『死霊』について
──東北大学にて

  • 時間

    105
  • 音質

    「高橋和巳追悼・
    『死霊』完成記念講演会」
    と題された催しでの講演。
    ノイズや残響音が入っているが
    比較的クリアに収録されている。
    埴谷雄高氏の『死霊』は、
    本講演の前年である1975年、
    26年ぶりに「第五章」が発表。

  • 講演日時:1976年5月11日
    主催:東北大学学友会文芸部/「濫觴」同人/現代イデオロギー研究会 後援:東北大学教養部、学生自治会臨時執行部
    場所:東北大学 川内記念講堂
    収載書誌:未発表




太平洋戦争と現在では呼ばれている戦争を、
何らかの意味で否定する考え方を、
文学か思想によって完結しようとした
本当にまじめな人間がいたとしたら、
その人は絶対に
戦後に生きては存在することができなかったと思います。
にも関わらず生きてしまったとすれば、
それはどこかで矛盾を抱え込んだということです。
そしていまもなお、矛盾を抱え込んで、
何らかのかたちでそれを解き明かしながら、
また矛盾を呼び込むということに悪戦苦闘している、
そういう文学者は少数ですけれどもいるわけです。
その象徴となりえる人が埴谷雄高という文学者だと、
僕には思われます。