タモリ先生の午後。
こんな職員室があればいい。


糸井 江戸って、火事で焼けるのを前提に
家建てたりなんかしてて。
ペラペラな世界ですよね。
タモリ (笑)
糸井 あの、江戸東京博物館は行ったことあります?
タモリ ああ、行こうと思ってたけど、
まだ行ってないです。
糸井 行って下さいよ、一度。あれはいいです。
ぼくが、いちばん好きなのは、
地層を切り取ったものがあるんです。
3回火事の跡があるんです。
それで、まもなく3回焼けてるんですよね。
きっと、作ってもムダだなっていうことを、
みんな胆に銘じたんだと思うんです(笑)。
それが江戸ってもので。
タモリ それぞれに火除け地蔵とか、
大火のたびにできてることはできてるんですけどね。
糸井 でも、消火の仕方とかって
もう、壊すだけじゃないですか。
で、風向きによっちゃ、
こっちまで行くだの何だのっていってるだけで(笑)。
タモリ 下町は、あれは確かに燃えますよ。
糸井 あれ、要するにプレハブなんでしょう?
タモリ それ、なんで、
これぐらい(ホテルのツインの部屋)の家って、
下町の人間にとっては大邸宅みたいな。
もっと小っちゃいですね。
なんでそんなに小っちゃいのかっていうと、
それぐらい小っちゃくしないと、
買い物に行ったり、どっかに行ったりっていう
生活圏が、遠くなるらしいんですよ。
基本は徒歩ですから。
糸井 へぇー。
タモリ それで、小っちゃくするらしいんですよ。
買い物も徒歩で行ける範囲。
仕事も、徒歩で行ける範囲。
糸井 そのわりには、その、
高田馬場から吉原まで出かけていったとか、
あの、「黄金餅」の落語の中にある、
地名をずーっと言ってくのなんか、
すごい距離を、歩いてますよねぇ。
タモリ ま、そのへんのパワーはありますからねぇ。
糸井 その、品川に行くわ、吉原に行くわ(笑)。
タモリ それはパワーありますよね。
糸井 あれ、大祭りなんですかね。
タモリ 大祭りなんだね。で、夜鷹が多かったでしょ?
糸井 ふーん。
タモリ で、人口比で調べると、
だいたい40万人に対して、
女の人が10何万しかいないんですよね。
糸井 うん、そうですね。
江戸は労働力を集めた場所ですもんね。
タモリ ええ。それで、夜鷹の数は計算するとね、
江戸の女のうちで4人にひとりは
売春婦って感じのことになるんですよ。
そうすると、職業がないわけですね。職業が。

面白いのは、
どういう売春の形態があったか調べると、
豆売りとか、何とか売りっていうので、
おかしいな、と思ってたら、
職業を説明する文章が同じなんです、

「最初は、近郊のほうから、
 ほんとに豆を売っていたが、
 いつしか売春のほうへ」

他もそうなんですね、
「ほんとうは何とかを売りにきたけども、
 いつしか売春のほうに」って。
ぜんぶ売春に流れるんですよ。
糸井 矢場とかも。
タモリ あれも、いつしか
ほんとうは矢だったらしいんです。
いくつか矢を揃えてやるとか、
あれ、絵が資料で残ってるんですけどね。
矢を揃えてやりながら、
少し足が開いてるんですよ。
糸井 いつしか!(笑)
タモリ いつしかなるんですよ。
いつしかなるのが、やっぱ売春なんですね。
  (つづきます。)

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2004-01-04-SUN

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