良寛は江戸後期の僧侶で、
和歌や書の名手として知られています。
また、日がな一日、近所の子どもたちと
まりつきやかくれんぼなどをして
遊びすごしたといわれます。
俗事には執着せず、日々托鉢をして、
寺には入ろうとしなかった人生について
多くの方が親しみを感じている僧侶です。

しかし、良寛が記した
「良寛禅師戒語」を見てみれば、
良寛は、非常に鋭敏で、過剰に考え、
自己嫌悪をして、
しょっちゅう自分を超えようと
気を使っていた人だと
吉本さんは指摘します。
(A061の「僧としての良寛」)

そして、良寛が主張するようなことに
すべての人が関心をおぼえ、
心の持ち方を変えていけば、
どういうことになるか?

「良寛のように理想をもって、みなさんが
 心の持ち方を変えていったとしたらば、
 変えない人だけが
 得をしちゃうんじゃないか?
 そして、変えていかない世界に対しては、
 無関心になってしまうんじゃないか?

 仏教も儒教も、
 東洋における思想
 というものは
 ほとんどすべてが
 この問題を
 はらんでいます」

現在、わたしたちがなじみつつある
西洋思想からすると、
良寛の言っていること、または東洋思想は、ともすれば妙な倫理道徳というだけのものに
なってしまうのかもしれません。
しかしそれは間違いで、
東洋思想の高度さを確認したうえで
「道徳的であり、損をする」
「無関心である」という
ふたつのナンセンスさが交わるところが
大変重要だ、と吉本さんは語ります。

宗教、書、歌、さまざまな面から近づき、
良寛の思想を主題にした講演を
長い年月にわたって
少なくとも4つ、吉本さんは行っています。
音質の悪い講演もありますが、
講演の文字おこしテキストがあるものも多いので、
参考にしていただきながら
ぜひひとつずつ、おたのしみください。