POSTER 5 & 6 1975年どんな顔するかな1977年
ことし生まれた赤ちゃんが、
お嫁にいくのは21世紀です。
徳光 百貨店にとって、お中元・お歳暮って、
すごい大事なんですけれど、
いっぽうで「ギフト」という考え方が、
70年代半ばになって、出てきました。
お中元やお歳暮というのはギフトではなく虚礼だから、
虚礼廃止をすべきだというような意見もあったりして。
そんな中、伊勢丹は、
「やっぱり、百貨店で売ってるものは、
 すべてギフトであるべきだ。
 そうでなければ、新しい提案ができない」
っていうことから、この広告ができたんです。

どんな顔するかな

ギフトの言葉と言えば、
もう「まごころをとどける」とか
「ありがとうを手渡す」とか
ほとんどボマードでかためたような
決まり文句が多いのですが、
伊勢丹はそれをさっぱり洗い流しました。
ここでのギフトは、もっとパーソナルで、
日常的な「ものを贈るたのしさ」を語っています。
この考え方や、そしてテーマは、
いまでも立派に通用するものだと私は思う。
(一つ一つの具体的なコピーが読めるといいんだけど)

(文:土屋耕一
 伊勢丹社内報 1996年8月号より)

徳光 それまで、百貨店のギフトって、
「パッケージ」だったんですよ。
ほとんどの人がまず価格で選ぶ。
相手のことも考えるけど、最初に価格です。
だから「5千円コース」というように、
そういうパッケージがあるわけですね。
けれども、ギフトというのは、
自分がいいと思うものを、
どうやって相手に渡すかっていう提案だ、
と、土屋さんは考えられたんですね。
この時ね、土屋さんがおっしゃってましたよ、
いちばんいいのは、
明治のチェルシーっていうキャンディの広告だって。
マツヤマ 「あなたにも、チェルシー、あげたい」
徳光 そうです。安井かずみさん作詞の、
「あなたにも、分けてあげたい、チェルシー」
っていうCMソングもありますね。
ほぼ日 あの時って、土屋さん、明治製菓のコピーを?
マツヤマ 土屋さん、明治は、ずっとなさってました。
伊勢丹
宣伝部
「チョコレートは明治」がそうですよね。
徳光 あれもそうだよね、ゴリラ。
マツヤマ 「おれ、ゴリラ。おれ、景品。」
徳光 そうそうそう。
そんな土屋さんが、チェルシーの広告を
誉めていたんです。
「あれですね」って。
ほぼ日 自分がいいと思うものを、
どうやって相手に渡すかっていう提案が
チェルシーの広告には含まれている、
っていうことなんですね。
それで、伊勢丹は「ギフト」へと向かった。
徳光 そう、「デパートにあるものは、
すべてギフトだよ」と。
それから、自分の好きなものを、
好きな人にあげる。
相手がどんな顔するかなっていう驚き。
サプライズですね、今に言うね。
マツヤマ これ、子どもの顔がビジュアルのポスターも
ありましたよね。
徳光 子どもの顔とね、おじいさん。
マツヤマ あ、おじいさんも!
いいお顔のかたでしたよね。
徳光 そして、77年には、この広告が出ます。

ことし生まれた赤ちゃんが、 お嫁にいくのは21世紀です。

1970年代も後半に入って、
ふと数えてみたら、
あと23年で21世紀である。
そうか、このテーマで
広告をつくったら面白いだろう。
まだ、だれもそのことを発信していないし、
というのが発想です。
当時は、お正月に、その年のごあいさつの
広告を出す習慣が伊勢丹にもありました。
企業広告というのは、一種のごあいさつなのですね。
ただこの場合「あと23年で」と書いてしまったのでは、
視覚表現がふくらんでこないのです。

(文:土屋耕一
 伊勢丹社内報 1996年9月号より)

徳光 この頃です。「21世紀」が、
SFではなく、
やがて来る現実として
話に出てきたんです。
マツヤマ そうですね。
徳光 まだまだ、伊勢丹も、
新宿のローカルデパートが、
ちょっと元気になったくらいの頃です。
これからは目先の商売だけじゃなくて、
「どこまで伊勢丹が進化して、大きくなっていくか」
みたいなことを、よく社内でも話していました。
そんななかにも21世紀という言葉が出始めた。
ほぼ日 土屋さんとは、そういう雑談をする機会は、
たくさんあったんですか?
徳光 そうですね。研究所を含めて、僕らがまず話をして、
それを少しまとめたのを、土屋さんに来てもらって、
土屋さんに話をするんです。
土屋さんは、「ふんふん」なんて聞きながらね、
絶対、その場で反応しないんだけどね(笑)。
ほぼ日 (笑)それで、この「21世紀」という言葉が
入ったコピーが生まれた。
徳光 土屋さんも書かれていますけど、
「『あと、23年」じゃ、
 おもしろくもなんともない」と。
やっぱり、こういうのが、
土屋さんのすごいところだなぁ。
これで、本当に、「えっ?」って思いましたもん。
そうか、この子が20歳を過ぎて‥‥って。
みんな、自分のこと、考えちゃうのね、
「あ、そうか、俺は、そうすると、50だな」とかね。
ただ、あとになってわかったんだけれど、
1977年の23年後は、まだ2000年で、
21世紀じゃないんだよね(笑)。
2001年からだから。
そんなことにまったく気づかないくらい、
21世紀って、遠い未来のことだったんです。

1975年(昭和50年)はこんな年


・オヨヨ、グー
・アンタあの娘の何なのさ
・おじゃま虫
・複合汚染
・ニューファミリー


・紅茶キノコ
・月刊プレイボーイ創刊
・プッシュボタン式公衆電話
・家庭用ビデオ登場
・ディスコ「ツバキハウス」開店


・毛皮コート
・プリントドレス
・ワーカールック
・リバティ小花柄
・船底サンダル


・岩波文庫(★1つ) ¥100
・映画 ¥1,000
・ガソリン(1リットル) ¥112
・牛乳(1本) ¥47
・銀行初任給(大卒) ¥85,000
・米(10kg) ¥2,495

1977年(昭和52年)はこんな年


1月・青酸入りコーラ事件
2月・初の静止衛星「きく2号」打ち上げ
9月・王選手、世界新756号ホームラン
  ・日航機ハイジャック事件


・「ムー」
・「岸辺のアルバム」


・「ロッキー」
・「人間の証明」


・カラオケブーム
・スーパーカー
・ミジメ、シラケドリ
・よっしゃ、よっしゃ


・「トンデレラ、シンデレラ」(キンチョー)
・「Oh!クッキーフェイス」(カネボウ化粧品)
・「どんぶりばち浮いた浮いたつるりとシャンシャン」(日清食品)


・「渚のシンドバット」(ピンクレディー)
・「青春時代」(森田公一とトップギャラン)
・「勝手にしやがれ」(沢田研二)
・「昔の名前で出ています」(小林旭)
・「雨やどり」(さだまさし)
・「ダンシング・クイーン」(アバ)


・ガソリン(1リットル) ¥121
・大卒銀行初任給 ¥95,000
・牛乳(1本) ¥52
2013-08-19-MON