人生の3分の1は、ふとんの中。1/3LIFE

Interview 02 宮尾俊太郎さんに聞いた眠りの話。

ほぼ日「ねむれないくまのために」PRESENTS
個人差はもちろんあるけれど、
人はだれでも、おおむね、
生活の3分の1近くをふとんの中で過ごします。
みんな、どんなふうに過ごしているんだろう‥‥? 
寝つきは? 目覚めは? 快眠法は? 
100人にたずねれば100種類の答えが返ってきそう。

様々な方々に、聞いてみることにしました。
「あなたの、眠りとのつき合い方を教えてください」

シリーズ2回目にお招きしたのは、
バレエダンサー・俳優の宮尾俊太郎さんです。
宮尾俊太郎さんプロフィール

第1回 
                            自分にとって、ベストなリズムを。

──
様々なジャンルでご活躍の方々に、
眠りについてうかがう連載をやっておりまして。
本日は、宮尾さんにお越しいただきました。
宮尾
眠り。睡眠ですね。
ぼくは睡眠に関してすごく興味がありますし、
自分なりに勉強もしてきました。
──
おお、頼もしいです。
勉強してきたということは、
宮尾さんご自身もそれで悩んでいらっしゃる? 
宮尾
基本的にはよく眠れる人間なんです。
ただ職業柄、
舞台やドラマの本番直前はどうしても‥‥。
──
ああ。
本番の前日などは、緊張で眠れなくなりそうです。
宮尾
やはりバレエの本番前日は
キリキリ、ピリピリしてしまいます。
あとはドラマの撮影で
寝る時間が不規則になったり、
考えごとがあって眠れなくなったりもしますね。
──
バレエの舞台と、ドラマのお仕事では、
また微妙に心持ちが違うのでしょうか? 
宮尾
そうですね。
バレエとドラマでは、生活リズムも違いますし
使う体や頭も違うので、
睡眠の質も変わってくると思います。
──
ちなみに、前回ご出演いただいた
俳優の菊地凛子さんが、
夜にセリフを覚える作業をするので
眠れなくなるとお話ししていました。
宮尾
ああ、なるほど。
夜にやった方が覚えられる
という人も多いらしいのですが、
ぼくは寝起きに台本を読むのが
いちばん効率がいいです。
──
朝に。
人それぞれなんですねえ。
宮尾さんは、俳優のお仕事と
バレエダンサーのお仕事の割合は
現在どれくらいなのでしょう?
宮尾
いまは、俳優が8割くらいですね。
長年、バレエをやった後に大怪我をして、
年齢的にも「そろそろかな」と思ったときに
俳優の道を本格的に進むことになったんです。
──
バレエを本格的にやられていたころは、
熊川哲也さんのKバレエカンパニーに
所属されていましたよね。
宮尾
そうですね。
正直、かなり厳しい世界でした(笑)。
──
その時代の「眠り」はどうでしたか? 
宮尾
あのころは‥‥ほぼ気絶、ですね。
──
気絶‥‥! 
宮尾
肉体的にも精神的にも疲れすぎていたんです。
ベッドに入った瞬間、眠りに落ちて、
朝起きたら全身が痛くて
「お、起きれない‥‥」っていう(笑)。
──
その経験があったから、
睡眠について勉強するようになったのでしょうか?
宮尾
いや、そのときはあまり何も考えていませんでした。
27歳のときに靭帯を切る大怪我をして、
活動量が制限されたんです。
そのとき「どうやって体力を維持をする?」とか
「どのようにパフォーマンスを上げる?」
について調べていくなかで、
睡眠の質を上げることに辿り着いたんです。
──
自分の体のメンテナンスをするなかで、
「眠り」の研究に行きついたわけですね。
宮尾
ええ。
ただ、ぼくが研究して見つけたのは、
あくまで自分にとっての手法なんです。
いちばん大切なのは、
自分のライフスタイルに合ったやりやすい方法を、
体の声を聞きながら、ちゃんといろいろ試して
見つけることだと思います。
──
「自分はどうなのか」を、きちんと探す。
宮尾
はい。
以前、ねむくまさんに出ていた
「快眠のための入浴法」の記事
を読んだんです。
──
ありがとうございます、
わたしたちの記事を読んでいただいたんですね。
宮尾
どの記事だったか‥‥
「入浴は寝る1~2時間前がいい」
と書いてあったじゃないですか? 
──
快眠セラピストの三橋美穂さんに
「入浴と睡眠」についてうかがった記事ですね。
宮尾
ぼくにとってのベストは90分前なんですよ。
──
ちゃんと時間を計って。
宮尾
そうです。
ぼくの場合は90分でした。
食事のタイミングとか、
ドライヤーにかかる時間とか、
人それぞれだと思うので、
自分の体質に寄り添って
ベストのリズムを見つけることが
大切だと思っています。
──
寝る90分前に入浴する以外に、
何か気を付けていることはありますか? 
宮尾
そうですね‥‥
コーヒーは寝る前は控えるようにしています。
あとは、食事は寝る4時間前までに済ませます。
──
そうした時間も、
ご自身でいろいろ試してわかったことなんですね。
宮尾
はい。食事だったら4時間。
それ以上あけちゃうと、
今度は寝る前にお腹が空いて
逆に寝られなくなる可能性があるんです。
4時間が理想ですね。
──
まいにち、そのリズムで計画的に
暮らしていらっしゃるんですね。
宮尾
いや、実はそうでもなくて(笑)。
──
え? といいますと? 
宮尾
なんとなくやるようにしています。
──
なんとなく。
宮尾
眠ることを後まわしにしてでも
どうしてもやりたいことがあったら、
「まあ寝られなくなるけどいいか」と思って
そっちを優先する日もあります。
──
まいにちのこととして
厳しく決めているわけではないんですね。
で、舞台や撮影があるときは、
眠りのためのリズムを優先するような。
──
そうですね。
自分のベースを決めておく感じです。
そうすれば、
眠りを大切にしたいときに戻れるので。
──
なるほど。
「ぜったいにこうしなければ」と思うと、
また変なプレッシャーになりそうです。
宮尾
そうそう。
そのときの自分の感情に寄り添いながら、
「なんとなく」くらいに思っておくのが
ちょうどいいんじゃないかなと思っています。
──
「なんとなく」の精神で構えつつ、
でも自分にとっての
ベストのリズムはわかっていると。
宮尾
バレエにしても俳優にしても
体を動かす仕事なので、
朝のコンディションが
そのままパフォーマンスに影響するんです。
だから「こうして寝たら、次の日の自分はこうなる」
というのをたくさん試してきました。
「自分の体が実験台」みたいな感じなんです。

(つづきます)

撮影:池ノ谷侑花(ゆかい)
  • 2023-06-07-WED

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