第10回 「みんなが喜ぶカレー」よりも。
インターネットのサイトで
カレーのお店のランキングがばーっと出るんですね。
お店を検索するとすぐ何点て出る。
ぼくは今、あの点数が低いお店ほど、
ちょっといいかもしれないと思ってるんです。
というのは、すごく点数が高くて、
何十人もが、いい点を付けてるのって、
みんなにとってそこそこいい店なんだけど、
誰かにとって特別なものにはなかなかなりえなくて。
確かに!
カレー屋さんて今、みんな、
ひやひやしてるんですよ。
それは、当のカレー屋さんが言っていた。
お客さんにインターネットで
点数書かれるかもしんないと。

面白いなあ。
そしたらね、みんな、
点数そこそこいい点を書いてくれるような味に、
カレー屋がどんどんどんどん、なっていく。
そんなふうに味を変えてったら、
簡単に言えば個性もなくなるし。
要するにさ、一般価値になってくるんですよ。
そうそう、そうなんですよね。
何の時代かっていったら商品の時代なんですよ。
つまり商品ていうのは一般価値になればなるほど、
みんなが喜んで
おいしいって言ってくれるわけだから、
お客さんが増えるじゃない。
でもね、一般価値じゃなくて、
「私にとってのこれ!」
っていうほうに、ぼくは、行くと思ってる。
ぼくもね、そっちに行くと思うんですよ。
かわいくないのに、
もうたまんなく好きだっていう。
そうなると思う。
それって離れられなくなりそうですよね。
そういうカレーがなくなるとね、
ちょっと寂しいんですよ。
だからいわゆる一般的に点が低い
カレー屋さんのカレーを
大好きだって言ってる人を見つけたら、
「この人はいったい何を見つけたんだ?!」
って。
そうだと思いますよ。
それを自分は見つけられてないんだって思うと、
うらやましい。
おふたりとも、時々、
もっとおいしくする方法があるんだけど、
あえてこうしたんです、とか言うじゃない?
はい。
ええ(笑)。
飯島さんは、プロじゃないっていうところに
いっつもいようとするじゃない。
そうですね。
そこが愉快で、
親しみなんですよね。
そうですか。
だって全然カロリー落とさないですからね。
へっちゃらで。
今はこういうの、みんな使わないんですけどね、
なんつってね、ばんばんバター入れて。

ああ、いいですよね!
いえ、カロリーは、
ちょっとは意識してます。はい。
ちょっと(笑)。
特にカレーはそれが許される分野だから、
料理の中では。
カレーの数だけ好きな人がいる、
っていうところがあるよね。
飯島さんさ、飯島さんの料理って、
一言で言ったらどういうものですか?
って聞かれたことない?
あります。
困るでしょう。
「普通です」って言っちゃいますけど。
完全に回答を放棄してますね(笑)。
結構、普通の料理を作ってるのに、
わ、飯島さん、飯島さんて呼ばれると、
いや、ほんとに普通なんですいません、
みたいな感じになっちゃうというか。
それは、当のカレー屋さんが言ってたんですよ。
みんなが求めてる料理って。
何かほんとにひじきとか、
そういうことじゃないですか、
その普通の料理を
ちょっとおいしく作るっていうことだから、
そんなに大差ないんじゃないかな、
って思っちゃうので、
「普通です」って言います。
それでちょっとおいしければ、
みんなもほっとするみたいな。

水野さんもさ、
ぼくがいちばんうまいカレーを作る!
とかって言わないでさ、
静かに、「私は本職がありますから」
みたいな顔してればいいじゃない。
カリ~番長とは言ってるものの、
一番だ、二番だのの争いに入らないじゃない。
そうですね。ぼくがお店をやらない
最大の理由はそこなんですよ。
自分のカレーがいちばんうまいと思えないから、
ぼくは相当いろんなカレーを作るし、
誰かにとって一番かもしれないけど、
誰かにとっては全然一番じゃないから、
分かります。
けれどもキャベツの千切りはぼくにとって、
一番ですからね。
確かにライスのあの食感とカレーに、
あのキャベツの食感があると‥‥
いいですよね。
まずいわけないですよね。
消化にもいいはずだし。
ぼく、今、ちょっとふっと思いつきなんだけど、
キャベツのシャリシャリを思ってたら、
生の大根の千切りって
カレーのときに一緒に付け合わせで食ってみたいな。

ああ、いいですね。
ちょっと酢漬けにして。
いいですね。
ね。福神漬けとかラッキョウがないと
寂しいじゃない、何か。
それなんかもやっぱり、
カレーはカレーでいい加減に
たゆとうていたいんだけど、
ちょっとだけ、はっきりしたものを欲しくなる、
うん、うん。
だよね。
そうですね。
大根、今度やってみようかな。
カブはあるよね。
── ピクルスにしたりしますね。
ピクルスだよね。
はい。
── ありますね。
コールスローは結構いいんですよ。
レーズン入れると、
カレーにレーズン入れたのと同じことに、
また、なったりして。
くるみもいいんだよな。
深い話から「キャベツの千切り」というキーワードで
付け合わせの話に急ハンドル。
これぞカレー座談会!
さて次回はいよいよ最終回です!(武井)
2012-01-10-TUE
前へ はじめから読む 次へ
ほぼ日ホームへ