〈ほぼ日関西版〉 明るい家族相談室 たのしきかな、家族。続編


相談7 おばあちゃんが服を買いすぎる。

来月91歳になる、ばあちゃんのことで相談します。
ばあちゃんは娘ふたり、孫6人、ひ孫が7人いますが、
気ままに暮らしたい、といって
ひとり暮らしをつづけています。
毎日ビールを1本飲み、4つの習い事と年寄り集会で
忙しく元気にしているので
それはとてもよいことなのですが、
洋服を買いまくるので
母たち(娘ふたり)が困っています。

買いものは最初
娘のどちらかに連れていってもらってたのですが、
週1で服を2、3枚買うので
「ある服を着なさい」「そんなに買うな」
と言われるようになり、
買いものの同伴を、孫に頼むようになりました。

孫たちはそれぞれの母から
「ばあちゃんが服を買うのをとめろ」と言われました。
孫もだめとわかると、ばあちゃんは
孫の嫁、近所の若い友達、と
その触手を伸ばしてきました。
私はばあちゃんをとてもおもしろいと思っているので
(でも免許がないので買いものに連れていけない)
好きなようにさせてあげればいいと思うのですが、
母と伯母が怖くて言えません。
ばあちゃんが買う服はスパンコールがついていたり
大胆な色彩だったりするので
ばあちゃん以外に着る人がいない、というのも
母たちの反対の理由です。

新しい服が母たちに見つかると
「来年用に買った」「友達に頼まれた」など
苦しい言いわけをします。
最近では、新しい服と気づかれないように
できるだけ似たような服を買っているらしいです。
「そこまでして買うな」と母たちはカンカンだし、
ばあちゃんはどうにかして次の服を買おうとするし、
どっちかをどうにか収めて、
穏やかな親戚になってほしいのです。

(相談者:桃)


答え
かおり ご相談にお答えする前に‥‥
えー、みなさんごぶさたしています。
ほぼ日 ごぶさたしています。
お元気でしょうか。

かおり なぜ、前回の掲載から間があいてしまったかというと
このコーナーの担当のひとりが急に忙しくなって
首が回らなくなってしまったからです。
ほぼ日 首は借金です。
そうじゃなくて、目です、目が回った。

かおり ゆるゆるやっているので、
チームのだれかの目が回りだすと
掲載が止まってしまいます。
ほぼ日 なんとかせんといかん。
かおり まぁ、急を要す企画でもないし。
ほぼ日 いや、だからこそがんばりましょう。
かおり これからもぼちぼちやっていくと思いますので、
よろしくお願いします。
今日は、初出場の、妹もおります。
まき こんにちは。よろしくお願いします。
ほぼ日 まきさん、待ってました。よろしくお願いいたします。
で、今日はこの、
おばあちゃんの買いものの相談です。

かおり おばあちゃんは、ご自身のお金で
服を買ってるんですよね?
ほぼ日 そのようです。
けれども、なぜそんなに買うんだ、ということが
問題になっているのですね。

かおり いつもおんなじ服着てるより
おしゃれなおばあちゃんのほうがいいと思う‥‥。
むしろ私がいっしょに、
スパンコールの服を買いに行きたいです。
ほぼ日 そうしてほしいです。
まき おばあちゃん、そういう友達がいてないんかな。
‥‥そういえばさっき、
ここ(「ほぼ日」)に来る途中に
表参道ヒルズを通ってきたんですが、
そこで、88歳のおばあさんに会いました。
ほぼ日 知らない人ですか?
まき 知らない人です。
ヒルズの行き方を訊こうと思って
「すみません、表参道ヒルズは‥‥」
と声をかけたところ
「表参道ヒルズ、私のおうちです」と。
で、それはほんとうだったんです。
あそこ、上が家なんですね。
「よろしかったら、私といっしょに行きましょう。
 ご案内しますわよ」
と言ってくださいました。
「このあたりはね、昔は、人ひとり、
 歩いてなかったの。いまはもうねぇ」
ほぼ日 へぇえー。
まき 「私、いま88歳で、
 ここに60年くらい住んでるのよ」
その方、とても88歳には見えなかったです。
スパンコールのついた服を着て、おしゃれでした。
ものすごく元気で、
「毎日、お昼は外食よ。
 食べたいお店に、電車に乗って出かけていって
 外食してるの」
とおっしゃっていました。
そんなふうに、誰にも邪魔されずに
好きなことをなさっているから元気でいられるのかな?
と思いました。
かおり 相談者の方のおばあちゃんも、
毎日ビールを1本飲み、
4つの習い事と年寄り集会で忙しい‥‥
ということは、習い事と集会で、人と会うんですね。
人と会うから、洋服も必要です。
おしゃれもしたくなりますよ。
ほぼ日 でも‥‥週に2、3着も買ってたら、
タンスがいっぱいになってしまいます。

かおり フリマで売ればいいんとちゃう?
ほぼ日 おばあちゃんは同じような服ばかり買ってる
ということですし、
ほかの人が勝手に売っても
わからないかもしれない。

まき ばれないように、
お母さんと伯母さんで協力すればいいですね。
そういえば‥‥私は姉ちゃんの服が
転売されてるところを
発見してしまったことがあります。
かおり 私は妹から聞いただけなので
よくわからないんですけど、
QFDの服が、なにやらお惣菜屋さんに
売ってたという‥‥。
まき 800円で売ってました。
かおり まぁまぁ高いですね。
惣菜の並ぶガラスのショーケースに
QFDの服がたたんで置かれていたそうです。
まき おかずの横に、ほかにも服があったし、
ヘルメットもあった。
ほぼ日 ヘルメット?
それは‥‥フリマですか?

まき 大阪の惣菜店です。
かおり 不思議やなぁ、なんでそんなとこにあるかな。
お母さんが売った服が流れ流れたんかな?
ほぼ日 ‥‥お母さんがQFDの服を売ったんですか?
かおり 家にある在庫を勝手に
リサイクルショップに持って行くんですよ。
それで「10円にしかならなかった」とか言って
帰ってくるんです。
それを聞いて父さんがここぞとばかりに
「お前が作る服の価値は10円の価値なわけやな」
とか言います。
その後、ニュースでユニクロが
急成長と報じられてると
「ユニクロから学べ」
「こんど連れてったらなあかんな」
「いいところを盗め」
と、しつこく言われます。
こっちはぜんぜん、やってることが違うねん。
それを親はわかってくれません。
ほぼ日 うん、そうですよね、やってる方向が違う。
この相談も、お母さんと伯母さんの方向と、
おばあちゃんの方向が違います。

まき たぶん、無駄遣いしてるようにしか
思われてないんですね。
おしゃれしてるとか、たのしんでるとか、
そういう解釈をされていない。
ほぼ日 ただ‥‥これ、ほんとうに
おばあちゃん個人のお金で買ってるのかな?
家のお金を使い込んでる、という印象なのかも。
かおり それは、お母さん&伯母さんからすると
イラつきポイントですね。
ほぼ日 「私らのお金があれに消えていってんねや」
と、気が気じゃない。

かおり でも、これだけたくさん子孫がいたら、
おばあちゃんの死後に
自分にまわってくるものがあるとしてもちょっとです。
おばあちゃんがお金を遺してくれるという
甘い思いは捨てましょう。
まき そうだね。
「せめてスパンコールついてなかったら」とか、
そういう発想からして
「もらえるかもしれない」という気持ちが
そこはかとなくあるのでしょう。
かおり 話に遺産が絡んできたな。
難しい問題です。
ほぼ日 服を買う原因は
心理的なものかもしれませんよ。
買いもの依存症かもしれない。

かおり でも、このおばあちゃんはもう91なので、
この趣味はつづけたほうがいいと思います。
まき はつらつとしてたほうがいいもんね。
かおり そうしたら‥‥いい自然死を遂げられる。
ほぼ日 また自然死の話ですか。
かおり 服を好きなだけ買いながらの自然死、憧れます。
相談文の、
「母たちに新しい服を見つかると
 来年用に買った、など、言いわけをします」
ここ、いいですよね。
まき 来年があるんですものね。
かおり ときおり、年長のみなさんは
「もう明日は死んでます」というようなことを
ギャグめかしておっしゃったりしますが、
このおばあちゃんには、やる気があります。
こんなにやる気のある人やったら、
なにかできそうな気がしてきます。
うーん、おばあちゃんって、免許取られへんのかな?
ほぼ日 4つある習い事の中に
免許取得を入れたらいいですね。

かおり これだけ服が好きで、やる気があったら、
「おばあちゃん、免許取れたら好きなときに
 車飛ばして行けんねんで」
と言えば「やろうかな」と思うのではないでしょうか。
ほぼ日 若葉と紅葉、両方を車に貼らなくてはいけませんね。
まき ‥‥それか、通信販売の存在を
教えてあげたらいいんちゃう?
かおり そらあかん。
もっと買いまくってしまいます。
ほぼ日 ネットで四六時中買うことになってしまいますよ。
まき だめですね。
かおり 唯一の救いは、
おばあちゃんが通販を知らないことです。
ほぼ日 ところで‥‥。
かおり はい。
ほぼ日 あのー、ここからは余談になるかもしれないので
時間のないみなさんは
飛ばして読んでいただいていいと
思うんですけれども、
ちょっと興味が出てきまして‥‥つまり、
かおりさんとまきさんのおばあちゃんは
いったいどんな方だったんですか?

かおり おもしろい人でしたよ。
いっしょに過ごせた時間は長くなかったけど‥‥
それは、母方のおばあちゃんです。
まき おばあちゃん、四国にお嫁にいって、
嫁いだその日に離婚したと聞きました。
かおり そうそう。昔の人は離婚しないと言うけどね。
そのあとに、私たちの母のお父さん‥‥つまり、
おじいちゃんと結婚しました。
西宮で和菓子屋さんをやっていましたが、
おじいちゃんが酒好きで苦労したそうです。
いつも近所で一杯ひっかけて
線路沿いをふらふら歩いてたみたい。
母たち3姉妹が電車に乗ってると、
ちっちゃいおじさんがチンピラにかつあげされてて、
よく見ると自分の父親で(笑)。
その姉妹のなかにバスの車掌の仕事してた長女がいて、
それが警察手帳に似てたから
「ちょっと兄ちゃん、やめたれや」
と、その手帳をチンピラに見せて、
姉妹で父を救ったりしていたそうです。
その長女はジェームス・ブラウンに似ているので、
そらチンピラもびびるでしょう。
まき 「昔はチンピラも素直やったわ。
 サバイバルナイフとか出さへんし、
 すんまへん言うて逃げてったわ」
と母は言っていました。
ほぼ日 ‥‥‥すごいですね。
おばあちゃんは、その人とは離婚しなかったんですね?
かおり うん、しなかった。
まき おじいちゃんは、そんなに年をとらずに、
早くに死にました。
かおり うん。酔っ払って、頭打って死にました。
ほぼ日 え?
かおり 友達のお通夜かなにかで酔って、
調子に乗って踊って、
頭打って死にました。
ほぼ日 ‥‥‥‥!
かおり 私はもしかしたら自然死より
おじいちゃんの死に方に憧れているかもしれません。
遺伝の、その血があれば‥‥。
まき そやな。私もそう思う。
かおり いつも、ふたりで祈ってるもんね。
私はお酒を飲まないけど、
もしも飲めるようになったら、
どっかで調子に乗って踊って、なにかの角で頭を打つ。
この話、姉妹で何回もしてる。
ほぼ日 何回も‥‥。
まき 家族や親戚は
そういう伝説を遺して亡くなるのが
いいような気がするんです。
かおり この相談のおばあちゃんも、
あとになっていろんな話で
盛り上がることができます。
それがいちばんのことやと思います。
ほぼ日 そうですね。
かおり きっと、孫がいっしょに
おばあちゃんと免許を取りに行くということで
いいんとちゃうかな。
それで、伝説をいっしょに作ってあげればいい。
まき 最近は、安い服屋さんも増えてきたから、
そういうとこ、教えてあげたらいいんとちゃう?
かおり そうやね。980円とかやったら、
「一回お茶すんのと一緒だよ」と
母たちにも言えます。
しかし、激安衣料品店のなかには、
過酷な労働条件で働かされる背景があるとこも‥‥。
まき それはまた別の機会にしてや、姉ちゃん。
話長なんねん。
ほぼ日 かおりさん、まきさん、
今日もありがとうございました。
では、最後にまとめをひとつ。

かおり はい。まとめてみましょう。







関西に生まれたサガです、 あらがうのは無理と悟るべし。

2013-06-09-SUN
 

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