中上健次私論

  • 時間

    60
  • 音質

    昭和文学会の春季大会として
    行なわれた講演。
    当日は吉本隆明のほか
    日高昭二氏らによる講演があった。
    客席録音のためノイズが入るが
    比較的クリアに収録されている。

  • 講演日時:1993年6月5日
    主催:昭和文学会
    場所:国学院大学常磐松2号館2階中講堂
    収載書誌:未発表




〈都会に出た熊野人〉、
〈熊野という場所で育った熊野の子どもたち〉
というふたつの問題が、
中上さんの文学のふたつの足だと思います。
都会に出てきたアジア的田舎の人といえば、
ごくふつうになってしまいますが、
中上さんの作品のおもしろいところは、
都会に出てきたアジア以前の人、
つまりアフリカ的段階の人ということです。
それが中上さんの文学のひとつの特色です。
もうひとつの特色は、アフリカ的段階の自然、
つまり自然にまみれている自然人の子どもたちの特色を、
中上さんが非常によく描写していることです。
これが中上文学のふたつの足である、と思います。