渡部	このお部屋、曲線美が魅力ですねぇ。 すべてが、デザインされている。 みごとです。
──	電灯のところに おもちゃのやもりがいるんですよ。
渡部	糸井さん‥‥いや、 編集長の部屋にも、 やもり、いましたね。
──	よく覚えてらっしゃいますね。 社長室の棚のところにいました。
渡部	はいぃ（にっこり）。

──	糸井はバリ島が好きで‥‥ バリ島には、たくさんやもりがいるんです。
渡部	だから、みなさんの、 働いてらっしゃる部屋に バリのポスターが、貼ってあったんですか。
──	あ、すごい。 やっぱり、よくごらんになってるんですね！
渡部	はい。 バリ島、すてきな島ですねぇ。
──	お行きになったことが‥‥？
渡部	大好きです。 ヒンドゥ教の島ですもんね？
──	泳ぎに行くんですか？
渡部	いや。 写真、撮ってました。

──	あ、そうですね。すみません。
一同	（笑）
──	バリ島の中心部ですか？
渡部	はい、ウブドのほうへ。 ジャワ島地震のときに、 バリ島側の被災地にも、取材で 飛び込んだことが、ありました。
──	そういった危険な所に くり返し行かれるわけは、 どんなことなんでしょうか？
渡部	いつも、戦場で、小さな子どもたちが、 泣きながら、ぼくの服を、ひっぱるんですねぇ。 見ると、 「助けてください、助けてください」と、 泣きながら、SOSを、叫んでるんです。 そんな声は、どこにも、 知られていませんでした。 カメラマンとして、子どもたちの声を、 伝えよう、ということで、 現場に戻っていきます。

──	戦地に行くのをやめようかな、と 思われることはないですか？
渡部	約19年間。
──	はい。
渡部	戦場をまわってきたんですけれども、 一度もやめたいと、 思ったことは、ありません。 戦争がなくなれば、 戦場カメラマンはもう、いらない、 ということで、すばらしいんですけれども 世界中に飛び出して、行きたいですね。 世界中の子どもたちの声をもっともっと、 聞いていきたいですね。
──	渡部さんのご本を拝読すると かなり危険な目に遭っておられるので。
渡部	戦場取材で、危険なことが、何度もありました。 爆撃、テロ、 武装組織による、さまざまな拘束事件。 取材すること以上に、 危機管理、安全を第一に、考えています。 つまり、欲張らない取材です。
──	欲張らない取材。
渡部	引く勇気を、持つこと。 これをこころ掛けています。 現地では、必ず、そこで生まれた、言葉を そこの場所のアクセントで話し、 ガイドさんや、セキュリティーのかたに ついていただき、最低３人、 多ければ５人ぐらいで、動きます。 ひとりで戦場を、ふらふらと、歩きまわることは 絶対に、しないんです。

（つづきます）