SDGsって、なんだろう? 最近「SDGs」ということばを、いろんな場所で聞くようになりました。これって国や企業だけが守るもの? それとも国民みんなに関係するもの? 世界はいまどんなことになっていて、どんな方向に進もうとしていて、日本にいるぼくらは何をするべきなのか。知りたいこと全部ひっくるめて、「SDGsってなんだろう?」から高校生たちといっしょに考えてみました。 SDGsって、なんだろう? 最近「SDGs」ということばを、いろんな場所で聞くようになりました。これって国や企業だけが守るもの? それとも国民みんなに関係するもの? 世界はいまどんなことになっていて、どんな方向に進もうとしていて、日本にいるぼくらは何をするべきなのか。知りたいこと全部ひっくるめて、「SDGsってなんだろう?」から高校生たちといっしょに考えてみました。
先生:田中明彦さん

生徒:正則学園高等学校のみなさん
03 SDGsに「答え」はない。
──
じつはきょうの授業、
正則学園の先生たちも参加していまして‥‥。
田中
気づいてましたけどね(笑)。
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先生A
生徒から学ラン借りてきました(笑)。
わたしたちも質問していいですか?
田中
もちろんです。
では、先生たちからいきましょうか。
先生A
ありがとうございます。
もともとSDGsというのは、
2030年までに17の目標を達成しましょう、
というものだったと思います。



まだ2021年ではありますが、
いま日本はいくつくらい
目標を達成できているのでしょうか?
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田中
じつは厳密に考えるとですね、
なかなか何個とはいえないところがあります。



たとえば、SDGsの3番は
「健康と福祉」に関するものです。
この項目のなかには
「エイズ、結核、マラリアなどの伝染病の根絶」
という重要なターゲットがあります。
ここ、日本は達成できています。
ところが同じ3番には
「自殺」に関するものもあって、
そこはまだ達成できていません。
先生A
あー、なるほど。
田中
他の例でいうと、
SDGs5番は「ジェンダー平等」です。
ここに含まれるターゲットには
「女性への暴力の撤廃」だったり、
アフリカや中東アジアの一部で残る慣習で
「女性性器切除の撤廃」というものまであります。
このあたり、日本はクリアしていますが、
さきほど説明したような
「女性の意思決定参加」に関しては、
先進国のなかでも完全に遅れをとっています。



つまり、ひとつの目標のなかで、
できてるもの・できていないものがあって、
「日本は何番をクリアしている」と
はっきりいえないのが現状なんです。
先生A
よくわかりました。
ありがとうございます。
先生B
ぼくもいいですか?
田中
はい、おとなりの先生。
先生B
さきほどお話にあった
「国会における女性議員の比率」ですが、
日本がそんなに低いというのを知って、
非常におどろいております。



ただ、そういう種類のターゲットは、
国民ひとりひとりの取り組みだけでは、
なかなか変えていくのが
難しいのかなとも思うのですが‥‥。
先生はそのあたり、どう思われますか?
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田中
このSDGsっていうのは、
画期的といえば画期的なんですが、
地球上すべての森羅万象を
カバーしてるようなものですよね。
つまり、いま先生がおっしゃったように、
個々ひとりひとりの努力だけで
なんとかなるかというと、
なかなか難しいところはあるんです。
先生B
そうですよね。
田中
とりわけ日本のような先進国社会では、
SDGsのなかのもっとも深刻な問題、
たとえば貧困や飢餓や伝染病などは、
それなりに解決していたりします。



そうなると、このSDGsを
日本社会はどう扱っていくのがいいのか。
わたしの個人的な意見をいえば、
ある種の「チェックリスト」として
使うのがいいのかなと思っています。
先生B
チェックリスト、ですか?
田中
世界の目指す方向性から、
日本はどこがずれていて、
どこがうまくいっていないのか、
そういうことを知るチェックリストです。



きょうはデータが整っておらず、
ご紹介ができなかったのですが、
SDGsの12番は
「つくる責任・つかう責任」です。
消費や生産に関係した目標で、
このあたりは日本のような社会では
非常に重要なテーマです。



プラスチックを無分別に使わない。
川や海にものを捨てない。食品ロスを減らす。
そういう部分は、
日本で暮らす国民ひとりひとりが
意識できる取り組みだと思っています。



それからもうひとつ。
日本という豊かな国で暮らす者として、
1日1.9ドル、200円以下で
暮らしている人たちの状況に
思いを馳せることも大事だと思います。



ODAばかりいうつもりありませんが、
小さい国もがんばってODAしていますし、
イギリスやドイツなんかは、
目標の0.7パーセントを達成しています。



いろんな議論があるのは承知の上ですが、
そういうことに関心をもって、
どうしたらいいかを考えることは、
日本に暮らすひとりひとりにとって
大事なことじゃないかなと思います。
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先生B
ありがとうございます。
──
生徒のみなさんも、いかがですか? 
もし田中先生に聞いてみたいことがあれば。
高校生A
あの、じゃあ‥‥はい。
田中
どうぞ。
高校生A
さきほど、日本の自殺率を減らすのは
難しいとおっしゃっていたと思うのですが、
どうして自殺を減らすのは難しいのでしょうか。
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田中
なかなか難しい質問ですね。
じつは、SDGsで取り上げられている現象は、
どうやったら解決できるかが
あんまり明白じゃないから問題なんですね。
「こうやったら解決できます」
というのがわからないものばかりです。



日本の自殺率、非常に高いです。
グラフを見るとロシアもアメリカも高い。
それから、じつは日本より、
韓国のほうがもっと高かったりします。



その一方、「極度の貧困」が多い地域は、
そんなに自殺率って高くないんです。
ということは、自殺率と国の豊かさは、
そんなに関係がないということがわかります。
貧しい国だから、自殺が多いわけじゃない。
高校生A
はい。
田中
こうやってデータを比べたりすると、
世界の現状というのが見えてきます。
でも、だからといって、
「どうしたら自殺率を減らせるか」
という答えはどこにも書いていません。



だけど、こういう問題を見つけて、
この状況をなんとかしたいと思った人が、
精神医学とか、カウンセリングとか、
そういう分野で研究者になる可能性はあります。
そして、もしかしたらその人が、
自殺率を減らす画期的なイノベーションを
生み出してくれるかもしれない。



さっきもいったように、
SDGsをチェックリストとして使うと、
いまの日本にはこんな問題があるというのが、
事実として把握することができます。
どこの分野に、どんな困ったことがあるのか。
SDGsは、わたしたちに
そういうことを気づかせてくれるんです。
(つづきます)
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