ホーフマンスター
ルの視線

  • 時間

    146
  • 音質

    場所は京都精華短期大学大教室。
    一般の人にも開放され、
    他学生の参加も多かった。
    音源は主催者提供。
    入力音ノイズなどが入っており、
    音質はあまりよくない。

  • 講演日時:1979年11月15日
    主催:京都精華短期大学 学生部
    場所:京都精華短期大学
    収載書誌:弓立社『吉本隆明全講演ライブ集 第16巻』(2006年)




ホーフマンスタールの考え方は、
日本の浪漫的な考え方の詩人、
文学者たちがよく受け入れた考え方です。
無意識のうちに受け入れ、
そして無意識のうちに実現していた考え方です。
堀辰雄でも立原道造でも、また芥川龍之介でも、
文学が文学である本質的なものが含まれているとすれば、
それはたぶんホーフマンスタールが
〈深淵〉としてとらえた、意識のある空白性の状態を、
作品のなかに形象化できていることだと思います。
ホーフマンスタールが〈深淵〉という概念でいうのは、
一種の歴史概念に近いものです。
歴史概念であり、神話概念であり、
同時に神話概念のいわば否定の瞬間になっているものです。
あるいはそれが無化される瞬間、
あるいは伝統性というものが無化される瞬間としての
意識の空白、それを〈深淵〉と
ホーフマンスタールは名づけていると理解されます。
このことはホーフマンスタールの
浪漫的な概念のうちで重要な問題です。