緑のなかに出かけようよ。
先輩、後輩、そしてなかよし。

たのしい仲間といっしょに一泊だけ、
緑あるところに出かけてみましょう。
おなじものを食べ、火をたいて、
終わりのない夜をむかえます。

ふだんとちがうおしゃべりが花開き、
いつの日か、
「そういや、あんなこともしたよね」と思い出す
時間になるにちがいありません。
3人が訪問したところ:WOODLAND BOTHY
第21回 収集の化学変化。
写真
俺には収集の趣味はないと思ってたんだけど、
子どものころに、どういうわけか火薬をね。
みうら
火薬?
集めちゃったんだよ。
糸井
それは怖いね。
連発の、クルクルって巻いてあるやつでね。
みうら
はい、はいはい。
運動会でピストルで鳴らすやつとおんなじ。
黄色や緑や赤の、
いろんな色がついてて、
子ども心に気に入ってたんだろうね。
火薬を入れる袋を
母親に作ってもらってたくらい。
みうら
火薬の袋? 
糸井
そりゃ危ないよ。
そうだよね、お袋も、
危ないと思わなかったんだろうか、と
大人になってから考えたんだけど。
みうら
そうですよね。
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糸井
さすが伸坊んちのお袋さんだ。
実際に危ない目に遭ったんだよ。
色別に分類しなおしたときに発火して。
爆発まではいかないけど、
バーッて燃えるじゃん。
やけどもした。
それで、集めるのは
よくないと思っちゃったんだね。
糸井
そうかぁ。
俺にはそういう傾向があるんですよ、
ひとつの経験で、そうと決めちゃう。
糸井
伸坊、踏ん切りがいいんだよ。
そうなのかもしれないけど(笑)、
それでまぁ、ずっとものを集めることはしてなくて、
美学校に行って、
赤瀬川原平さんの生徒になった。
赤瀬川さんはいろいろ集める人だった。
台所マッチがおもしろいなんて言うんだ。
マッチを道で拾ったらしくて、
トラが糸巻きにじゃれてる絵でね。
みうら
はい、はい。
その話を聞いた生徒が
どこかからマッチを持ってくると、
赤瀬川さんが「交換してあげるよ」という。
というより、さらにもっと
強制的な感じで集めててさ。
みうら
はい、はい(笑)。
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俺は別にマッチなんか必要でもないし、
先生だからということで
いくつか持っていくと
「じゃあ」って、違うのをくれる。
するとなんだかマッチが増えるわけだ。
増えてくると、
「違う模様も欲しい」なんてことになってくるのね。
集めるのって、不思議だよね。
みうら
増えてくるとね。
それはすごくよくわかります。
台所のマッチに関しては、
現行で出てるデザインはある程度決まってるから、
あるところまで行くと、
頭打ちになるんだよ。
糸井
あぁ、精一杯になるんだ。
ちょっと田舎のほうに行ったりすると、
「同じ図柄だけどこんなマークが入ってる」とか、
そういうことになってくる。
みうら
デザインの細かいところが違ったり。
写真
そういうことをみんなが言い出して、
ほとんど同じに見えるものを
どんどん増やしていって、
そのうちマッチ会社に
買いつけにいったりするやつも出てきた。
糸井
あぁ。
新しいマッチがあると聞いて
慌てて買いにいく夢まで見てた。
だから、みうらさんがヘビに対して言うように、
数が集まったところで変化する感じは
よくわかります。
みうら
化学変化するんですよね。
マッチだったら、
アイドルのマッチにいったりすることも、
あるじゃないですか。
糸井
近藤真彦ね。
うん、それもわかる(笑)。
みうら
そっちいったときに、
「あ、きたきたきたきた」と、
自分でうれしいんです。
いまみうらさんが集めているものは
なんですか?
みうら
打ち出の小槌です。
よく田舎の家の床の間に置いてあるでしょ? 
前から「要らねぇな」って思ってたし、
うちの家に1個でも要らないのに、
3個だったらもっと要らないんだろうなと思って
集めだしたんですよ。
あぁ、あぁ、いいですねぇ。
糸井
はははは。
みうら
好きじゃないけど、
集めだしたら気になります。
いろんなものが打ち出に見えてきて、
最終的に地下鉄で、
なんだか打ち出のポスターが
貼ってあるような気がして、
振り向いたらドライヤーだったんですよ(笑)。
糸井
わはははははは。
写真
みうら
それは赤いドライヤーの広告でした。
「きたきた」と思って、ビックロ行ったら、
打ち出の小槌だらけのコーナーがありまして。
ドライヤーの。
みうら
その中でもとりわけ、
ダイソンのが似ていました。
真ん中に支柱が入ってて、
まさに打ち出の小槌なんですよ。
それが喉から手が出るほど欲しいんだけど、
6万くらいするんです。
さすがに手が出せない代物なので、
店頭のお姉さんのデモンストレーションを
休憩時間までじーっと見て、
終わった途端にすぐ手にとって、
自撮りしました。
そうそう、写真を撮らなきゃね。
みうら
打ち出の小槌持ってる写真を1枚撮って、
あわてて帰っている自分にどこかから
声が聞こえてきました。
「じゅん、やった、よくやった」って(笑)。
写真
(帰り道もおしゃべりがとまらない。
でも終わりはもうすぐ。明日につづきます。)
2019-12-29-SUN