、

枯れていく今だからこそ表現できる、
今しか表せない想いをカタチにして、

表現の花を咲かせてほしい。

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【満員御礼!】この講座は満席になりました。
キャンセル待ちも締め切りました。
たくさんのお申込みありがとうございました。

宣伝会議 表現力養成コース

編集・ライター養成講座20周年記念講座

山田ズーニー専門クラス
——–伝わる・揺さぶる!文章を書く

山田ズーニーです。
私は、これまで北は北海道から南は鹿児島まで、
大学・高校生から
ビジネスマン・プロのライターから作家まで
幅広い層に、数えきれないほど表現講座を開いてきました。
その原型が生まれたのが、
宣伝会議の編集・ライター養成講座でした。
現在も講師をつとめており、毎回、
受講者に次のような声をいただき手ごたえを感じています。

 

・自分の想いの根幹を探るという経験を
こんなにじっくりと時間をかけてやったことはなかった、
得難い経験でした。

・終了したとき、この講義の意図が
身体にしみわたるように理解できた。
コミュニケ―ションが苦手だったが、
非常に楽しく有意義に受講できた。

・自己開示が苦手だったが、一気に開くことができた。

・現実の出来事を多角的に見て、表現のヒントを探すことは
全ての実務に活かせると思います。

・自分の可能性を信じようと思えた。
自分はつまらない人間ではない。

今回20周年を記念して、ご担当者の、
「この先を行く特別な講座をひらきたい。
表現力をつけたい気持ちはあるものの、
そもそも自分に伝えたいことはあるのか、
と悩む人も多く、その人たちに、
自分を貫くテーマを発見したり、
相手の心に響くように伝えるコミュニケーション力を
つけたりできる場を提供したい。」
という志に共感しました。
2時間×12コマで、
文章表現の本格的な基礎づくりから始まって、
相手に伝わる表現、社会に説得力を持って書く、
さらに、自分にしか書けない主題を発見して書く!
までを責任を持ってサポートします。
ひとりでは気づけない自分の潜在力も、
多彩な仲間とともに引き出しあえるから開花します!
表現を通して他の受講者と心底通じ合える
「感動」の授業です。
心を揺さぶる文章を書きに、ぜひ、来てください。

あなたには書く力がある。

●詳細・お申し込み・お問い合わせは、すべて
こちらのページから
(株)宣伝会議 教育事業部 担当:小林Tel.03-3475-3030まで
*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

………………………………………………………………………

「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.com までメールでお送りくださいね。
★仕事のご依頼はここに送らないでください。
山田ズーニーtwitter( @zoonieyamada )へお願いします。
または山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をおたずねください。


表現して人とつながる勇気のレッスン!



『理解という名の愛がほしい。』
河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」
にたくさんのお申込みをありがとうございました。

大好評で即日満席、
2期、3期、4期と増設するも追いつかず、
1年待ちのウェイトリストのみ受け付けておりましたが、
現在までに12期分のお申込みがあり、
2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。

 

●この講座に対するすべてのお問い合わせはこちらへ。

お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=699

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

 

ワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」

――3回で一生ものの書く力・話す力が育つ

書くことによって、人は考える。
自分の内面を言葉で深く正しく理解する。
そのことにより、納得のいく選択ができるようになり、
意志が芽生える。

さらに、

言いたいことを、相手に響くように伝えられるようになる。
インターネット時代に、広く社会に
説得力を持って自分の考えを発信できるようになる。

書く力=想い言葉で表現するチカラを鍛えれば、
自分を知り、自分を表現することができる。

自分の想う人生を、この現実に書いて創っていける。

あなたには表現力がある。

山田ズーニーワークショップ型実践講座、
2017年6月東京で開講しました!


「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



『半年で職場の星になる!
 働くためのコミュニケーション力』
 ちくま文庫

あなたが職場の星になる!コミュニケーション術の決定版。
一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
わかりやすい報告・説明・指示の仕方、
職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
好感をもたれる自己紹介・自己アピールのやり方。
人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。


『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房</small



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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