漱石をめぐって
──白熱化した自己

  • 時間

    166
  • 音質

    手元ノイズが入っている
    個所があるものの、
    全体を通してクリアに収録。

  • 講演日時:1983年11月12日
    主催:日本近代文学会
    場所:武蔵大学
    収載書誌:思潮社『白熱化した言葉』(1986年)




漱石の作品でいちばん魅力的なのは、
作品の登場人物を自分なりに設定しながら、
ある個所に来ると作者自身が作品のなかに乗り出して
登場人物に感情移入して白熱するところだと思います。
そこでは作品の登場人物と作者が融合してしまい、
その個所が作品でいちばん白熱してしまうのです。
もちろん物語ですから巧みに設定されておりますが、
主人物には作家・漱石のもっと根底にある、
人間・漱石みたいなものの自己移入が
必ずあるように思います。
そこのところが漱石文学の
いちばんの魅力であると思います。