みんなで行った、 阿寒きのこの森。
11 収穫の舞い。

ついに、そのときがやってきます。
「きのこ狩り」にやってきて、
最初にみつけた、食べて美味しいきのこは‥‥?
そして、唐突にはじまる「よろこびの舞い」。
阿寒の森に、ふしぎな音が響き渡ります。
カタカタカタカタカタ‥‥。

 






長靴と
ズボンの関係。
 

ん? が切り株に腰かけて。
そちらは何をする人でしょう?

「おらぁ、新井さんと稜さんを見て
 大ぎなまつがいに、気づいだんだ。
 ガイドのおふたりは、
 ズボンのスソを長靴のそとに出してる。
 なのに俺はスソを長靴の中に入れてだ。
 これだと、雨がズボンをつたって、
 長靴の中に入ってきちまうんだ。
 んだから、ズボンのスソは
 長靴のそとさ出すべきなんだ。
 ほれ、どうだ? カッコイイベ?」

相変わらず巧みな東北弁は続いています。
それはともかく、
なるほどねー。
たしかに、ズボンのスソは
外に出すほうがよさそう。
 


だぶつく、スソ。  

これはさんの撮影。

ズボンのスソを長靴のそとに出した山下。
しかし、どうにもスソがだぶついてます。

「山下さん、それはあれだ、
 スソをちょっとめくりあげるか、
 脚を長くしねえど、ダメだ。
 今すぐ、どっちかをやらねえどダメだ」

‥‥後者は無理そうなので、
めくりあげます。

だぶつくと言えば。

写真をよく見ると、山下のお腹こそ
だぶついてるじゃないか!
と思われるかもしれませんが、
あれはカメラです。
濡れないように隠しているのです。

決して昨晩ホテルのバイキングを
食べ過ぎたとかそういうことではない
ということをご報告しておきます。






食べられる?!  

が何かきのこをみつけた?
早速、新井さんの判定が入ります。
「ヌメリササタケですね。
 けっこうおいしいきのこです」

‥‥え! つ、ついに?!

「でもこれは育ちすぎで、
 虫もたくさんついてます。
 もっと若いのがあるといいんだけど」

よ、よし! これの若いのですね!
がぜん、活性があがりました!
見つかりそうな予感‥‥。

ぬめり〜〜!

ぬめり、さわり、のち、にっこり。
気持ちよかった〜コレ。
ぬめぬめが、どろどろじゃなくて
ほどよいぬめぬめなんですよ。
永遠にプチプチできる
おもちゃあるじゃないですか。
あれの、ヌメリササタケ版あったら、
ぜったい買う!
ずっとぬめぬめしていたい!!


ヌメリササタケ  

きのこは、見ていて、本当に飽きません。
傘ひとつとっても、形状はさまざま。
トゲトゲがついていたり、
しわしわだったり、
ザラザラだったり、
べとべとだったり……。

そして、この、ヌメリササタケは、
名前のごとく、
そう、よくご存知のナメコ的に、
すごくぬるぬるしています。

優秀な食菌であり、このぬるぬるは、
水につけておいたくらいでは落ちません。
(そのかわり、森のホコリもたっぷり!)
味とともに、
実にぬるぬるな食感も楽しめます。

針葉樹の森で、このきのこを見つけて、
思わず採取してしまったとします。
さて、この、
手についてしまったぬるぬるを、
いかにして落とすのが
正しい方法でしょう?

近くのマツの幹にこすりつける?
でも、逆に、
松ヤニがついてしまいますね。

(写真/新井文彦)


み、みつけたかも?  

先ほど教えてもらった、
ヌメリササタケの若いやつを意識しつつ
「きのこ目」で探すこと数分‥‥。
あ‥‥これ。
これ、なのでは??
ヌメリササタケ(若)なのでは?

早速、新井さんの判定が入ります。
「‥‥そうですね、きれいです。
 これは食べましょう」

‥‥やった。
やったーーーー!!
お手柄。  

最初に食べられるきのこを見つけた

その功績を讃えられ、から
ご褒美をもらいます。

どんなご褒美かは
動画を観てのおたのしみ。






棒の正体‥‥。  

その瞬間は、ふいに訪れました。

食べられる最初のきのこがみつかって、
ひとしきり盛り上がり、
さて次を探そうか、というあたり。
そんな実に中途半端なタイミングで、
さんがカゴの中から、
なぜか照れくさそうに、
「謎の棒」を‥‥取り‥‥出した!

前日からずっと気になっていた
その棒は??
え? な、なに??
なにそれ???






トリ?  

トリ? バード?
その棒の先についているのは、鳥だった!
まるで何かを祝福するように、
鳥を「カタカタ」と振る

‥‥‥‥祝福‥‥‥‥。
は、はたと思い出します。
北海道に出発する前日、
東京の会社でとかわした会話を。

山下「マイタケってあるでしょ」
ゆー「うん」
山下「名前の由来しってる?」
ゆー「しらなーい」
山下「みつけた人があまりにうれしくて、
   その場で舞いを舞ったことから
   舞い茸‥‥ていう説があるらしい」
ゆー「へーー」
山下「ぼくらも明日、きのこをみつけて
   舞いを舞いたいね」
ゆー「舞いたーい、祝いたーい」

‥‥そうか、そうだったのか‥‥。
彼女は、おいしいきのこが
みつかる瞬間のために‥‥
その瞬間を祝うために‥‥
延々この棒を持ち歩いて‥‥‥‥。






光る!  

しかも、この鳥は光る!
ものすごく複雑に、
色とりどりに光る!
薄暗い森の中で、きわだつ!

ビカビカーッ

この鳥、ぼやーんとかじゃなく、
ビカビカビカビカーッって
けっこう派手に光るんです。

こ、こんなのどこで買うんでしょう・・。
「大阪の駄菓子屋。」

おみそれしました。










七色の舞い。  

カタカタカタカタ‥‥
七色に光る鳥が、
阿寒の森の宙に舞います。
皆の爆笑に包まれながら。

そして祝福の鳥は、
最初に食べられるきのこを
みつけた者の頭に、舞い降りた!

よくがんばりました。

第一食べられるきのこ発見。
おめでとう!
チュンチュン。

チュンチュンでいいのか。

はたしてその鳥の声は
チュンチュンでいいのか?!
すずめなのか、それは?!
でもおめでとうさん。




これも
食べられるきのこ。
 

鳥の祝福を受けた者に、
すこしばかりの運がもたらされたのか、
またもや食べられるきのこに
巡り会います。

「ショウゲンジ」というきのこ。
ただしこれも、かさが開きすぎ。
虫がついています。

残念!

どんどん見つかるものかと思いきや、
そうは問屋がおろさねぇんですね。
この反り方とか、せつないよ! ダメ感が。


若いショウゲンジ。  

新井さんが、
若いショウゲンジを
みつけてくれました。

左側のがそうですね。
これはまた‥‥
たたずまいが、かわいらしい。


ショウゲンジ  

またまた名前のハナシです。
きのこらしからぬ、
ショウゲンジという名前は、
岐阜だか長野だかにある
正源寺というお寺の住職が、
このきのこを最初に食べ、
村に広めたことが由来とか。

本当?
些細と言っては失礼だけど、
そんな由来が
名前になってしまうなんて……。
お寺より、
住職の名前が気になるのはぼくだけ?
何はともあれ、きのこ命名者、
恐るべし。

お寺と関係あるかどうか
わかりませんが、
ショウゲンジは、ぱっと見、
まるで虚無僧のように見えるので、
西日本では
「コムソウダケ」「ボウズタケ」と、
呼ばれることもあるのだとか。
ふ〜む、なるほど、なるほど。

(写真/新井文彦)








エイリア〜ン。  

「これはおそらく、ツバアブラシメジ」
と、新井さん。
この種は複雑なうえに
かさが開きすぎると判定も難しいとか。
「疑わしきは、食せず!」

それにしても、このヌルヌル!
「エイリアンみたい」
ほんとうにー。

しずる〜〜!

しずる、すごいわー。
しずってるわぁ〜。
また、の顔が、すごいわ〜。


ツバアブラシメジ  

これまた、ぬるぬるきのこです。

成長してくると、柄の表面の膜が裂けて、
まるで虫食いのようになり、
中の色が見え隠れ。
肉が破れ、骨が見える……。
ぎゃ〜!
なかなか、ホラー的です。

実際に森へ出かけて、
きのこや木々や周りの風景を見ていると、
土も、苔も、植物も、きのこも、動物も、
世界はみんなひとつに繋がっているし、
重なり合っているし、
独立して生きているものなど、
何ひとつないことを、改めて実感します。

実際に出かけて、自然に身を置かないと、
見えないものって
たくさんあるんですよねえ。

(写真/新井文彦)




ヌメリササタケは
オレが担当だ!
 

「あれはヌメリササタケ!」
そうさけんでさんが
駆けこんでいきました。

そうです、このあとも
この「たべられるきのこ」を
ちょいちょい発見するんです。

すっかりヌメリササタケの担当は
彼である、ということになりました。

山下ヌメリ。

彼の名は、その後
「山下ヌメリ哲」となったり、
ならなかったり。でした。






ぶちゅっ。  

かわいくって、
でもちょっと不気味で、
いい味出してました。
「ぶちゅっ」っていうよりも、
「そろりん」という感じで、
静かに出てきました。中身。
指につけたら、
ちょっと冷えてる感じで。
頬紅にでも、
しようかと思っちゃったほど、
かわいらしい色でした。

舐めるかなあ。

指につけたものは、
まず臭いをかぐ。
それが、
次に、舐めるかなあとおもったけど
さすがに舐めなかった。

マメホコリ

そういう名前の粘菌だそうです。
たしかに、ちょっとかわいい。


マメホコリ(子実体)  

思えば、ぼくが、
粘菌に興味を持ったのは、
この、マメホコリがきっかけでした。

じっくりと倒木を眺めていたら、
ちっちゃくて、丸くて、
ピンク色したつぶつぶを発見。
きのこだと思って
図鑑を調べるも該当なし。
ウェブサイトに写真を載せて
情報を募ったら、
友人が、粘菌だと教えてくれたのでした。

南方熊楠、けっこう好きだったのに、
粘菌が出てこないとは!
それ以来、きのこと並んで、
粘菌にも興味を持つようになりました。

ピンク色のマメホコリ、
実にかわいいですよね。

(写真/新井文彦)



とつぜん現れた。
 

奥へ行き、何かを
見つけてきた模様。
右手には、刃物を持っている。
危険! 危険!

でかいぞ!

食べられるきのこ発見の舞により
我々はにわかに
リアル・ハンターとなった。
「紅葉狩り」と同じ意味の
「きのこ狩り」ではなく、
「鹿狩り」の「狩り」と同じ意味合いを
帯びてきたように思う。

「ほら、でかいぞ!」
そう、我らが「きのこチーム」の
長(おさ)は叫んだ。

(長の獲物は、なんというきのこ?!
 まだまだ、つづきまーーーす)
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2010-11-30-TUE
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN