地球と月と、宇宙のふしぎ。
ほぼ日のアースボール、
こんどはアプリで「月」に大変身! 
月の表も裏もまるっと見られて、
アポロ船の着陸ポイントも
写真付きでたのしめる新コンテンツです。
監修は天文学者の渡部潤一先生。

そもそも月ってどうやってできたの? 
なんで月には表と裏があるの? 
太陽系って最後どうなっちゃうの? 
月のきほんから宇宙のふしぎまで、
いろいろ先生に教えていただきます。

聞き手は「ほぼ日」稲崎です。
06 なぜ日本人は月が好きなのか?
──
日本は「十五夜」「十三夜」のように、
月の呼び方がたくさんありますが、
他の国にそういうのはあるんですか?
渡部
例えば英語圏でいえば、
クレッシェンドとかフルムーンとか、
そういう呼び方はありますが、
他の月齢を表す言葉はありません。



そもそも日本は月の名前がやたら多くて、
月齢ごとに名前が付いています。
満月を「十五夜」というのは有名ですが、
そのあとも「十六夜(いざよい)」
「立待月(たちまちづき)」
「居待月(いまちづき)」
「寝待月(ねまちづき)」とつづきます。
──
立って待ったり、寝て待ったり。
昔の人はよっぽど月が好きだったんですね。
渡部
おそらく昔から日本人は、
月に対していいイメージしかないんですよね。
一方、欧米は「狼男」のように、
満月をすこし不気味なものとして
捉えていることが多いようです。
──
空に浮かぶ月は同じなのに、
なんでそんなにイメージが違うんでしょう。
渡部
それをちゃんと研究した人は、
じつはあんまりいないんですよね。
ただ、この前、中野純さんという
暗闇を研究している作家が書いた
『「闇学」入門』という本の中に
おもしろい話を見つけたんです。
──
おもしろい話?
渡部
本の中で中野純さんは、
「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」という
谷崎潤一郎の言葉を引用しながら、
温暖で湿潤な日本の闇夜は、
月の光をまろやかにする効果があると
書いていたんです。
満月の光は暗闇を照らすという意味では
かなり強い光だと思うのですが、
日本の気候のおかけで、
それはやさしくやわらかい光になって
人々に受け入れられたというんです。



一方、アメリカやヨーロッパでは、
日本より乾燥した地域が多いですから、
月の光が透徹で冷たいものとして
人々に受けとられていたんじゃないか、と。
神と悪魔、善と悪をはっきりわける
欧米の文化的な背景もあって、
シャープな闇夜にギラギラ輝く月は、
ある種、不気味なものとして
昔から見られてきたのかもしれないって。
そんなふうに書いてあったんです。
──
なんだか説得力がありますね。
渡部
ぼくもその本を読んで、
すごく腑に落ちたところがありました。
もちろん一概にはいえませんが、
日本で月そのものを悪者にした話、
ぼくはあんまり聞いたことないんです。
妖怪なんかが出てくるとか、
そういうのはあるかもしれないけど。
──
十五夜のお月見なんかも、
収穫祭の意味もあるそうなので、
むしろ月に感謝している感じですよね。
渡部
ちなみに「中秋の名月」って、
毎年満月になるわけじゃないのですが、
2021年はちゃんと満月になります。
──
今年は9月21日ですね。
渡部
9月21日の火曜日です。
南東の空、夜9時頃が見所だと思います。
晴れるといいんですが。
──
最後にもうひとつだけうかがいます。
近いうちにやってくる
注目の天体ショーってなにかありますか?
渡部
月のことでいうなら、
2021年の11月19日に
「皆既月食にものすごく近い部分月食」
という珍しいのがあります。
──
ほぼほぼ、ってことですか?
渡部
98パーセントくらい月が欠けます。
もうそのぐらいになるとね、
ほとんど皆既月食といえるので、
月も赤くなるんじゃないかと思います。
とてもおもしろい現象ですよ、これは。
「ほぼ日」ではなく「ほぼ皆既月食」ですね。
──
なるほど(笑)。
渡部
しかもラッキーなことに、
日本では月が昇った直後から
欠けるようすを見ることができます。
だから子どもたちも見やすいと思います。
──
月食は何時頃なんですか?
渡部
ええと、何時だったっけなぁ‥‥。
写真
──
何度もすみません(笑)。
渡部
ちょっと待ってください。
(パソコンで調べながら)
この前の5月のときは、
残念ながら全国的に天気が悪かったからね。
月が出たと思ったら、
もう欠けてるような月食だったでしょう。
──
次は見られるといいですね。
渡部
はいはい、出ました。
11月19日の18時3分頃に、
月の欠けが最大になるそうです。
──
あー、それはいい時間ですね。
渡部
東京の月の出が16時27分で、
そこから欠けながらどんどん月が昇り、
地平高度が18度ぐらいのところで
最大の食になります。
それからだんだん戻って、
月食の終わりは19時47分頃です。
──
小さい子どもでも、
たっぷり観察できそうですね。
渡部
11月で外はちょっと寒いと思うので、
あたたかい格好で楽しんでほしいですね。
──
皆既月食みたいに赤くなりますか?
渡部
うーん、どうでしょうね。
正直いうとよくわかりません。
ほんの少しですが、
太陽の光が当たってるということで、
赤みがどのくらい消えちゃうか‥‥。
どちらにせよ見ものですね、これは。
写真
──
ということで、
きょうの取材はここまでになります。
先生、本日はありがとうございました。
わざわざ宇宙からお越しいただき(笑)。
渡部
ワッハッハッハ! 
こちらこそ、どうもどうも。
──
今回は緊急事態宣言もあって、
こういうかたちのインタビューでしたが、
次回は国立天文台のほうにも
遊びにいきたいと思っています。
宇宙のこと、天体のこと、
もっといろんなお話が聞きたいです。
渡部
早くそうやって気軽に会える
世の中になってほしいですよね。
いつでも声をかけてください。
──
きょうはありがとうございました。
次回、本物の先生と
お会いできる日を楽しみにしています。
渡部
はははは、そうだね(笑)。
それじゃあ、どうもねー。
(終わります)
2021-09-21-TUE
ほぼ日のアースボール 

新コンテンツ「月」登場! 
写真
ほぼ日のアースボール、
こんどは「月」になります! 
月の表も裏もばっちりのぞけて、
アポロの着陸ポイントもわかって、
月の地名や地形なんかも調べられます。

2021年9月16日(木)より配信開始。

アースボールの専用アプリを
最新バージョンにするとお使いいただけます。
秋のお月見のおともに、ぜひ!