地球と月と、宇宙のふしぎ。
ほぼ日のアースボール、
こんどはアプリで「月」に大変身! 
月の表も裏もまるっと見られて、
アポロ船の着陸ポイントも
写真付きでたのしめる新コンテンツです。
監修は天文学者の渡部潤一先生。

そもそも月ってどうやってできたの? 
なんで月には表と裏があるの? 
太陽系って最後どうなっちゃうの? 
月のきほんから宇宙のふしぎまで、
いろいろ先生に教えていただきます。

聞き手は「ほぼ日」稲崎です。
02 どうやって月は生まれたの?
──
基本的なところなんですが、
そもそも月ってどうやって生まれたんですか?
渡部
月がどうやってできたかは、
まだはっきりとわかっていません。
いまでもいろんな説があるんです。
写真
──
例えばどんな説があるんでしょうか。
渡部
昔からの説は3つあります。
ひとつは、原始の地球が
いまより速いスピードでまわっていた頃、
その遠心力で赤道部分の一部が
飛び出して月になったという親子説。



ふたつめは、
同じように地球が誕生した頃、
近くで同じような天体ができ、
それがちょっと小さかったので
月になったという兄弟説。



そして3つめは、
別のところでできた月が、
たまたま地球の軌道に近づき、
地球の重力によって捕らえられた捕獲説。
これは他人説ともいいます。
──
親子説、兄弟説、他人説。
写真
▲1977年9月11日、NASAのボイジャー1号が撮影。
地球と月が一枚のフレームに収まった初めての写真。
(写真提供:NASA on The Commons
渡部
その3つの説は昔からあるのですが、
どれも決定打にかけていたんです。
そこでいろいろ考えられた末、
最近よくいわれるのが「巨大衝突説」です。



地球ができたばっかりの頃、
地球よりもちょっと小さめの天体が
地球をかするようにぶつかり、
粉々に砕け散るという出来事があったと。
で、その破片が地球のまわりで
「周惑星円盤」というものになり‥‥。
──
周惑星円盤というのは?
渡部
「土星のわっか」のようなものです。
──
わっか。なるほど。
渡部
巨大衝突で飛び散ったガスや塵、
小天体からなる土星のような円盤が
地球のまわりにつくられ、
それがだんだん衝突・集積・合体して
月になっていったんじゃないか、と。
いま、専門家の中では、
この説がいちばん有力視されています。
──
それほどの巨大衝突が、
ほんとうに地球にあったんでしょうか?
渡部
大昔っていうとヘンだけど、
46億年前はそういう巨大衝突が
あちこちであったんだと思います。
だって、そういうことがないと
惑星のサイズも大きくならないですから。



天王星という惑星があるでしょう。
あれ、自転軸が98度傾いている天体なんです。
ほとんど横倒しになりながら
太陽のまわりをまわっているわけですが、
あれも巨大衝突が何回かあって、
自転軸がずれたんじゃないかっていわれてます。
写真
──
あの、ヘンなことを聞きますが、
そういう巨大衝突がこの先、
地球に起こりうる確率というのは‥‥。
渡部
太陽系はだいぶんきれいになっちゃったんで、
そういう意味では、
巨大な天体同士がぶつかることは
もう考えられないでしょうね。
──
おー、それはいいニュースですね。
渡部
あ、でも。
──
でも?
渡部
いや、恐竜の絶滅が6500万年前ですが、
きっかけは天体衝突といわれてますよね。
だから、5キロ、10キロの天体が
数千万年単位でぶつかることは、
確率的にいえば十分にあるでしょうね。
──
確率的にはある?! 
渡部
ま、確率的にいえばね。
──
と、ということは、
映画みたいに大きな隕石が
地球にドカーンみたいなことが!!
渡部
まあまあ、落ちついてください。
──
どうなんでしょうか‥‥。
渡部
まず、小惑星と呼ばれる小さな天体。
100メートルから10メートルという
小さなレベルのものまで含めると、
現在、太陽系の中だけで
80万個ぐらいは見つかっています。
──
80万個!
渡部
ただ、いまの科学であれば、
相手の天体さえ見つかれば、
その軌道はほぼ正確に計算できます。
そして、それらの軌道を計算するかぎり、
向こう100年から200年、
地球にぶつかるものはひとつもありません。
──
ひとつもない。
渡部
現時点ではひとつもありません。
──
でも、まだ見つかってないものが、
急に見つかる可能性はあるわけですよね。
渡部
その通りです。仮にぶつかるものが
発見されたらどうするかは、
やっぱり考えておく必要はあります。
われわれ人類は知恵がありますので、
恐竜のように受け身のままではいけない。
実際、そういう回避の策を
研究している人たちも大勢いらっしゃいます。
「プラネタリー・ディフェンス」という分野で、
ようするに「地球防衛」ですよね。
──
はぁぁ、そんな研究分野もあるんですね。
渡部
飛行機なんかもそうですが、
たった一度の事故が大惨事になりますので、
絶対に事故が起きないように
さまざまな技術投資をしています。



そういうものと比較すると、
地球防衛の備えは
まだまだ十分じゃないという先生もいて、
国連の場でもプラネタリー・ディフェンスが
ようやく議論されはじめています。
──
隕石が降ってきたら、
もう国とか関係なくなりますよね。
渡部
2013年2月だったかな。
ロシアのチェリャビンスクという町に、
20メートルサイズの小天体が
降ってきたことがあったんです。
──
20メートル! 
けっこう大きくないですか?
渡部
そのときは大気圏で
かなり燃えてすごく小さくなった上、
湖に落下したので町への直接的な被害は
あまりありませんでした。
途中でバラバラになって町に落下した破片は、
大きくても1センチくらいだったと思います。



ただ、隕石そのものじゃなく、
その隕石が空中をマッハで飛ぶときに発する
ソニックブーム(衝撃波)によって、
ガラスが割れたりドアが飛んだりして
1000人以上の方がケガをするという、
そういう被害はあったそうです。
──
ひえぇぇ、空を飛ぶだけで‥‥。
でも、20メートルクラスの隕石なら
大気圏がかなり守ってくれるんですね。
地球に空気があってよかった。
渡部
その点、大気のない月では
小さな天体でも燃え尽きず、
秒速数十キロというスピードで
月面にそのままぶつかります。
月のクレーターというのは、
そうやって隕石の衝突でできたものです。
──
月のボコボコしたところは、
ぜんぶ隕石が落ちた跡ってことなんですね。
写真
(写真提供:NASA on The Commons
(つづきます)
2021-09-17-FRI
ほぼ日のアースボール 

新コンテンツ「月」登場! 
写真
ほぼ日のアースボール、
こんどは「月」になります! 
月の表も裏もばっちりのぞけて、
アポロの着陸ポイントもわかって、
月の地名や地形なんかも調べられます。

2021年9月16日(木)より配信開始。

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