『ちきゅうちゃん。』のこと、『ミッケ!』のこと、「子どもの仕事」をやめないこと。
糸井重里の文章に
キューライスさんが絵を描いてくれた
創作絵本『ちきゅうちゃん。』が
3月20日、
いよいよ小学館から発売になります!
先日、小学館の書店向けイベントで、
絵本の発売を記念して
糸井が、トークショーを行いました。
30年ぶりの絵本となる
『ちきゅうちゃん。』のこぼれ話から、
同じく小学館で長く続けている
『ミッケ!』にたいする思いまで。
そして最後に‥‥糸井重里は、
なぜ「子どもの仕事」を続けているのか?
前・後編でお届けします。
お相手は、小学館の田中明子さんと
喜入今日子さんです。
前編 うちにもそういうの来ないかな。
後編 おじさんとして、ちょっと味方になってみたい。
前編 うちにもそういうの来ないかな。
写真
田中
1989年に刊行された
詩絵本『おめでとうのいちねんせい』では、
糸井さんは、詩を書かれています。
糸井
はい。
田中
同書は、今も入学祝いなどで人気の
ロングセラーなんですが、
もともとは、学習雑誌『小学一年生』で
日比野克彦さん(絵)と一緒に
不定期連載されていたものですよね。
糸井
ええ。このお話をいただいたとき、
ちょうど
ぼくの子どもが小学生になるころだったので、
今なら書けるかもしれないと思って、
お引き受けして、それがずっと続いたんです。
写真
田中
その連載からセレクトしたものが
詩絵本になり、
今も脈々と受け継がれております。



そんな糸井さんに、
今年の『小学一年生』の4月号で、
久しぶりに、
詩を書いていただいたんですよね。
糸井
そうです、これも縁ですね。



絵本の『ちきゅうちゃん。』で
小学館の方とお会いしてるうちに、
『小学一年生』の方々とも
また、お付き合いがはじまったんです。
田中
ええ。
糸井
やりませんかと言われたときは
「できるかな?」と思ったんですけど。



ちょうど、娘に子どもが生まれたので、
また、気持ちが初々しくなりまして。
写真
田中
そうだったんですか。
糸井
それで「じゃ、1回だけ」って(笑)。
田中
ありがとうございます(笑)。
糸井
同じくらいの子がいっぱい集まる場面って、
世の中に、じつはあまりないでしょう。



でも、1年生の教室って、
1年生ばかりが集まってるじゃないですか。
田中
ええ、そうですね。
糸井
でも、1年生は気づいてないんですよね。



そのようすを外から見ると、
すっごくおもしろい景色だなと思って。
その感じが出たらいいなと思って。
田中
この詩は、
なんだか歌のようにも感じられました。
写真
糸井
耳から聞いたときの言葉、
というものが、ぼくはとても好きです。



ですから、書いた言葉でも、
じつは「耳で」読んでほしいなあって
気持ちがあるんです。
田中
耳で読む。
糸井
「喋り言葉のフリをした書き言葉」を
いつも書いてますし。



目を閉じても耳から聞こえてくる言葉、
というものを目で見るみたいな‥‥
ちょっとややこしい言いかたですけど。
前々から、わりに思っていたことです。
田中
3月20日には、
いよいよ絵本『ちきゅうちゃん。』
発売になりますが、
この『ちきゅうちゃん。』のお話も、
声に出して読んだときに、
ここちいい絵本だなあと思いました。
糸井
あの物語のおおもとのもとがあって、
それは、昔のマンガに、
よく、酔っ払ったお父さんが
寿司の折り詰めをぶらさげて
「ただいま~」って、
帰ってくる場面があったでしょう。
田中
はい、ありますね。
糸井
あのお寿司、憧れだったんですよ。



お父さんっていう人が、
ああやって
お寿司を持って帰ってくるのは、
さぞかしおいしいんだろうなと。
写真
田中
はい(笑)。
糸井
うちの親もお寿司持ってこないかな、
と思っていたんです。



そして実際に、何度かあったんです。
田中
折り詰めで、千鳥足で(笑)。
糸井
そういうふうにして、
ふだんは接することのなかった
「折り詰め」が、
親の気まぐれで、
外から持ち込まれるっていうことが、
家の中を、なんだか、
すごくおもしろくするなあっていう、
そういう気持ちがずっとあって。
田中
それで、このお話では、お父さんが
「ちきゅうちゃん」を
持って帰ってくるところから
はじまるんですか。
糸井
この話のお父さんは、
酔っ払ってはいないんですけどね。



でも役に立つからということでもなく、
気まぐれで
「こんなのがいたらいいだろう?」
と思って、
つかまえてきちゃったのかなっていう。
写真
田中
つかまえてきたんですね(笑)。
糸井
わかんないですけど(笑)。



お父さんとお母さんとボクだけがいる家には
ないような、そんなものを
お父さんが外から運び込んじゃった、
というような絵本を、つくりたかったんです。
田中
なるほど。
糸井
そしたら今度は、持ってこられちゃった
ちきゅうちゃんの気持ちのほうが、
気になりはじめて。



ちきゅうちゃんはしゃべらないですから、
じゃあ、
どんなお話にしていったらいいかなと。
そういうことを考えるのが、
どんどんおもしろくなっちゃったんです。
田中
ああ。
糸井
ちきゅうちゃんは一言もしゃべらない、
でも。その相手をしている
子どもや親や、
近所の人たちの気持ちは変化していく。



そのことを、
ページをめくるたびに楽しめるような
絵本があったらいいなと。



読んでもらっている子どもたちは、
「うちにも、こういうの来ないかなあ」
と思うかなあって、思ったんです。
写真
(つづきます)
2019-03-19-TUE
『ちきゅうちゃん。』
写真
文/糸井重里 絵/キューライス

出版社:小学館

本体価格1100円+税
3月20日より全国書店等で発売中です。
Amazonでのお求めは、こちらからどうぞ。
詳しくはこちらもご覧ください。
『チャレンジミッケ!⑩

まほうと ふしぎの くに』
写真
ウォルター・ウィック/作 糸井重里/訳

出版社:小学館

本体価格1500円+税
4月24日ごろ発売予定
これまでの『チャレンジミッケ!』とはちょっと違い、
"鏡"や"錯視トリック"を使った不可思議でマジカルな
世界が広がります。