タモリ先生の午後。
こんな職員室があればいい。


糸井 タモリさんも、
理想的な社会みたいなのっていうのは、
考えたことあるんですか?
タモリ やっぱり職人の多い社会というと、
江戸に近くなるのかなぁ。
糸井 こないだ、南米の奥地に
ヤノマミ族っていうのがいて。
オトナも子どもも、遊び道具を見つけると
急に全員で遊びだすんです。あれもいいなぁ。
あれは江戸時代を越えてるかもしれない。
ヤノマミ族は、全員、完全に高田純次です。
タモリ (笑)高田純次の世界だよね。
糸井 たとえば紐があったら、綱引きがはじまる。
そうすると、他の仕事してるヤツみんな来て、
引っ張りあったり。ときどき食いものを捕りに、
やる気のあるヤツがどこかに行って捕ってきて
「あぁ疲れた」って言っても、切り分けたときには、
自分の家族のは最後なんです。

モラルってそういう感じで、
バランスの中じゃないですか。
そこでは、誰も命令しないのに、
ちゃんと遊びながら成立してるんです。
タモリ すばらしい。

20何年前に、サモアって島へ行ったんですよ。
ま、半分仕事だったんですけど、
サモアのまたさらに裏側の、
ウエスタンサモアと、オーストラリア領サモアかな?
信託委任統治みたいなところで。

そこの首都に行ったんですけども、
首都っていっても信号ひとつしかないんですけどね。
案内されて、「あそこが大蔵省」っていって指して、
大蔵省って、おみやげもの屋なんですよ。

「大蔵省って言うけど、おみやげもの屋じゃない?」
「いや、それの2階が大蔵省」
そう言ってましたからね。
糸井 (笑)
タモリ その裏側の島に行ったら、みんな、
海の家みたいなとこに住んでるんですよ。
小学校みたいなのが多くて、
子ども連れた女の人がいて。
「これ、あんたの子か?」
「あ、そう、ウチの子」
「じゃ、結婚してるのか?」
「ううん」
そう言ってるから、よく事情を聞いたら、
子どもは、誰の間と産んでもいいんだって。
ほとんどが、外の血を欲しがるんですよね。
俺たちなんか行くと、えらいモテるんですよ。
夜這いに気をつけてって言われました。

で、いいなぁと思ってたけど、
ま、そこの女っていうのは、
俺よりこう、ヒゲが濃いヤツがいて。
糸井 (笑)
タモリ それでいろいろ話してたら、
子どもは村で育てるんだそうです。
いちおう所属は決まるらしいんですよ。
ここんちの子、とかいうのは。
でもどこでもいい。

村全体でこう、共同で学校があって
教会があって、そこに来て、夜、
それぞれの家に帰るだけなんですよ。
で、家だって、ぜんぶ壁がないですからね。
糸井 社会=広場なんですね。
タモリ ええ。夕方になると男たちが海へ入って、
食料捕ってきて、みんなで分けて食べる。
それだけでなんの仕事もないんですよね。
糸井 それってさ、今の日本のお母さんからしたらさ、
そんなことしてちゃイカンの典型ですよね。
タモリ うん。ほとんど学校ったって、
1日遊んでますからね。
糸井 そんな、起きて遊んで寝るだけでいいのか、
っていう話ですよね。
タモリ うん。そこでは、
それでじゅうぶんじゃないかって。
糸井 いいですよね。
タモリ うん。
糸井 ヤノマミ族とか、
タモリさんが行った村とかに比べて、
何を、いっぱい加えたんですかね、
ぼくらの社会は……。
タモリ 何でしょうねぇ。
理想にちょっと近いのは、
江戸かなっていう感じはしますよね。職人が多くて。
糸井 うん、そうですね。
  (つづきます。)

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2004-01-03-SAT

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