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本の半分を無料公開します

『岩田さん』の第一章、第二章、第三章を、読んでみてください。糸井重里が岩田聡さんについて書いた、『抱きしめられたい。』もあわせてどうぞ。

任天堂の元社長、岩田聡さんのことばを集めた本、
『岩田さん』の前半3章を無料で公開します。
すでにたくさんの人に読んでいただいているのですが、
もっと多くの人に、本のことを知っていただきたくて。
また、糸井重里が書いた原稿からつくった
『抱きしめられたい。』という本のなかで、
亡くなった岩田さんについて糸井が書いた
たくさんのことばも合わせて公開いたします。

それでは、お読みください。

●もくじ

第一章 岩田さんが社長になるまで。

高校時代。プログラムできる電卓との出会い。
大学時代。コンピュータ売り場で出会った仲間。
HAL研究所黎明期とファミコンの発売。
社長就任と15億円の借金。
半年に1回、社員全員との面談。
もし逃げたら自分は一生後悔する。
◆岩田さんのことばのかけら。その1

第二章 岩田さんのリーダーシップ。

自分たちが得意なこととは何か。
ボトルネックがどこなのかを見つける。
成功を体験した集団が変わることの難しさ。
いい意味で人を驚かすこと。
面談でいちばん重要なこと。
安心して「バカもん!」と言える人。
プロジェクトがうまくいくとき。
自分以外の人に敬意を持てるかどうか。
◆岩田さんのことばのかけら。その2

第三章 岩田さんの個性。

「なぜそうなるのか」がわかりたい。
ご褒美を見つけられる能力。
プログラムの経験が会社の経営に活きている。
それが合理的ならさっさと覚悟を決める。
「プログラマーはノーと言ってはいけない」発言。
当事者として後悔のないように優先順位をつける。
◆岩田さんのことばのかけら。その3

第一章岩田さんが社長になるまで。

高校時代。プログラムできる電卓との出会い。

 高校生のとき、まだパソコンということばもないような時代に、わたしは「プログラムできる電卓」というものに出会いました。それで授業中にゲームをつくって、隣の席の友だちと遊んでいたのですが、思えば、それがゲームやプログラムとの出会いですね。
 その電卓はヒューレット・パッカードという会社がつくったもので、アポロ・ソユーズテスト計画のときに宇宙飛行士が持っていって、アンテナの角度の計算につかったというふうに語られていました。当時、とても高かったんですが、皿洗いのバイトをして半分くらい貯めたら、残りを父親が出してくれました。
 その電卓にはとてものめり込みました。専門誌なんてもちろんありませんし、誰も教えてくれませんから、とにかくひとりでやるわけです。試行錯誤していると、そのうちにだんだん「あ、こんなこともできる、あんなこともできる」とわかってくる。
 いま思うとそれはかなり特殊な電卓で、「=」のキーがないんです。たとえば1と2を足すときは「1」を押したあとに「ENTER」のキーを押すんですね。で、「2」を押して、最後に「+」を押すんです。どこか、日本語のようでもあって、「1と2を足して、3と4をかけて、12を引くと、いくらですか?」というようなかたちで入力していくんですけど、もう「=」がないだけで、ふつうの人はつかおうと思わないじゃないですか。そういうものを自由につかいこなすというのが、当時の自分にとっておもしろいわけです。
 そんなふうにして、なんとか完成させたゲームを、わたしは日本のヒューレット・パッカードの代理店に送ったことがあるんです。ものすごく驚かれたらしくて、「とんでもない高校生が札幌にいるらしいぞ!」と先方は思ったそうです。いまでいうと、任天堂にどこかの高校生が明日売れるような一定の完成度のある商品を送ってきたような驚きがあったんじゃないでしょうか。でもその当時、わたし自身は、自分がなにをしたのかという価値がまったくわかっていなかった(笑)。
 そして、わたしがその電卓にのめり込んだ2年後ぐらいに、アップルコンピュータのマシンが世の中に出回ってくるんですね。
 そういった経緯で、初期のコンピュータに触れてすぐ、わたしのコンピュータへの幻想はなくなりました。コンピュータは、なんでもできる夢の機械ではないとわかったんです。別の言い方をすると、コンピュータが得意なことはなにか、そして苦手なことはなにか、というようなことが、高校生のときに一応ちゃんとわかっていた、ということです。
 また、わたしのつくったその電卓のゲームをたのしんでくれる友だちが、たまたま自分の隣の席にいたということも、とても大切なことでした。
 その子は、ちょっとおもしろいやつで……なんていうか、わたしがつくったものをよろこんでくれる、わたしにとっての最初のお客さん、ユーザー第1号だったんです。
 人間はやっぱり、自分のやったことをほめてくれたりよろこんでくれたりする人がいないと、木には登らないと思うんです。ですから、高校時代に彼と出会ったことは、わたしの人生にすごくいい影響を与えていると思いますね。

第一章のつづきを読む

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岩田さん岩田聡はこんなことを話していた。

著者
ほぼ日刊イトイ新聞
発行
ほぼ日
定価
1870円(税込・販売手数料別)

任天堂の元社長、岩田聡さんのことばを集めた本。
ほぼ日刊イトイ新聞に掲載されたコンテンツや、
任天堂公式ページ「社長が訊く」に掲載された
岩田さんのことばを抜粋して再編集。
宮本茂さんと糸井重里への特別インタビューも収録。
2019年7月発売。Kindle版もあります。

抱きしめられたい。

著者
糸井重里
発行
ほぼ日
定価
1760円(税込・販売手数料別)

糸井重里がほぼ日に毎日書いている原稿から、
こころに残ることばを集めてつくる
「小さいことば」シリーズの記念すべき10冊目。
2015年に書いた原稿からことばを集めたこの本には、
亡くなった岩田聡さんへのことばが詰まっている。
2019年12月発売。表紙のニットは三國万里子さん作。