第1回 毛の生えた場所。
糸井 宮坂さんは、社長ですけど、
「さん」づけで呼べという
命令をしていらっしゃるんですか?
宮坂 いや、とくに命令はしてないです。
初代の社長の時代から
「さん」づけの強制はありませんでしたが
全員が「さん」づけで呼んでました。
糸井さんは、「さん」ですか?
糸井 ぼくはときどき、からかい言葉として
「社長」と呼ばれてるみたいです(笑)。
宮坂 ぼくは、社長とは、さすがに呼ばれないなぁ(笑)。
「会社の偉い人です」なんて言われると、
けっこうドキッとします。
「偉い人とそうじゃない人、壁があるの?!」
って思うんだけど‥‥。
糸井 宮坂さんのように
こうして社員食堂まで作った人でも
まだそうなっちゃう、ということですよね。
まぁ、新人さんもいるし、しょうがないんだけど、
ここでこうして、「おんなじゲーム」をしていくと
わかってくるし、直りますよね。
宮坂 そうですね。そういう意味で
オフィスからベースへ、
物理的に離れることは、
意義があると思います。
糸井 もしかして、ここは茶室かもしれないね。
宮坂 ああ、そうですね、茶室ですね。
糸井 うん。みんなが入れる茶室。
全体がにじり口なんだ。
宮坂

あと、もうひとつ思っていたのは、
ここを昔の日本の家の縁側のようにしたいと
考えていました。
ぼくの祖母の家に縁側があったんですが、
家の縁側までは、誰が座ってもいいんです。
一歩進めば部屋にも入れるのに、
結構、微妙な空間ですよね。

BASE6は、いろんな理由があって、
オフィスの中には作れなかったんですが、
せっかく会社の外で、しかもそばにあるんだったら、
むしろ縁側風に使おうと思いました。
社員も使うし、社外の人も気楽に立ち寄れる。
社内か社外かいったいどっちなんだ、というような
スペースにしたかったのです。

糸井 ぼくは数年前に京都に家を作ったんですが、
やっぱり圧倒的にでかい縁側をつけました。
そのぶん、ひさしも広げてね。
つまりそこは「雨露をしのげる外」なんです。
宮坂 はい、はい、そうですね。
糸井

内ともいえるし、外ともいえる、
ああいう空間はすごくおもしろいですね。
そういうこともあって、
縁側的な発想について
ずいぶん考えた時期がぼくにもありました。

そしてぼくは、縁側がもっとも活きてる場所というのは
お寺だと思い至りました。
お寺は、ひさしがすごく長く、
大きな縁側を持っています。
縁側の幅があるから、雨風が
障子まで吹き込むのに遠すぎるくらいです。
そして、お寺は塀で取り囲まれているのですが、
その塀が低い。
泥棒は入っていけるはずなのに‥‥なぜか、
入らないんですよね。

宮坂 そうですね。
お寺はフルオープンだけど、
泥棒は入りづらいです。
糸井 そうなんですよ。
だから、あれはきっと
理想的なものなんじゃないかと思うんです。
宮坂 昔は、旅行している人が
お寺によく泊まったみたいですね。
まさに「ベース」のような施設ですね‥‥。
糸井 なるほど、まったくそうですね。
だから、会社のセキュリティが
どんどんきびしくなっていくことは、
あまりいいことじゃないのかもしれない。
宮坂 そうですね。
内と外を分ける場所は必要なんでしょうけど、
あまりに分けすぎちゃうと、よくない。
内と外がわけのわからないような場所は
必ずあったほうがいいですね。
糸井 この「BASE6」は、
たとえばぼくらが来たいときには
どうすればいいんですか?
宮坂 キャパシティの問題もあって、
お昼の時間は社員専用です。
つまり、社員食堂。
夜のオープンタイムは、
社員同伴であれば誰でも来られるようにします。
糸井 じゃ、「社員」がポイントですね。
宮坂 道端で、社員をつかまえてくれてもいいです。
糸井 「ぼくら、友だちだろう?」といって、
入口でつかまえる。
会場 (笑)
宮坂 ヤフー石巻復興ベースは、
ほんとうにそういう雰囲気になっているんですよ。
糸井 そうなんですか。
宮坂

あそこはかなりオープンなスペースに
なっているんです。
最初は社員だけが使っていたんですが、
NPOの方が来てくださったり、
地元のみなさんが
町内会議を開いたりしているようです。
この前も、石巻とテレビ電話で会議をしていたら、
うしろで女子高生がいっぱいいました。
「何をやってるんだ」と言ったら、
英語を教えてるって(笑)。
何がなんだかわかんないことになっています。

石巻は、基本的にふだんはeコマースの仕事を
しているんですが、
合間にいろんな方が出入りしていて、
刺激的でおもしろいスペースです。

糸井 じゃあ、このBASE6は、
6つめのベースということなんですか?
宮坂 いえ、この「6」は、
六本木の6です。
糸井 そうなんだ(笑)。
宮坂 いまあるベースはですね、
最初にできたのが石巻、
次が今回のBASE6です。
今年4月に、白馬村にもベースを作ります。
糸井 ああ、いいですね。
宮坂 北海道の美瑛町から廃校になった
小学校がありますよ、というお話をいただきまして、
来年の春にはそこにも作ります。
ごはんを炊ける給食設備があると聞けば、
それはもう、ベースを作るしかないだろう、
ということになりますね。
もうひとつ、副社長が千葉の館山に
家を買ったんですが、
そこもベースという名前になってます。
会場 (笑)
宮坂 最近は社員が仕事によく使います。
糸井 自宅なのに?
宮坂 そうですね。そこは館山ベースだ、といって。
糸井 ひどいね。
宮坂 はい。家ごと基地‥‥。
糸井 ずいぶんあけすけな(笑)。
宮坂 そういう感じで
着々とベースが増えています。
糸井 宮坂さんの「爆速経営」になって、
ベースもそれに合わせて
どんどん増えていくんじゃないでしょうか。
宮坂 そうですね。
儲ければ、いくらでもベースは作れちゃいます。
糸井 誤解を恐れずに言いますが、利益は、いいですね。
宮坂 はい。
そこはもう、儲かってこそですから。
(つづきます)
2014-03-27-THU
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