吉本隆明さんの、中期の2大著作は
『言語にとって美とはなにか』
『共同幻想論』
だといわれます。
吉本さんご本人も、
この2冊を記した「40代」という年代について
「自分でこれ以上のことはできないんじゃないかと
思い込む時期だ」
とおっしゃっていたことがあります。
(でもそう思うことは間違いだ、と
続けておられました)

吉本さんが
「この日付けだけは忘れられない」と言った
8月15日の今日、
吉本さんが記した代表作のひとつである
『共同幻想論』をとりあげたいと思います。
初版が出たのは1968年、
全共闘運動や新左翼運動が高まった時代でした。
多くの若者が吉本さんの著作を読みました。

そこからさらに23年前。
1945年、終戦を20歳で迎えた吉本青年は、
世界のしくみを知りたいと思い、
得意分野だった文学と、経済学を足がかりにし、
人間と社会を、あらゆる分野から分解し、
根本からさぐろうとしました。

「国家は幻想の共同体だ」という概念は、
もともとマルクスから得たと、
吉本さんは『共同幻想論』の文庫版のための序文で
書いていらっしゃいます。

吉本さんは、
自分ひとりで見ているのは「自己幻想」、
男女などのふたりで見るのは「対幻想」、
そして団体で見る幻想を「共同幻想」としています。
この3つの幻想は相互関係があります。

芸術のことを考える場合は自己幻想、
恋愛関係を考えるなら対幻想、
というふうにあてはめれば、
自分自身が取る行動の根拠がわかり、
ずいぶん客観視できるような気がします。

そして、社会でみる共同の幻想が、
国であり、宗教であり、法であり、風俗や習慣です。
私たちは、共同性をもって、世界と関係しています。

『共同幻想論』に関係する講演は、数多くあります。
本日は、関わりが深そうな6講演を挙げます。
『共同幻想論』を読む前でも、その後でも、
本を読まないと決めていても、
ぜひひとつでもお聞きになってみてください。
著者本人の声色や、説明の調子で、
内容がさらに深まりますし、
この考えに興味もわくと思います。

また、多くの方のご協力により、
講演のテキスト化がずいぶんすすんでいますので、
文字起こしされたテキストを補助として読めば、
さらに吉本さんの「幻想論」に近づけると思います。
(テキストは各ページの右下にリンクがあります)

人が見る幻想の中には、さまざまなものがあります。
自分が見ている幻想はなにか? 
このひとつの視点が入るだけで、
たくさんの事象を根本から見直す
手がかりをつかむことができます。

吉本さんは、ものごとを
根源的かつ普遍的にとらえる方法を
つきつめようとしましたが、
その「根本のしくみ」とあわせて、
「現在の状況」を、
同様の重さをもって視点とすることが
大切だとおっしゃっていました。

吉本さんが49年前に著した普遍的な考えを、
自分がいまの状況に合わせて、
自分で考えられるように、
今日8月15日に講演を聞こうと思います。

どうぞ『共同幻想論』の6講演を
おたのしみください。

2017年8月15日
ほぼ日刊イトイ新聞編集部記