YOKOO LIFE ヨコオライフ
第12回 知識がある人。
糸井
「ほぼ日」は毎日、19年間やってきています。
大昔に、横尾さんにハラマキのデザインを
お願いしたことがありましたよね。
横尾
そんな大昔になるかなぁ。
糸井さんは飽きっぽくないんだね。
糸井
飽きっぽいけど、
わりと我慢強いんじゃないでしょうか。
横尾さんもそうですよ。
飽きっぽいけど絵を描きつづけています。
横尾
絵の中で飽きっぽいから、
違うスタイルになったりはするけどね。
糸井
そうです、そうです。
ぼくもそうですよ。
横尾
飽きるのと忘れるのは関係がないのかなぁ。
糸井
まぁ、忘れっぽいというのが
特徴としてはありますね。
飽きても忘れちゃうから。
横尾
荒俣(宏)さんはね、
どんなテーマの仕事を頼まれても、
引き受けられるんだって。
例えば「空港について」の仕事が来るとするでしょ。
そうすると、空港に関する本を何冊か読む。
そしたらもう、わかるらしいの。
仕事が終わって空港のことを忘れるのかというと、
忘れない。
全部がインプットされたまま。
そういう人が、世界に何人かいるらしいよ。
前に、荒俣さんと
和歌山の水族館に行ったことがあるの。
水族館って、魚が泳いでるじゃない?
熱帯魚かなんかがいっぱい、
見たことがないのばっかり泳いでて、
彼は全部名前を言うの。
そんで、水槽の横のネームプレートを
こっそり見たら、合ってんのよ。
一同
(笑)
横尾
名前が難しいのばっかり。
それを彼は全部言えるんだよね。
「じゃ、こっちは?」と突然言っても、
「ああ、それは」って感じでさ。
糸井
たぶん、荒俣さんは魚は特に
くわしいんじゃなかったかな。
日魯漁業かどこか、お魚の会社にいたんですよ。
横尾
あ、そうなの? でも熱帯魚は食べないでしょう。
糸井
たしかそうですよ。
横尾
あげくに、泳いでる魚を見ながら、
開きにして干すとこうなって、
和えて食べたらこう、みたいな、
魚料理のことまで言うわけ。
一同
(笑)
横尾
魚屋さんの軒先で言うんだったらわかるけど、
水族館だからさぁ。
魚だけじゃなくて、
荒俣さんはなんにでもくわしい。
糸井
そうですね。
横尾
悲劇かもしれないけれども、
いったんインプットしちゃうと、忘れられない。
暗記だけで覚えるんじゃないんだろうね。
糸井
それはきっと、ある意味で悲劇ですね。
自分の発想で物事を考えるときには、
知識が邪魔だったりするでしょう。
知識の沼を歩くよりも、何も知識がない、
平原のような場所で考えたくなります。
横尾
知ってることが邪魔になるときはあるだろうね。
糸井
そうですね。
ぼくらは大草原で走るのがいいですね。
横尾
でも最近は、荒俣さんがいなくっても、
iPhoneでなんでもわかるんでしょ?
iPhoneに向かって何かしゃべると、
その答えを勝手に返してくれるっていうじゃない。
糸井
ありますね。
横尾
ちゃんと答えます?
どんな答えが返ってくる?
糸井
「よく聞こえませんでした」って
言われます。
横尾
それ、答えじゃないじゃない。
糸井
しょっちゅう言われますよ。
でも、「横尾さんにメールを出したい」と
電話に向かって言ったら、
「横尾忠則さんですか?」みたいなことは
けっこうやってくれます。
横尾
どうしてそういうことができるの?
どないなってんの? 宇宙では。
糸井
宇宙はちょっとよくわからないですけど、
音声を日本語にして認識するんですよね。
横尾
それは、あるデータを集めてるってこと?
糸井
「横尾さんに電話をしたい」
横尾
あ、それがそうなの?
糸井
ああ、だめだ。失敗した。
「縦は主に垂直や前後の方向、横は主に水平」
横尾
ずいぶんまじめなこと言うね。
糸井
「カバは英語でなんて言うの?」
くらいのことを訊くのがいいと思います。
横尾
でもこうやって、
なんでもかんでも質問して、
答えが戻ってくると、
人間は考えることをしなくなるよね。
糸井
そこまで発達していないから大丈夫でしょう。
横尾
学校に行かなくても、これさえあれば、
というところまでいかないの? 
「1+1は?」とか訊くとどう?
糸井
それは「2」と答えるでしょうけれども、
学校に行かないと、
「1+1」という概念が、
質問する側にないでしょうからね。
辞書的なことを調べるのには使えますよ。
横尾
例えば「生きる目的はなんでしょう」って。
糸井
やってみますよ。
横尾
なんて答えてくれるか。
糸井
「生きる目的はなんでしょう」
あ、ウェブ検索で、
かつて答えた人のことが出てきました。
「生きる目的はなんだと思いますか?
私は男性を恋愛対象として見ていません。
友達や親類としてなら好きになります」
横尾
訊かなかったほうがよかった。
糸井
申し訳ないです(笑)。
(月曜日に続きます)
2017-10-01-SUN