第1話と第2話を観て
糸井 ごぶさたしてます。
永田 おひさしぶりです!
西本 よろしくお願いします!
糸井 こうして、テレビドラマを観たあとに
3人でしゃべるのは久しぶりですね。
永田 『タイガー&ドラゴン』以来?
西本 いや、正月特番の『新選組!!』
土方歳三のスペシャル以来ですね。
永田 あ、あれが最後か。
じゃあ、ほんとに1年ぶりですね。
糸井 1年ぶりに男子部の雑談をはじめるにあたり、
ひとつ、言っておきたいことがあります。
西本 うかがいましょう。
永田 うかがいましょう。
糸井 みなさんはどうかわかりませんが、
じつは、ぼくは、ずっと!
この「ほぼ日テレビガイド」を
やる機会を待ってました!
ふたり わはははははは!
糸井 いや、本当ですよ。
永田 なんでまた?
糸井 つまりね、テレビを観て、
それについてムダ話をするということをね、
なにか新しいドラマがはじまるたびに、
「これはできるだろうか?」
「あれはどうだろうか?」と。
ふたり わははははははは!
糸井 いや、本当ですよ。
永田 それは、どういうことですか?
意外にくせになるということ?
糸井 というよりね、
やっぱり、いいドラマじゃないと無理なんですよ。
ドラマを1話観てね、それについて
男3人がムダ話をできるようなものは
そうそう、ない。
西本 それについて雑談できるということが
最上級のほめことばであると。
糸井 そうそうそうそう。
だからね、ここ1年、
新しくドラマがはじまるたびに
いちいち「これはできるかな?」と。
永田 そんなこと、いままで
ひと言もいってなかったじゃないですか。
糸井 ぼくがいままでにあなたがたに
全部を語ったことなどありますか?
永田 ありません!
西本 ありません!
糸井 でしょう? おそれいりましたか?
永田 ほめてません!
西本 むしろ苦情です!
糸井 人知れずぼくは
いろいろと考えていたわけですよ。
つまり、水面下でこなしてる仕事?
シャドーボクシングならぬ、
シャドーワーク?
永田 エアーギターならぬ、
エアーワーク?
糸井 エアーワーク、エアーワーク(笑)。
ドラマを観ながら、こう、
エアー雑談をね。エアー座談会をね。
「このドラマでやったら
 ほかのふたりはどうしゃべるかな」とかね。
西本 「このドラマだと
 永田がまったく興味をもたないから
 ちっとも話が広がらないな」とか。
永田 「このドラマだと
 西本が自分の話をしゃべりすぎるな」とか。
糸井 ずばり、そのふたつに尽きます。
ふたり あいたたたたた。
糸井 そんなときにはじまったのが
『華麗なる一族』ですよ!
永田 ようやく番組のタイトルが出たよ。
西本 長くなりそうですね、今回も。
糸井 TBS開局55周年特別企画ですよ。
原作、山崎豊子ですよ。
ヤマトヨですよ。
ヤマトヨ、トヨエツですよ。
永田 トヨエツ、関係ないじゃないですか。
西本 トヨエツ、関係ないじゃないですか。
糸井 そういう、
気合いの入ったドラマがはじまる、と。
で、じっくりと初回を観てね、
自分なりにエアー座談会をやってね。
永田 エアーテープを回して。
糸井 そうそう。
西本 エアー永田と
エアー西本を呼んで。
糸井 そうそう。
永田 エアーコーヒーを飲みながら
エアーお菓子をつまんで。
糸井 そうそう。
西本 エアー糸井事務所の
エアー和室で。
永田 エアー港区の
エアー表参道にある。
糸井 もういい!
永田 で?
西本 どうだったんですか?
糸井 これは‥‥いけるな、と。
永田 おお!
西本 やった!
糸井 エアー糸井重里が、
ゴーサインを出したわけです!
ふたり それはエアーじゃないだろ。
糸井 そんなわけではじまるのです、
『華麗なる一族』with
ほぼ日テレビガイドが!
西本 また来週!
永田 終わるな、終わるな。
糸井 っていうか、ドラマ本編はおろか
まだはじまりの経緯しかしゃべってませんね。
永田 誰のせいですか。
糸井 まぁ、いつものことですから
いまさら怒られないでしょう。
西本 ええ。企画開始から4年目になりますが
だらだらゆるゆるが基本コンセプトです。
永田 そうそう、このほぼ日テレビガイド、
新シリーズがはじまるときは
新しいお客さんも増えますから、
いつものおことわりを最初にしておきましょう。
えー、このコンテンツは、
読んでおわかりのとおり、
なんの権威もありません。
西本 驚くほどありません!
糸井 ひとっかけらもないのです。
西本 よく挙げる例で言いますと、
「あんたは『クイズミリオネア』を
 観ないと言ったのに観たじゃないか」
とかね。
永田 「元日にやるのは『箱根駅伝』じゃなくて
 実業団の『スーパー駅伝』だぞ」
とかね。
糸井 「『筋肉バトル』が大好きなのに
 嫁の実家ではチャンネル権がないため
 しかたなく『かくし芸』を観た」
とかね。
永田 「引田天功さんが韓国に行く番組を観たら、
 まったく意味がわからなかった」
とかね。
糸井 いや、あれは、本当にわからなかったんだよ。
西本 その話はもういいです。
永田 ことほどさように
意義の薄いコンテンツですので、
どうか「くだらない」と
がっかりなさいませんように。
糸井 どうぞよろしくお願いします。
西本 また来週!
永田 いや、終わらないんですけどね。
糸井 いいかげん、はじめましょう。
永田 しかし、いつもとちょっと違って
今回はやりづらいですよ。
ほら、これまでここで取り上げたドラマって
どこかしら「応援しよう!」みたいな
気持ちがあったじゃないですか。
『新選組!』だって、放送当時は
大河っぽくないとか、視聴率がよくないとか、
いろいろ言われてたりしたし、
『タイガー&ドラゴン』は
「落語、がんばれ!」っていうのがあったし、
『離婚弁護士』は天海(祐希)さん直々に
応援してくださいねーみたいなこと言われたし。
西本 一方でこの『華麗なる一族』は、
初回放送の視聴率もトップ。
注目度も、今クール中、ナンバーワン。
永田 そうそう。
糸井 いや、これは断言できますけどね、
時代はこのドラマに厳しいはずですよ。
初回の視聴率はよかったかもしれないけどね、
いろいろ言われだすに決まってるんです。
なぜかというと、このドラマは
非常につっこまれやすいんですよ。
それは、わかりやすい例でいうと
「この時代にこんなことはありません」
みたいなことでさ。
西本 ああー、厳しいでしょうね。
糸井 日本中が時代考証家になったみたいにね。
心のツッコミノートをみんながつけてる感じでね。
永田 注目が大きければ大きいほど、
そういう声も出やすくなると。
西本 「まず、キャスティングにもの申す!」
糸井 そうそうそう、そういうやつ。
永田 ま、ぼくらがそれをまったくやらないかというと
混ぜるに決まってるんですけどね。
糸井 あれこれ言う楽しみこそが
このコンテンツをやる大きな意義ですからね。
くだらないレベルではしょっちゅう言いますとも。
でも、ものは申さない。
西本 もの申しません!
永田 もの申しません!
糸井 つまり、もの申さないことによって、
なにかともの申しがちなこの時代に、
風穴を、あけません!
永田 あけないんだ(笑)。
糸井 風穴あけると、寒いだろ?
西本 わははははは。
永田 くだらない(笑)。
糸井 だからそういう風潮に対して、
こたつを入れようじゃないかと。
西本 時代に、こたつを入れるコンテンツ!
糸井 もの言えば寒い、
あなたの唇をあたためます!
永田 いや、こたつで唇は無理でしょう。
糸井 そういうことを言ってるんじゃあ、ないんだ!
永田 わかってますよ。
糸井 わかってるということもわかってますよ。
西本 わかってるということをわかってるということも‥‥。
永田 もういい、もういい。
糸井 まぁ、だからね、
こんな弱点がありながらも
おもしろかったね、とか。
毎週楽しみだね、とか。
気持ち的にはいっしょに作っていこうじゃないかと。
受け手あっての送り手ですよ。
受け手がとんがって目くじらをたてていたら
永遠に成り立ちませんよ。
消費は遅延した生産だとぼくは言ったでしょ?
西本 たしかに言いましたが、
それは吉本隆明さんのパクリだ。
永田 パクリだ。
糸井 ぼくの考えの多くの部分は
吉本隆明さんのへたなパクリだと言ったでしょ?
西本 へたなパクリだ。
永田 へたなパクリだ。
糸井 つまり、
ドラマ鑑賞はドラマ制作の遅れた形であると。
そういうコンセプトでやればいいじゃんと。
かといって「よいしょ!」とやるんじゃないよと。
こたつだから、ぬくぬくやるよと。
永田 たまに寝ちゃうよと。
西本 最後は寝ちゃうよと。
糸井 ま、長々話してきましたけどね、
そういうわけで! みなさん!
永田 はい。
西本 はい。
糸井 ぼちぼちはじめましょうか!
永田 (一同、ずっこける)と書いておきたいところです。
西本 みなさん、すいません。
でも、今日だけじゃなくて、
いつもこうなんです。
糸井 とりあえず、第1話のスペシャルと
第2話を観たわけですがね、
ぼくの第1話を観おえての感想は、
放送翌日の「今日のダーリン」にも書きました。
はい、これです。

1月15日の「今日のダーリン」より

前々から、テレビの変化していく方向について、
ちょこちょこ考えていたことがありましたが、
この『華麗なる一族』というドラマが、
新しい一歩になるかもしれないですね。
情報量の多い、ハイビジョン画像ならでは演出は、
セリフの数をかなり減らしても、
伝えたいイメージを表現することができます。
映画のカメラワークでもなく、
テレビの映像計画でもない
ハイビジョンドラマのカメラディレクションが、
もう確実に始まっていましたねー。
テレビドラマで、こんなに「引き」のシーンを
いっぱい見たのは、ぼくには初めてかもしれない。

予算の使い方、キャスティング、
ロケのコーディネイト、
あらゆるプランが、
いまの時代の映画以上に見えました。
山崎豊子のタフでおもしろい筋書きがあれば、
これだけのスケールのものは、
テレビ局のドラマとしてつくれるはずだった。
おそらく、そのへんには『24』や『LOST』など、
アメリカの大型テレビシリーズが
頭にあるんだと思うのですが、
やっちゃえましたねぇ。

慎重に、第2回以後を観てから
何か言ったほうがいいのかもしれなかったのですが、
思わず、声が出てしまったという感じです。
まだまだもちろん
不確定の要素はいっぱいあるでしょうが、
テレビの業界で
『華麗なる一族』以前と以後、という
言われ方をする番組に、
なるような気がしてなりません。
『白い巨塔』や『大地の子』のことを思えば、
ストーリー的に、
この先つまらなくなることはなさそう、
ということも言えますからねぇ。
『ほぼ日テレビガイド』、ひさびさにやっちゃおうかなぁ。
永田 「やっちゃおうかなぁ」じゃないでしょう。
西本 「ひさびさにやっちゃおうかなぁ」じゃないでしょう。
糸井 ごめん、ごめん(笑)。
で、ふたりは、1話と2話を観て、どうでしたか。
まず、永田くんは、このドラマのことを
おそらく、なぁんにも知りませんでしたよね?
永田 はい、あいかわらずの不勉強ですいません。
「木村拓哉さんのすごそうなドラマ」
くらいのことしか知りませんでした。
糸井 当然、原作も読んでませんね?
永田 むろん、読んでません!
西本 ぼくも読んでません!
糸井 じつはおれもあわてて買ったばっかりでさ。
ふたり 誰も読んでない!
糸井 ま、そういうのもいつものこととして。
どうでしたか。
永田 はい、まずですね、
ドラマをほぼ観ないぼくですけどね、
この雑談コンテンツを通して
いくつかのドラマを観たことで
ひとつ、学んだことがあるのです。
それをまず言わせてください。
ふたり どうぞ、どうぞ。
永田 テレビドラマは、
じつは、1回目がいちばんおもしろくない!
糸井 ああ、はいはい。
西本 あれだ、なにしろ1回目は
オールキャストの紹介、顔見せと
全体のプロットのイントロになるから。
永田 そうそうそう。
いろんな人がちょっとずつ意味深に顔を出して、
伏線っぽいものがちりばめられて、
ちっとも話は進まない、というね。
糸井 いわば、豪華なイントロだけが
2時間近く続くようなものであると。
永田 はい。
だからね、ふだんドラマを観ないぼくのような人が
「たまにはドラマでも観るか」って
重い腰をあげるように話題のドラマの初回を観ると
「ああ、やっぱりオレ、楽しめないわ」
ってやめちゃうことが多いんですよ。
糸井 なるほどね。
西本 そりゃそうですよね。
だって、これだけのキャストがいて、
いちおう全員の持ち味を見せつつ
お話にしなくちゃいけないわけで。
糸井 まだ誰にも思い入れができてない状態でね。
だから、ドラマの1回目というのは
そもそもつくるのがそうとうむつかしいんだね。
永田 ええ。ところが、ですよ。
糸井 ああ、そういうことか。わかった。
永田 はい。1回目から、引き込むぞ、これはと。
西本 ぐいぐい来ましたね。
永田 うん。と、いうのが、まずは初回の印象です。
糸井 なるほど、なるほど。
にしもっちゃんはどうですか。
西本 月並みな感想になりますが、
まずはやっぱり、キャスティングがすげえなと。
どこをとっても隙がないと。
糸井 うん。映画じゃ逆に無理だろうというくらいの。
西本 どんどんどんどん、出てくる出てくる。
永田 ぼくとしては、この企画で観たドラマに
登場したことがある人が
たくさん出ているのがうれしかったですよ。
西本 『新選組!』からは多いですね。
副長(山本耕史さん)に、
お梅(鈴木京香さん)に、
あと、ひで(吹石一恵さん)‥‥。
永田 あと、源さん(小林隆さん)!
で、『タイガー&ドラゴン』からは
西田敏行さんと笑福亭鶴瓶さんでしょ。
『離婚弁護士』からは津川雅彦さん。
糸井 ほんとにそういう見方なんだ(笑)。
じゃ、「あ、お梅だ」と。
永田 そうですよ。
「お梅がまたお梅の役をしているぞ」と。
糸井 永田くんって自分の世間の狭さを
うまく利用するタイプだねえ。
永田 だから、安上がりですよ。
そもそも知ってる人が出てるだけでうれしくなる。
あの、柳葉さんの頭取就任パーティーとか、
楽しかったですよ。
「おお、津川雅彦さんが!」と思ったら、
奥から、西田敏行さんが呼んでる、みたいな。
西本 あのパーティーのシーンは、西田さんの
「どうでもいいような乾杯の音頭」
がよかったですよね。
「ほにゃららほにゃらら、かんぱいっ!」みたいな。
永田 津川さんが料亭で扇子をぱちぱちしながら、
とぼけた受け答えをするところもよかったですよ。
「ふむ‥‥ふむ‥‥‥‥ショーがダイを!」
糸井 「ショーがダイを!」
西本 「ショーがダイを!」
糸井 もう、あのへんは全部、時代劇ですよね。
永田 あ、完全にそうだ。
それはひとつの核心かもしれない。
西本 マゲなし時代劇。
永田 まさに、まさに。
風景とか、いちいちたいへんなんだろうな。
あれって、どこで撮ってるんですかね。
西本 上海じゃないですかね。
永田 あ、そうなのか。
西本 オープニングでハザマ自動車から
出てくるところから上海でしょ。
糸井 だから、ほどよく違和感があるんだよね。
「当時の日本を再現!」っていうマジメさじゃなくて
過剰に雑多で古い感じがする。
永田 そうか、そうか。
なんか印象が戦後っぽいというか、
デフォルメされた感じがあるのはそれでなんだ。
昭和42年って、ほんとはもっと新しいですよね。
糸井 新しいビルがにょきにょき建ちだしたころですよね。
だから、建物も、ほんとはあの味はなくて、
もっとつまらない景色だったと思いますよ。
その意味では、つまらない方向をさけて
時代劇感やロマンを過剰に取り込んでるんじゃないかな。
永田 うん。ナイスフィクションですよね。
糸井 かといってまったくウソじゃないしね。
馬場先門、つまり丸の内あたりの古い建物とか、
東京駅を思い浮かべてもらうとちょうどいいですけど、
あの味は、ありましたから。
そのあたりのデフォルメは時代劇的な装飾ですよね。
ほとんどの時代劇がそうじゃないですか。
史実では小さいお寺も大きくつくっちゃったり、
カタナやまげも記号として扱ってたり。
そのあたりは、判断ですよね。
永田 そのへんの混ざり方がおもしろいですよね。
いまっぽい場所でもあるし、
うそっぽい場所でもある。
いまと地続きの時代劇というか。
実際にそのへんが混ざってるのが
いまの上海なのかもしれない。
西本 だから、
時代劇を京都で撮ることがふつうになっているように
昭和劇は上海で撮ることに
なりつつあるんじゃないですか。
糸井 そうかもしれないね。
西本 ちょっと前に広島の原爆をテーマにした
松たか子さんが主演のドラマの番宣でも
あの路面電車が走っていく
同じようなシーンを観ましたし。
あれもTBSだったかな。
永田 あるいは、もうちょっとしたら、
太秦の映画村とか江戸村があるのと同じように、
「昭和村」みたいなものができるのかもしれない。
糸井 『三丁目の夕日』だとセットとCGでしょ。
そのCGの使い方というのは
みんな大喜びなんだよ。
ぼくの好きな『キング・コング』のCGも
ああいう使い方なんだよ。
永田 このドラマでもCGはけっこう使ってますよね。
しかも、わかりやすくモノをCGにするんじゃなくて
演出として仕上げに使う、みたいな感じの。
糸井 ドラマや映画のCGって
「つくり手が何をつくりたいのか?」
っていうことを露骨に表すんですよ。
だって、こういうものがあるといい、って思うから
それをCGで表現するわけでね。
意図しないCGなんて出来上がらないですから。
だからCGって、技術を観るものじゃなくて、
考えや意図を観るものでもあるんですよ。
そこに気づくと、緊張感がありますよ。
永田 なるほど、なるほど。
糸井 でも、あの、万俵家の邸宅は
実際に建てたらしいよ?
永田 え? あの洋館を?
西本 緑山スタジオに? へえ、そりゃすごい。
糸井 もちろん、
完全に建てたわけじゃないだろうけど。
美術さんが大がかりなセットを組むよりも
大工さんがふつうに組んだほうがほうが早い、
みたいなことなんじゃないかな。
西本 と、いうことは
洋館のうしろで『SASUKE』をやっている
可能性もあるわけですよね。
永田 万俵家のうしろで『SASUKE』が(笑)!
糸井 本番中にすごく騒がしい声が聞こえたりしてね。
西本 「『SASUKE』、うるさいぞ!」とか。
永田 「誰か『SASUKE』を黙らせろ!」とか。
糸井 「『SASUKE』の水しぶきが
 万俵家のバーまで飛んできたぞ!」とか。
ふたり それはないわ。
糸井 せいぜい壁までか。
永田 そういう問題ではなく。
西本 あとは、撮影の空き時間に木村拓哉さんが
ちょっと『SASUKE』に挑戦してみたりとか。
糸井 あの鉄工所のヘルメットかぶったまんまでね。
「ちょっとやらせて」って。
永田 「あの、ぐるぐるのところが
 難しいんでしょ?」とか言って。
西本 で、それを見た山本耕史さんが、
静かに闘志を燃やしたりしてね。
永田 また練習しちゃうんだ(笑)。
鍛えちゃうんだ。
西本 もう、ドラマが終わるころにはムキムキですよ。
筋肉、こんな、ポンプアップして。
糸井 ドラマの後半になるにしたがって、
銀平がどんどんたくましく!
ふたり わははははは。
糸井 ええと、なんの話でしたっけ?
永田 CGとかセットの話でしたっけ?
糸井 ま、ともかく、初回はそういう感じで
いろんな手法を取り混ぜつつ
パノラマの世界観をバーンっと見せましたよね。
「この世界観で観てくださいね」っていう
アピールでもあるよね、あれは。
西本 あの、銀行で北大路欣也さんが
上からのぞいているシーンがあるじゃないですか。
あれ、ふつうのドラマの規模じゃないですよね。
糸井 ああー、すごかったねぇ。
永田 すごかった、すごかった。
で、こういうたとえがいいのかどうか
よくわからないんですけど、
ぼくは、あの銀行の場面とか、高炉を見上げる場面で、
ゲームの演出を思い出したんですよ。
糸井 あ、なるほどね。
群衆のシーンとかで力を見せる、みたいなことで。
永田 そうなんです。
CGが進化したあとの
大作ゲームのオープニングって
ああいう感じですよ。
冒頭に度肝を抜くサービスというか。
音楽も、歌劇風というか、過剰な感じで。
糸井 そういえば、音楽も
『新選組!』の人じゃなかった?
西本 そうです。三谷作品ではお馴染みの
服部隆之さんです。
糸井 そのへんは完全にわざと、というか
意識的に大河っぽいほうへ寄せてますよね。
永田 ああ、現代と地続きのよさを残しつつも
現代劇にしたくはないというか、
現代劇に見られるとややこしくなるというか。
糸井 うん。いくつかの要素に関しては
大河や時代劇に寄せておくほうが
観るほうも落ち着くということですね。
西本 ナレーションの倍賞千恵子さんも。
糸井 まさにその役割ですね。
あと、そういう時代劇寄りのところでいうと、
やっぱり、顔ね。役者さんの顔。
永田 ああ、それも核心のひとつですねえ。
なにしろ、顔がすごいですよ。
もう、「顔面はセットなり」というか。
糸井 そうそうそう(笑)。
永田 「キレイ」も「かっこいい」も
「こわい」も全部含めて、顔がすごい。
糸井 北大路欣也!
西本 北大路欣也!
永田 北大路欣也!
糸井 もいっちょ、北大路欣也!
ふたり 北大路欣也!
糸井 と、いうくらいに、
参りましたよ、あの顔には。
永田 どの役者さんもそうですよ。
顔がすごい。顔が武器。
だって、長谷川京子さんとか、
1話と2話だとあんまりセリフなかったですけど、
ぜひ、画面にいてほしいじゃないですか。
あの顔があってほしい。
西本 キレイだけど、邪魔をしないんですよね。
糸井 顔の威力はこのドラマの強さですよねえ。
そういうので、ほかにありますか。
西本 ぼくが強いなと感じたのは、
ドラマの外側の部分になりますけど、
製作者側の姿勢ですね。
あの、ちょっと業界っぽい、
感じの悪い見方なんですけど、
言っちゃっていいですか?
糸井 感じ悪いなあ。
永田 感じ悪いなあ。
西本 北大路欣也さんに鉄平が
「高炉を建てたいんだ」と直談判するとき、
トヨタも日産もホンダも松下も東芝もソニーも
といろんな会社名を挙げていくんですが
あの番組スポンサーはトヨタなんですよ。
そこで競合他社の名前を出してオッケーなんだと。
しかも木村拓哉さんはトヨタのCMやってますし。
糸井 うわ、本当に感じ悪い。
永田 業界通だ!
西本 それをスポンサーも含め
オッケーにさせているところに
このドラマの大きさを感じましたね。
あと、業界通ではありません。
糸井 今回、大手スポンサーが全部入ってるもんね。
にしもっちゃんにしたら
生き生きと動く営業が見えますか?
西本 ええ。上から全部とってますもんね。
永田 さすがTBS開局55周年特別企画。
糸井 ていうかさ、
「55周年」って、すごくハンパじゃない?
永田 そうそうそう!
西本 そうそうそう!
糸井 だよなあ。
永田 そこ、気になったの自分だけかと思ってた。
西本 いや、「55周年」はハンパだよ。
あと、「じゃあ50周年は何やってたんだろ?」って
すごく気になる。
永田 なるなる(笑)。
糸井 「55周年」はひっかかるよなあ。
西本 松井とかコント55号を出すならまだわかりますけどね。
糸井 うん。イチローじゃなくて松井だよな。
イチローだと開局51周年になっちゃうからな。
永田 いつのまにか、ただの背番号の話になってますよ。
糸井 じゃあ、場をぴりっとさせるために、
厳しいひと言をいいましょうか。
西本 お?
永田 どうぞ、どうぞ。
糸井 場をぴりっとさせるために、
厳しいひと言をいいましょうか。
永田 なんで2回言うんですか。
糸井 1話と2話をみて感じた、
『華麗なる一族』の弱点を言いましょう!
‥‥主演の、木村拓哉さんの!
西本 なんですか!
永田 なんですか!
糸井 顔が小さすぎる!
ふたり わはははははは。
糸井 もう、残念、惜しいというくらいね、
木村くんの顔は小さいねー。
西本 いや、たしかに小さいわ(笑)。
永田 ていうか、ほかがデカすぎるんじゃ‥‥。
糸井 とくに、あの欣也さんと
向き合うことが多いですからね、
どうしても、分が悪い。
西本 「顔面セット」とくらべると小道具です。
あの人と向き合うと、
武田鉄矢さんの顔でさえ、小さく思えますね。
永田 ていうか、武田鉄矢さんの顔って
実際、小さくなってない?
ちょっとしぼんでる感じで。
糸井 このまま行くとですね、
どこかで人間として小物として
描かれなくてはいけない欣也さんが、
顔のデカさでつねに勝っちゃっているという
困ったことになりはしないかと。
永田 いや、顔では勝てないでしょう。
あの顔はすごいですよ。
眼鏡のつるをなめるあの場面を観ましたか。
そしてなぜ葉巻があんなに似合うのか!
糸井 加えてあの濃い性豪ぷりもね。
西本 帯をするする〜っと。
糸井 あそこは大奥ですよ。
永田 さらに言うならば、欣也さんは
寝室に何回踏み込まれているんだと!
糸井 わははははは。
西本 わははははは。
永田 電話取り次ぐなら、カギかけとけよと。
糸井 でも、絶えずそんなことしながら
「小が大を飲む」ということを考えてるんだよ。
すごい男だよ。
西本 あの男に立ち向かう、
小顔の木村さんはたいへんですよ。
糸井 あとさあ、顔でいうと、
肖像画のじいさんの顔に
威厳がなさすぎませんか。
西本 言えてる(笑)。
永田 言えてる(笑)。
糸井 あの肖像画は、直せるものなら
いまからでも直した方がいいんじゃないですかね。
西本 でも難しいですよ、あれ。
似せなきゃいけないし、
老人にしなきゃいけないし。
糸井 そうなんだよね。
でも、肖像画と鯉については
愛情ある突っ込みを入れておきたいですね。
永田 将軍、デカかったなあ。
糸井 ま、なにしろ、デカさの目立つドラマですね。
西本 存在感的にはいまのところ
鈴木京香さんが大きいですね。
糸井 あの存在はデカすぎるよね。
永田 いまのところ、
唯一の悪役とさえ、いえますよ。
糸井 そうですね。
このドラマの特徴として、
悪そうな人はたくさんいるんだけど、
芯から悪い人は意外にいないんですよ。
西本 欣也さんだって、
エロ以外は悪くないですしね。
永田 なんだそりゃ。
西本 融資10%カット問題に関しても
親父として説明たらずなだけで、
「うちも厳しいから、満額回答は無理」
ってことでしょ。ぜんぜん悪くないですよ。
お前も空気読めよってことでしょ。
糸井 悪いのは、性癖だけだと。
西本 そうです。エロだけですよ。
永田 そういうところを
厳密にして申し訳ないんだけどさ、
エロも、全部のエロが悪いわけじゃないよな。
西本 そうです、そうです。
もう、いってしまえば
「3P」がよくないだけですよ。
もっといえば、
相手が嫌がっているのに3Pはよくない、
っていうことですよ。
逆にいえば、3P以外は悪くないんじゃないか。
糸井 3P、3P、言うもんじゃありません!
永田 不倫というか浮気は?
西本 悪いですけど、
「悪」というより「問題」でしょ。
永田 悪いのは3Pだと。
西本 無理矢理の3P以外は悪くないと。
糸井 3P、3P、言うもんじゃありません!
(また来週)

2007-01-26-FRI