〈ほぼ日関西版〉 明るい家族相談室 たのしきかな、家族。続編


相談10 おばあちゃんが嘘つき。

私の実家は父が購入した家で、
母、妹、母方の祖父母、犬2匹の7名が
暮らしております。
母はその立場から、
家族をうまくまとめようと孤軍奮闘しており、
犬2匹もそれにならって愛想を振りまいています。

母と犬が、そうまでしてがんばらねばならない理由は
祖母です。

祖母はほんとうに自分のことがかわいい人で、
自分を守り、有利な立場にいたいために、
なんのためらいもなく嘘をつきます。
小さな嘘ならそれほど目くじらをたてないところですが、
家族の信頼関係を揺るがすような
破壊力抜群の嘘も平気です。

思春期の妹に、
「おばあちゃんが同居して
 子どもの面倒をみてくれないなら堕ろす、と
 お母さんが言ったから、同居してやってるんだよ」
とか言ったそうです。
思春期の不安定な時期にそんなことを言われた妹は、
母に確かめることもできず、引きこもりました。

妹がそういうふうになったのが自分のせいだと
露とも思わない祖母は、
育て方が悪いと両親にぶつぶつ言い、
今度は父がブチ切れました。
祖母は嘘をつくのはもちろん、発言するときに
その言葉が相手に与える影響を全く考えない人なのです。
思いつくまま、声に出します。

父、母、妹にキレられた祖母は
立場が悪くなったと判断し、耳の遠い祖父に
「娘夫婦(私からみれば両親)が
 自分たちを疎んでいる」
という嘘を吹き込みました。
ふたりで朝ごはんを食べながら、
両親の悪口を言っているところを何度か見ています。

おかげで、実家の雰囲気は最悪です。

母には弟と妹(私の叔父、叔母)もいますが、
そんな祖母ですから、叔父はほとんど口をききませんし、
叔母は適当にスルーしています。

祖母が嘘をつくのは、おそらく
性悪説でものごとを考えるためで、
どうしても被害妄想的になるのかな、と思います。
できれば祖母にその点を自覚してもらい、
いい方向へ変わっていってもらうためには
どうしたらいいでしょうか。
私は何度か祖母と話をしましたが、
最後は拗ねて話をしてくれなくなります。

祖母が改善しないまでも、
両親が実家でゆっくりするにはどうしたらいいでしょうか。
現在両親は、祖母と顔を合わせるのが嫌で、
休日はほとんど外出、
平日も仕事から帰ると自室にこもっています。
団らんの場であるはずのリビングは、
祖母が日がな一日、テレビを見る空間と化しています。

(相談者:しぃちゃん)


答え
かおり これはまぁ、周囲のみんなが
「おばあちゃんは嘘つき」とわかっていることが
救いですね。
しかし、嘘つきとはわかっていても、
どこまでが嘘かはわからないですもんねぇ。
ほぼ日 特に、立場が悪くなったら
耳の遠い祖父に嘘を吹き込む、
これは厄介です。
次々にそういうことがあったら、
ご家族はうんざりでしょうね。

かおり よく、動物の噛み癖をなおすとかいう
「犬の学校」のようなものがありますが、
ああいう教室はないんですか?
ほぼ日 嘘をつく人用の?
かおり これからの時代、高齢化社会なので、
そういう場も必要かもしれませんよ。
でも、その学校は、若者が先生でしょうね‥‥。
年寄りは言うこと聞かんやろうな。
ほぼ日 誰も耳を貸さず、うまくいかないでしょうね。
このご家庭では、お母さんがまとめ役として
がんばってるんですね。

かおり お母さんと、あとは犬ですね。
ほぼ日 犬、大変やな。
こりゃ、家に帰りたくなくなるな‥‥。
いっそ、おばあちゃんと別居するのはいかがでしょう?

かおり そんなことを口に出そうもんなら
近所じゅうに、手をつけられない嘘を言いますよ。
「あたしを捨てようとしてる」
ほぼ日 うーん‥‥あ! いいこと思いつきました。
おばあちゃんが言った嘘を、
嘘じゃないようにするのはどうでしょう。

かおり 嘘をほんとうに実行すればいいんですね。
とんち利いてますね、わはは。
‥‥でもあかん。悪化するだけや、そんなん。
嘘で嘘を固めてくると思います。
ほぼ日 だめか。憂鬱ですね。
このおばあちゃんはきっと
家族に関わりたいんですよね。
ここまで嘘つきだと、友達もできにくいだろうし。

かおり 人って、どうして
自分が嫌われてることに気づかないんでしょう。
それは私もですけど(笑)。
あ、私は、ある程度は気づいてますけど。
ほぼ日 かおりさん、嫌われてるんですか。
かおり いやいや、みんな、あるじゃないですか。
「あの人にはたぶん嫌われてるな」とか、
ちょっと振り返れば身に覚えがあると思います。

このおばあちゃんは、自分を客観的に振り返ったり、
周りにどう思われているかを考えないのでしょうね。
もしくは、嫌われてることがわかっていても
嘘つきを変えることはできないのかもしれない。
だって自分もそうやもん。
「あの人とは合わへんのやわ」で
あきらめていることのほうが多いです。

でも、このおばあちゃんの問題は
もっと根が深いとも考えられます。
つまり「なにも考えてない」という状態です。
口からでまかせ‥‥。
ほぼ日 でまかせか‥‥。
かおり だからみんな、スルーするんですよ。
険悪な感じになりながらも、スルーする。
こうなったら、いいとこ探しましょう。
おばあちゃんのいいとこ、見つけていきましょう。
おばあちゃんの嘘を
「嫌なもの」と真に受けるから、険悪になって、
気まずいリビングルームになっているわけです。
ほぼ日 まわりが褒め出したら、性格変わるかも。
かおり 「おばあちゃん、そんな嘘よう思いつくわ」
ほぼ日 「今日もおもろいわ、おばあちゃん」
かおり 「いややわぁ、今日何個目の嘘?」
そうやって持ち上げていくのがいいですね。

もともと、おばあちゃんが嘘をつくことが
悪いのはわかっています。
でも、みんながそれでおばあちゃんを無視すると
よけいに悪化するでしょう。
どうせおばあちゃんとは家族で、
今後いっしょに住まなくてはならないのであれば、
嫌な気分でいるより、笑ってたほうがいいですもんね。
そんなんで家族崩壊してたら、
それこそ相談者の(しぃちゃん)さんや
お父さん、お母さんがかわいそうです。
家族は大事。
おじいちゃん、おばあちゃんはおそらく先に
亡くなっていくから、
先の長い家族のメンバーを重視していったほうが
いいんちゃうかな。
ほぼ日 でも、このおばあちゃんは長生きされると思います。
かおり 嘘が起爆剤となって、長生きされそうですね。
みなさん、ほんとうにさまざまな長生きの秘訣を
知っておられますね。も、そうでした。
ほぼ日 頭が紫とか。
かおり それらは長生きの秘訣やと思います。
ほぼ日 しかし、ここで問題なのは
妹とおじいちゃんですよ。
真に受けてしまってはいけないと思います。

かおり とくにポイントはおじいちゃんですね。
長年連れ添ってんのに、
こんな嘘もわからんようじゃ話になりません。
「おまえはいままでなにしてきてん?」
と言いたいです。
ほぼ日 しかし、こういうおばあちゃんのような人は
根っから嘘がうまいのかもしれませんよ。
学校のクラスにもいませんでした?
「今っ回は、ほんまやで!」
とか言う人。

かおり そりゃ悪女ですね。
おじいちゃん、ほいほいそうやって騙されて‥‥
逆に幸せなんでしょうね。
ほぼ日 それも、おじいちゃんの生き方なんでしょう。
しかし、よく考えてみると、
先週の寅さんのお父さんは
「自由に生きて、迷惑かけへんかったらいい」
「動物のような生き方ですばらしい」
というような結論でしたけれども、
このおばあちゃんも、
自分なりの自由な生き方をしてるとしたら、
これは自然な姿なんですよね。

かおり そう。本能のまんまということではね。
でも、自分に都合のいい嘘ばかり言っているので、
寅さんのお父さんよりは
先のことを考えているという状態です。頭がいい。
ちょっと小ずるいとこもある。
「憎める」「憎めない」という話で言うと、
寅さんのお父さんは「憎めない」、
嘘つきのおばあちゃんは「憎める」。
‥‥話しているうちに、
なにがいいのかわからなくなってきました(笑)。
ほぼ日 先のことを考えないほうがエライ、という話に(笑)。
かおり おかしくなってしまいそうです。
ほぼ日 おばあちゃん‥‥なんだかちょっとだけ、
小動物っぽい感じがしますよね。

かおり 小動物?
ほぼ日 じつは、小さい犬と一緒に
暮らしていたことがありまして。
モコちゃんというんですけれどもね。
うちの親も、すごい喜んで
「モコちゃんモコちゃん」とかわいがっていたんです。
でも、あるとき母親が、噛まれたかなにかで、
モコちゃんを叱ったんです。
そしたら、それまで見向きもしなかった父親のほうに
ヒューッといって、
「キューンキューン」と庇護を求めるんですよ。

かおり モコちゃん、汚いですね。
そういう、態度をコロコロ変えるところが
おもしろくて、小型犬は愛らしいんですけどね。
ほぼ日 このおばあちゃんには、その香りがします。
危なくなったらとりあえず
味方になりそうな人のところにサッと行く。
かおり 犬は家族の関係を一瞬で察知しますからね。
「ここの場合はお父さんやな」
ほぼ日 そういう勘はすごく働く。
だからこのおばあちゃんも
ただ弱いだけであって、
周囲を悪い雰囲気にすることについては
あまり意識的ではない気がします。

かおり 体が小さいだけで弱いという
被害妄想に陥りやすいのかもしれないですね。
ほぼ日 人間も、体型が人格に影響しますね。
大きい人は、デーンと構えてる人が多いと思います。
このおばあちゃん、ちっちゃいのかな。

かおり

ちっちゃそうですね。
そうでなくても、年をとると
ちっちゃくなっていきますし。
そういえばうちの父は常々私に
『ちいさい男には気をつけろ』と言ってきます。
それはちいさい男は「気がちいさそうだ」という
父の勝手な自論らしいのですが、
この小型犬説に通じるところがあるのかもしれません。
父の場合は、まぁ、自分が長身であることを
何かにつけてアピールしたいというのもあるんですけどね。
先日も 私の展示会にふらっと現れて
洋服見てるお客様たちに
『どうですか。僕、背が高いかな?』と
聞いてて皆さん閉口されていました。

失礼、では話を戻して‥‥。

ほぼ日 貫禄を出していくと、自信がつきますね。
かおり 存在感が出たら
「私いるよ」というアピールは不要ですし
嘘をつくというような細かいことはせんでええ、
ということになります。
こんなやさしい家族がいるのに、つけこむなんてね。
お父さんの家に世話になってるのに‥‥‥‥あ、
もしかして、それが嫌なのかもしれませんね。
つまり、肩身が狭いのです。
いまお住まいの家がおばあちゃんの持ち家で、
「あたしの家に住まわせたってんねん」
という状況だったら
余裕が出てくるのかも。
ほぼ日 居候だからこそ、小型犬化するんですね。
妹にわけのわからない嘘をついたのも
「同居してやってる」という自分の必要性を
アピールしたかったんでしょう。
やっぱり大型犬として、別居で
ひとり立ちしてもらうしかない。

かおり 「一家のあるじいうのは、ええもんやで」
ていうてね。
ほぼ日 「大型犬になるチャンスやで」
ていうてね。

かおり 近所に住んでもらえば、
なにかあってもすぐに駆けつけられます。
ほぼ日 なんにせよ、人間の小型化はよくないですね。
ろくなことがない。

かおり 年寄りには自信を持って
大型犬化しておいてもらったほうが、
家族としては、いいですよね。

誰にも頼らずに自活してるおばあちゃんやったら、
そんな嘘をつく必要がないと思うけど、
誰かに頼らないと生きていけないのであれば、
そうなっちゃうのかもしれません。
やっぱりずっと、死ぬときまで
自分の足で歩いていきたいものですね。
自然死がやっぱり大切ですね‥‥。
ほぼ日 すべての話がそこに行きますね。
かおり 媚び売ったりせんで済むのです。
みなさん、しっかりしていきましょう。
ほぼ日 では、今日のまとめをお願いします。
かおり わかりました。





お父さんをゲストにお迎えして ぜひ話を聞いてみたいので、 こんど戻ってきたら連絡ください。

2013-07-07-SUN

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