小さい ことばを 歌う場所


(担当編集者、永田のレポート)


「ほぼ日手帳」に掲載することばを選ぶために、
糸井重里が書いた1年分の原稿
(「今日のダーリン」と「ダーリンコラム」)
に目を通したぼくは、
そこに「心に刺さる大量のことば」を発見して、
驚いてしまいました。

毎日毎日、ふつうに読んでいたものの中に、
こんなにも示唆に満ちたことばや
うっとりするような詩や
吹き出すようなユーモアや
ひやりとするような毒が潜んでいたのかと
びっくりしてしまったのです。
そして、自分は日々なにを読んでいたのかと、
少々、後悔もしました。

それで、抜き出した大量のことばをまとめ、
糸井重里に提案したのです。
「糸井さん、これを本にしちゃいけませんか?」と。

糸井は、よいともわるいとも言いませんでした。

ふつうに企画の提案としてとらえ、
方法によってはありうるかもしれないね、
というようなことも言いました。
自分のことばをまとめて商品にするということに対し、
そういう簡単な話ではないだろう
というようなことも言いました。
単純に、へぇ、そんなにおもしろいの?
というようなことも言いました。

思いついた企画を思いついてすぐに上司に提案する
せっかちな会社員の多くがそうであるように、
ぼくは「大丈夫です、いいです、大丈夫です」と
ばかみたいにくり返すだけでした。

そして、
せっかちな会社員から企画の提案を受けた
多くの上司がそうであるように、
糸井重里はしばらくその企画を
ちゅうぶらりんにしておきました。

それでも、やっぱりぼくは、
これは本にするべきだと思ったので、
いくぶん商品としての体裁を整えたうえで、
性懲りもなく「大丈夫です」という熱意とともに
また糸井にそれを提案しました。

でも、これは、言い訳になりますけど、
この本ほど「いいです」という観念的な拠り所以外で
おすすめしにくい商品もないと思うんです。

ときにまじめに、ときに雑談混じりに、
このちゅうぶらりんな企画をぶつけていると、
とうとうある日、糸井重里は言ったのです。

「私家版のようにして売るのであれば、
 ありうるかもしれないね」と。


(つづく)


2007-02-14-WED