「これをやりなさい」ということを、いっさい聞かなくていい世界がある。 前川清さん、糸井重里とともに、矢野顕子さんに会う。 「これをやりなさい」ということを、いっさい聞かなくていい世界がある。 前川清さん、糸井重里とともに、矢野顕子さんに会う。
前川清さんと矢野顕子さんは、たがいに何十年ものキャリアを持つ音楽家ですが、関わってきた音楽の種類と仕事のしかたが、少しずつ違っていました。このたびふたりがデュエットソングを歌うことになり、改めてその「違い」に驚くことに。糸井重里をまじえて、いま、「歌に対する考え」がじわりとスパークします。全8回、前川さんが次の扉を開くまで、ぜひおたのしみください。 前川清さんと矢野顕子さんは、たがいに何十年ものキャリアを持つ音楽家ですが、関わってきた音楽の種類と仕事のしかたが、少しずつ違っていました。このたびふたりがデュエットソングを歌うことになり、改めてその「違い」に驚くことに。糸井重里をまじえて、いま、「歌に対する考え」がじわりとスパークします。全8回、前川さんが次の扉を開くまで、ぜひおたのしみください。
第5回 糸井、たのしい歌を作るのは知性が必要と言う。
写真
矢野
いままで自分で
歌いながらつい涙が出てきちゃうようなことって
ありましたか?
前川
なんなんでしょうね、こんなぼくでもときどき、
年に1~2回あります。
いつも歌ってる歌なんだけれども、
自分の気持ちが違うんでしょう。
いつもいつも同じ歌を歌ってるはずなのに、
イントロから‥‥。
矢野
グッときちゃう。
前川
2回目に歌うときもそうかなと思ったら、
もう2回目はぜんぜん‥‥(笑)。
その場のお客さまの雰囲気もあるんでしょうね。
矢野
私は、自分の歌を聞いてくれているお客さんが、
何かを思い出されたのか、客席で泣いてて、
それをもらい泣きをすることがあります。
「やめて」とか思うんですけど、泣いちゃう。
前川
ぼくはないですよ。
逆に「なんで? ここで?」と思います。
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糸井
おふたりはものすごく違うんだけど、
お客さんとしては両方いけますよ。
ぼくはどっちの店もごひいきです(笑)。
不思議だなぁ。



まずは、「心を込めて」みたいなことが、
あんがい嘘だなというのはよくわかるんです。
込めたからいいってもんじゃないのは、
素人見てればよくわかります。
矢野
そうね。
込められても困る場合がありますね。
糸井
込めないでくれという人のほうが、
込めてますよね。
世の中のカラオケは込めてますよ。
前川
歌い手でも、演歌系は込めてる人がいます。
歌詞に「悲しい」とかなんか書いてあるけど、
「そんな、この世界で悲しい人が、
この歌を聞いてる人のなかにいるわけないじゃん」
と、ぼくは思ったりします。
矢野
でも例えばほら、
「悲しい酒」とかなんかは
状況描写がそんなにされていない、
ト書きみたいな歌詞だけれども、
美空ひばりさんが歌ってるのを聞いて、
たまたま自分がそういう状況だったりしたら、
あれは泣くなぁ。
前川
それはありますね。
糸井
歌って、まずは放っておけば
悲しいものなんじゃないでしょうか。
全音符でひとつの音を「ドー」と出すだけだったら、
もうそれだけで悲しいでしょ? 
だから、たのしい歌を作るのは、
知性がいるんじゃないかな。
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矢野
それは、武満徹さんも言ってたな。
私がデビューしたての頃、
ラジオ番組をやってたんですが、
武満さんがゲストで来てくださったことがありました。



私はものすごく生意気だったから、
「武満さんは曲でどういうことを
表現したいと思ってるんですか?」
なんてことを聞いたわけ。
そのとき武満さんは、
「ぼくは、生きていることの悲しみを
表現したいと思っています」
とおっしゃいました。
こっちはわかんないもんだから、
「ほぉー」みたいな感じで聞いちゃった。



でも、年とってきたら、
生きてるだけで悲しいってことが、だんだん‥‥。
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糸井
そうそうそう。
矢野
ほっとけばどんどん悲しくなるのが人生だし、
音楽もそうかもしれない。
そうであるならば、たのしくするためには、
やっぱり理知的な何かが必要ですね。
糸井
そう。工夫が必要になる。
矢野
そうしないと、そうならない。
糸井
誰かと誰かがくっついたときには
誰かがフラれてるわけですよ。
受験で受かったら誰かが落ちてる。
何やったって絶対に「もののあはれ」です。
これをおおもとに考えたうえで、
「手拍子を入れましょう」
「音を刻んでタタッタッタとやってみましょう」
という工夫があるわけです。
前川
それは少しわかります。
ショーを演る人って、
そのあたりのことをしなきゃいけないんですよね。
いろんなことがあるけれども、
「その場ではたのしく」
これぐらいしか、できませんものね。
写真
矢野
そうね。
糸井
そうだと思う。
前川
そのあとなんの面倒もみれないわけで。
だから、笑っていただいたり。
糸井
悲しいんですよ、だいたいが。
それをそうじゃなく伝えたり、
悲しさをいろんなふうに味わいなおしたりするのが、
自分たちのやりたいことです。
武満さんがそれを
10代だか20歳になったばっかりの
女の子に言ったのがおもしろいね。
矢野
「どうせわかんないだろうな」と思って
おっしゃったと思いますけれども。
前川
その悲しみとたのしさが、
今回の矢野さんとのデュエットに
あるような気がぼくはします。
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矢野
今回出す歌はね、きっとみなさん
「いい曲だな」と思ってくれると思います。
糸井
今回の歌はNHKの「ラジオ深夜便」
ひと月ほど流れたらしいだけど、
ぼくの父親がね、
「ラジオ深夜便」を聞きながら寝てたんですよ。
矢野
ああ、そうなんだ。
前川
「ラジオ深夜便」聞いてる人、けっこう多いですよ。
毎日やってますから。
糸井
夜中じゅう、ずっとやってるんですよね。
父親が、寝床でラジオをつけっぱなしにしてて、
「聞いてるんだな」とわかるときもあるし、
そのまま寝てるときもある。
そういう番組でした。
矢野
何時からやってるの?
糸井
遅いんだよ。
11時すぎくらいからだと思う。
矢野
きっとタクシーやトラックの運転手さんも
聞いてくれたね。
前川
あとは、例えば魚市場であったり、
深夜出かける前に聞く職業の方も
大勢いらっしゃいますでしょうね。
糸井
あのラジオ、ほかの誰かが
どこかの場所で生きてるんだな、
という感じがわかるんです。
前川
生放送なんですよね。
まぁ、インタビューとかは
録音のこともあるだろうけど。
糸井
ながーい番組なんだよ、
6時間くらい、朝まで放送しています。
(明日につづきます)
2018-11-24-SAT
矢野顕子さんのNEWアルバム
ふたりぼっちで行こう
<2018年11月28日発売>
ふたりぼっちで行こう
前川清さんとのデュエットソング
「あなたとわたし」が収録された
矢野顕子さんの新しいアルバムです。
矢野さんが、このところステージでも展開されている
コラボレーション演奏の音楽を、
ひとつのアルバムパッケージで、
すみずみまで聞くことができる貴重な1枚です。
前川さん以外の参加アーティストは
下記のとおり(順不同敬称略)。
Reed and Caroline/吉井和哉/YUKI/
奥田民生/鹿の一族/大貫妙子/
上妻宏光/U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS/
平井堅/細美武士

このアルバムについて、くわしい情報は
特別サイトをごらんください。

Amazonでのお買い求めはこちらへ。



また、年末恒例の矢野顕子さんの
「さとがえるコンサート2018」も
開催されます。
(全席指定:¥7,560)



12月2日 埼玉県 三郷市文化会館

開場 17:30/開演 18:00



12月4日 大阪府 サンケイホールブリーゼ

(SOLD OUT)

開場 18:30/開演 19:00



12月5日 愛知県 名古屋芸術創造センター

(SOLD OUT)

開場 18:30/開演 19:00



12月9日 東京都 NHKホール

(SOLD OUT)

開場 17:15/開演 18:00



12月11日 宮城県 仙台電力ホール

開場 18:00/開演 18:30
年末年始に前川清さんの
ディナーショーや公演があります
12月2日

ランチ・ディナー付 

前川清&クール・ファイブショー

由良温泉 八乙女 夕陽の間(山形県)

開場・食事/12:00~ ショー/13:30~

開場・食事/18:00~ ショー/19:30~

昼S席27,000円 A席24,000円 B席22,000円  
夜(宿泊)S席31,000円 A席28,000円 B席26,000円 
(日帰り)B席22,000円



12月16日

クリスマスディナーショー2018

ホテル日航金沢(石川県)

一部 ディナー17:30~/ショー18:30~

二部 ディナー20:30~/ショー21:30~

S席 35,000円 A席 33,000円



12月23日

クリスマスディナーショー2018

ホテルニューオータニ幕張 鶴の間(千葉)

開場/17:45~ 食事/18:00~ 

ショー/19:30~21:00

一般 39,000円



12月25日

クリスマスディナーショー2018

ホテルオークラ福岡(福岡)

受付17:30 食事18:00 ショー19:30

全席指定 38,000円



各ディナーショーの申込みに関しては
前川清さんのステージスケジュールページ
ごらんください。



2019年1月24日(木)~2月4日(月)

50周年記念 前川清特別公演 明治座

第1部「どたばたショータイム! 冷たくしないで」

第2部「50周年記念 前川清 スペシャルステージ」

S席12,000円/A席8,500円/B席6,000円



明治座公演のお申し込みについては
明治座のサイトをごらんください。