みんなで行った、 阿寒きのこの森。
12 美しい湖畔に、破壊の天使。

食べるためのきのこが見つかりはじめました。
「まちがいなく食べられる」ものだけを、
慎重にすこしずつ狩っていきます。
ときどき出くわす猛毒きのこに、森の怖さを感じつつ。
相変わらず夢中になって進んでいると、
目の前にうつくしい湖が‥‥。

 








社長もお手柄。  

ガサガサ、ガサガサガサ……。

「おお〜〜〜い、とったぞ〜〜い」

藪のなかからあらわれた、
ナイフを持ったおじさんは
でした。

なんでも、シロヤマイグチという
ふつうにおいしいきのこなのだとか。
新井さんに教えてもらって
とってきたのだそうです。
「俺のお手柄だあ〜」

ふっくらと、ぶあついきのこですねえ。

イグチシゲサト

こののち、このシロヤマイグチは、
きのこチームの長(おさ)の
きのこという認識ができました。
つまり、ヌメリササタケは、
さんの。
シロヤマイグチはさん担当。


シロヤマイグチ  

イグチは漢字で
「猪口」と書くようですが、
このきのこを見て
猪の口の形を連想します?
なぜそのような名前がついているのか、
よくわかりません。

猪口とは、きのこ全体を指す古語、
という説もあるみたいですが。

イグチの仲間は、傘の裏が、
シイタケやマツタケのようにひだではなく、
スポンジみたいな
管孔状になっているのが特徴です。

可食とされているきのこですが、
無味無臭なので、
特にありがたみはありません。

(写真/新井文彦)


きのうみたやつでねえが。  

ちゃわん! ちゃわん!
これは昨日みたやつです。
(正しくはアラゲコベニチャワンタケ)
昨日見たのだったら
なんとか、思い出せるくらいには
きのこアイズはストロングに
なってきた!

で、これはきのこ汁にいれるのには
適してないんでしたっけね。

「残念ながら。」

‥‥なるほど。


カワイイ。  

このきのこの形!
お菓子の
「きのこの山」に似ているなあ。

写真を整理していて
疑問におもったので、
新井さんにあとで問い合せてみると、
「古くなっちゃっているので、
 同定が難しいです。」
とのこと。

そうそう、きのこも
生えてから時間が経つと
枯れた風合いになってくるんですよね。


味わいサイン。  

目的地まで900mのサインですが、
こけがむして、
かなり味わい深くなっています。
かっこいいっす。

で、何まで900m?

たぶん。

オンネトーまで? 900メートル。

なんでものみこむ

この標識も、そのうち森の
一部になってみえなくなっちゃいそう。
木製の物質は、
倒木にほかならない!
のではないだろうか!


つやつや。  

このとき、雨がそれなりに
降り続いていたので、
きのこがしっとり濡れて
本当に美しかった。

ニスがぬられたように
つやつやとしているのです。
ああ、これなんかも、
砂糖細工のようで
おいしそう。

新井さんにお聞きしたら、
「つるたけ」という
毒キノコだそうです。

ニヤリ。

「これは毒きのこですね」
と聞かされたとき、
なぜかさんがニヤリと笑います。
「なぜか」ということはないですね。
さんは毒きのこの
話を聞くのが大好きなんです。
本とか、買い込んでますからね。
好きなものは仕方ない。




破壊の天使。  

猛毒のきのこです。
その名も「ドクツルタケ」。
別名、デストロイ・エンジェル。
破壊の天使。
森の中にたたずむ姿は、
じつに美しいのですが‥‥。
緑の中にくっきりと浮かび上がる、白。
まさに天使のよう。
猛毒と聞いて、
現場でも「ひゃあ」とか言ってたんですが
帰ってきて新井さんのエッセイを読んで、
「うっひゃあ!」となりました。
そんなにおそろしかったとは‥‥。
下に続く、新井さんのエッセイと
そのリンク先をぜひ、お読みください。
すごいわ、破壊の天使。

奇しくもこの日の
さんのいでたち、
ドクツルタケっぽくない?

破壊と毒‥‥。

「森の中にたたずむ姿は、
 じつに美しいのですが‥‥。」
え? まじまじまじ?
じつに美しい?
え? まじまじまじ?
ホメてる? ホメてる?
あ、ホメてなさそうだね。
破壊と猛毒って。


ドクツルタケ  

阿寒2大殺人兵器と言えば、
トリカブトと、このドクツルタケ。
日本有数の猛毒を持つきのこです。
英名からして、
破壊の天使
「Destroying Angel」ですから。

その、毒性については、
こちらをご覧あれ。

秋になると
阿寒の森のあちこちで目にします。
何しろ、白くて大型で
とても目立ちますから。

そうそう、きのこの毒、と言えば、
ドクササコ、というきのこの毒が、
身も凍るほど恐ろしいんです。
食べると手足の先が赤く腫れあがり、
焼け火箸を突っ込んだような痛み!が、
なんと、ひと月くらい続くのだとか!!

死ぬようなことはないらしいのですが、
痛みに耐え切れず
「いっそ殺してくれえ」などと、
叫びたくなっちゃうことは
間違いありません。
ひゃあ。

(写真/新井文彦)


もう1枚。  

じゃあ、
あまりに美しいのでもう1枚。

‥‥でもそれ、ほんとうに
微量で死んじゃいますからね、
くれぐれも気をつけてくださいよ。
その指をペロッとか、なめないでよ!

凝視!

さっきの写真もそうですけど、
茂木さん、
まったくカメラ目線じゃありません。
毒きのこを凝視です。

ふつうこういう時って
カメラのほうを見てニコッとか
しますよね、ふつうは。

そんなに好きなんすか、毒が!




なめないけど。  

なめたい衝動は
たしかにないことはなかった。
けどなめないよ。
本当に天に召されてしまう。
(もしくは地獄におちる。)

でも、しばらくこのように
かかげて森をあるきました。
せっかくなので、
裏側だって撮影です。
しかしね、虫がたくさんついてました。
彼らには毒じゃないのね。






ホコリになる前は
食べられる。
 

昨日の森で教えていただいた
ホコリタケも、あちこちにありました。
ぶわっと煙を吐き出す
かなりの個性派ホコリタケ。
実はこのきのこ、
幼菌のうちなら食べられるんだそうです。
胞子になる前は
マシュマロみたいなんですって。

この写真の白いやつが幼菌です。
「ま、いちおう食べてみますか」
と新井さん。

「きのこを食べる」ことに関しては、
明らかに、
ぼくらと新井さんの温度が異なります。
新井さんはほんとに、
食べることは二の次の様子。
ぼくらも、この森に来てからだいぶ
「目でたのしむ」を覚えましたけれど、
やっぱり‥‥ねえ!
おいしいきのこを、そりゃあ食べたい!

ホコリタケ幼菌、
いくつか狩らせていただきました。
どんな味か、たのしみ!






森の中の人たち。  

森の中の人たちは
こんな風にみえています。

アウトドアのウエアは
案外派手ですね。

そうそう、このオンネトーへの道は、
昨日よりもちゃんと道道しています。
この道の両側みてあるくだけで
「きのこ狩り(for アイズ)」のほうは
だいぶ満足できます。
「きのこ狩り(for ストマック)」は
ちょっと道なき場所に
わけいる必要がありそうです。
きのこを狩る
ミスきのこ。
 

につづき、
ついに「ミスきのこ」こと
お手柄の瞬間。

ピカピカと光る鳥、
それを持つ新井さん、
モノマネを披露するミスきのこ。

食べられるきのこ続々登場で
少しうかれている面々を動画でどうぞ。



カタカタ‥‥。

段取り良く、鳥の役を
新井さんにしていただき、
新井さんもけっこうたのしそうに
鳥役をやってくださっていたので、
よかったです。

途中、「ヒラタケ」にちなみ
「ノリタケてめぇっ!」
というモノマネ(とは言えない)は
による
ムチャブリというやつなので、
どうぞご容赦ください‥‥。




倒木更新  

倒木には、きのこだけではなく、
樹木の芽がはえていることがあります。

森のなかでは下草が生えているので、
木の芽が日光を浴びることができず
枯れてしまうことがおおいんだそうです。
でも、倒木の上だと下草もないし、
倒木が栄養源にもなるし、
周りにはえたコケが
湿度を保ってくれるので
新芽にはすごくいい場所なんだそうです。

なるほどね〜〜〜!!
倒木ってすごい!
きのこはやすわ、
樹木そだてるわ。

更新‥‥。

われわれ、ほぼ日は
毎日11時に「更新」があります。
なので「更新」という言葉が、
とても身近な存在なのです。
そして、
倒木も「更新」するんかい!
ということが、びっくりだったし
「倒木」と「更新」という言葉が
頭の中ではむすびつきようもない
場所にあったので、
この言葉を教えてもらって以来
何かと
「倒木更新だ!」と連呼していました。
ああ、また口に出して言いたい。
「倒木更新」。
いい言葉。


直角だ!  

この木ね、
きのことは関係ないんだけど、
すごいんですよ。角角しちゃって。

稜さんに聞いてみたところ、
「折れて、
 そのままのびちゃったんですねきっと」
とのこと。
そんなことってあるんだ!
めずらしいなぁ、森って。




エゾモモンガ?  

いけない、また下ばかり見てた。
たまには上のほうも見ないと
森がもったいない。

ああー、
弾丸を撃ち込まれたような
キツツキのつつき痕はやっぱりすごい。
そしてあの大きめの穴は?
エゾモモンガの巣なんだそうです。
もしかしたら今、
あのなかでモモンガが寝てるの?
そう思うだけで、また楽しい!




そして地衣類も。  

地衣類というやつも、
様々な種類が目の前にあらわれます。

これは、きれいな空気じゃないと
生きていけない地衣類だそうで。

地味なんですけどねー。
森の中では
「地味だ」なんてひとっつも思えない。
すべてが新鮮で、面白くて、綺麗。

新井さんたちのガイドが
とてもほどよくて、
素直に自然に
「いいよなぁ」と思うんです。

ちいちい。

新井さんや、稜さんが
「これは、ちいるいです」と
よく教えてくれたのですが、
そもそも
「ちいるいって何?」状態でした。
まさか、こんな字を書くだなんて。
かわいいですね。「ちいるい」も。
網みたいで。
お洋服につけたら、すてきですよね。

森では、
知らない単語がたくさん出てきます。


サルオガセの仲間
(地衣類)
 

サルオガセの仲間は日本で
40種類以上、
北海道でも
10種類以上確認されているのだとか。

種類が多くて、
それぞれが似ているので、
なかなか個別に
名前を覚えるのが難しいです。

大気汚染に弱いとされ、
きれいな空気があるところでしか
生息できないので、
環境指標のひとつとされています。

木からぶらぶら
垂れ下がったりしてますが、
サルオガセは、地衣類なので、
木に寄生して養分を
吸い上げているわけではありません。
念のため。

(写真/新井文彦)




オンネトーだ!  

森の向こうに水が。

「あちらが
 オンネトーですよ。」

わー。
たくさんの水をみると
妙にうかれますね。

「もうちょっと近くにいくと
 わかるとおもいますが、
 水の色が不思議な色を
 しているんですよ〜。」

この、ジャストなタイミングで
わくわくさせることを
聞かせてくれる新井さん。

(水際に向かいつつ、
 つづきますよーー)
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2010-12-01-WED
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN