第10回 なんか描いて。

糸井 チャンスに恵まれていたとはいえ、
就職活動みたいなことも、したんですか?
荒井 しましたよ。
ぼく、新聞の求人欄見るのが好きだったんで、
見ながら「あ、ここいいかも」と思ったら、
電話して、面接に行って。
で、「あなたは就職には向いてない」
とか言われて帰ってくるんです。
糸井 (笑)
荒井 下駄履いて行ったりしてましたからね。
風呂敷に絵を包んで。
糸井 だって、永島慎二さんの世界に
憧れている人だからね。
荒井 そうなんです(笑)。
でも、いまにして思えば、
「向いてない」って言ってもらえて
よかったかもしれないなあと。
糸井 そうですね。
でも、たぶん、ぼくが面接官でも
「向いてない」って言うんじゃないかな。
荒井 (笑)
糸井 つまり、ふつうの会社に就職するという、
そこの枠にはあなたは入んないほうが
いいんじゃないの、という意味でね。
あの、昔、うちの事務所に
みうらじゅんっていうやつがやって来てね。
そのころ、大学生だったんですけど。
荒井 はい。
糸井 これは「向いてない」って、
一発でわかりましたよ。
一同 (爆笑)
糸井 あのとき、もしふつうに就職してたら、
いろんな人たちが大損害ですよね。
荒井 ふふふふ。
糸井 つまり、地方のみやげ屋も、ゆるキャラも、
ひょっとしたら仏像も、
いまのみうらじゅんがいないと
けっこうな損害でしょう、きっと。
荒井さんにしても、就職して、
例えば小さい事務所のデザイナーとかに
あっさり収まってずっと働いてたとしたら、
いまの荒井作品を好きな人たちが
大損害を被るところでしたよ。
荒井 デザイン事務所にも
何度も面接に行きましたけどね。
一度は、「来てくれ」って言われたのに
なんだか会社の規模が大きすぎるなと思って
断って、怒られたり(笑)。
糸井 でも、基本的には、焼鳥屋と、
頼まれ仕事のイラストレーター。
荒井 そうですね。
なんか頼まれては描いて。
糸井 その道からここまで来たっていうのは
もちろんラッキーもありますけど、
それ以上に、やっぱり、実力ですよね。
だって、うかがってると
仕事が一回で終わってないですから。
同じ人たちから何度も頼まれている。
それは、力がないとできない。
荒井 頼まれましたねぇ、とにかく。
学研とか、毎日新聞社とか、
机用意しようかってぐらい
なんか、いろいろ頼まれちゃって。
糸井 小さいものから、大きいものまで。
荒井 そうですね。いわゆる、
「この空きスペースになんか描いて」
っていうのがはじまりなんですよ。
糸井 「なんか」ね(笑)。
荒井 そうそう(笑)。
いろんな場所に空きスペースって
できるじゃないですか。
そこに「なんか」って頼まれて、
いいですよ、って言って、
ササッと小さい鳥とか描いて
喜ばれるわけですよ。
で、「1点、1800円」とかって言われるから、
もう、「やったー!」って。
一同 (笑)
糸井 いや、よくわかる、わかる。
荒井 だって、
「10点描けば18000円か」って(笑)。
糸井 よくわかる、よくわかる。ぼくも、
「コピー1本書けば4000円とか5000円になる」
っていうのが、コピーライターを目指した
大きな理由のひとつでしたから。
当時、工事現場とかで一日肉体労働して
2300円とかだったんで。
荒井 うんうんうん。
糸井 それが「1本4000円」ですからね。
え! え! って、ぶっ飛びましたよ。
荒井 あと、自分が得意なところで、
っていうのがうれしいんですよね。
糸井 そうそう(笑)。
荒井 だってオレ、小学校のときから
おんなじ頼まれ方してるもの。
糸井 「なんか描いて」って。
荒井 そうなんです。
その延長線上にあるっていうか、
ああ、あの「なんか描いて」からはじまって
やっとお金がもらえる立場に
なったんだなぁっていうのは、
当時、すごく思いましたね。
糸井 「なんか描いて」っていうのは、
自分の肩書というか、職として最高ですね。
荒井 そうですね(笑)。


(つづきます)


装丁の美しさにハッとしました。
こんなにたくさんの色が、全部キラキラ輝いています。
喧嘩していておかしくないのに。
この絵のような気持ちになりたいと思いました。
(ちかティ)

からだの中にためこんでいた悲しいことが
うれしいことになってからだの外に出ていくような
ときどき涙がにじむあたたかさです。
(大脱走0617)

自分の中の子どもを、公園で遊ばせる。
公園の存在に気づいたら、今日が色を増す。
世界は、ほんとは、もっと鮮やかでした。
ありがとう。
(香)



2010-06-24-THU