第4回 おしゃべりのよろこび。

── 戦場カメラマンとして
ご活躍をなさっている一方、
朗読のご活動もされています。
そのふたつのつながりについて
お訊きしたいんですが。
渡部 世界中で、カメラマンとして活動し、
戦場に生きる家族、子どもたちに、
出会ってきました。
── はい。
渡部 取材すること以上の体験として、
戦場で、そこに暮らす人びとと
同じ時間、同じ空間で
生活を、共にしてきました。

子どもたちが、ぼくに、
いっしょに暮らしている兄弟のことや、
食べもののこと、学校のこと、
お父さんのことを、
毎日毎日、一生懸命お話ししてくれました。

大人の男の人たち‥‥つまり、
お父さんやおじいさんは、村の中で、
子どもたちに、
言葉の遣い方や、服の着方、
食べ物の確保のしかた、
生活の文化や慣習を、伝えていました。
生きる方法を、言葉で、伝えていたんです。
その「言葉の力」というものが
すごいと思いまして。
── はい。
渡部 戦場に生きる子どもたちの声を、
日本の子どもたちや、たくさんの方に、
言葉の力で伝えることができないか。

そうしてぼくはずっと、朗読というかたちで、
戦場の家族の声、子どもたちの思いを、
お伝えできればと、感じていました。

そこで、世界の子どもたちの声を、
詩人の覚和歌子さんに、
書き起こしていただくことにしました。

まず、覚さんに、戦場で出会った
子どもや家族の写真を
うわっと見ていただきました。
そしてぼくが、
写っている子どもの背景、声、思いを、
ひとつひとつ、覚さんにお伝えしたんです。

その中で、感じとったものを、
覚さんが、詩に起こしてくださいました。
── 渡部さんの朗読のCDのタイトルは
「Father's Voice」、
つまり「お父さんの声」なんですけれども、
先ほどおっしゃった、
「お父さんが子どもたちに伝える言葉の力」という
ところからきているんですか?
渡部 はい。
これは、直接、父親からの、子どもに対する声、
という意味も、あるんですけれども。
── はい。
渡部 村長さんや、お父さんたちが、
地域で暮らしている子どもたちを
守り、そして育てていく。
そこにはたくさんの方々の声があります。
「Father」は父親でもありますが、
地域や村、国、地球上で
たくさんの、生きる術を、
伝えてくれる人たちの声、
ということで「Father」という
言葉を使わせていただきました。
── もしかしたら、
日本の子どもたちが欲しいものは
そこかも知れないですね。
渡部 はい。
アフガンでも、イラクでも、
電気がなくても、ガスがなくても、
毎日みんなが、「お話し」を、しているんですね。
── へぇ。
渡部 一日中、地面に座って、お話しをしたり、
夜、みんなで寝ながら、お話しをしたり、
朗読や、お話や、井戸端会議、
その中に、子どもたち同士が伝え合ったり、
ゆくゆくは自分の子どもにも
伝えていくような考え方があります。
寄り添う優しさ、
他人の痛みを感じとる思いやり、
生きていくうえでの、
まさに、優しく、
おいしい、生活。
そういうことをどの国でも、
言葉で、伝えていたことに、
非常におどろき、うれしかった、という思いです。
この場面を動画でポン!
── どの地域でも
みなさんけっこうおしゃべり、なんですか?
渡部 よくしゃべりますねぇ。
── へぇー。
渡部 お話しをすることが、たのしみなんです。
戦場で苦しい中、
気持ちを平常心に整えていく方法は、
言葉と、お話しの、よろこびなんです。
さりげない、ひとことが、
泣いていた子どもたちを、
突然元気にさせる力があるんですねぇ。

子どもでも、男性でも女性でも、
たとえ他の人が何も感じなかったとしても、
胸が震えるほど、すとんと落ちる、
やさしい言葉や、あたたかくなる言葉が、
たくさんあったんですねぇ。
そうした、さりげない、「言葉」というものを
たいせつにしていきたいと思いました。

(つづきます)

2011-12-01-THU