POSTER 7 & 8  1978年 あ、風がかわったみたい  1978年 戻っておいで・私の時間
徳光 この頃は、多少、伊勢丹も低迷している頃です。
「かわった」と言わないとだめだったみたいな。
だから、同じように変化を伝えるのでも、
「かわったみたい」と、
「こんにちは土曜日くん。」とは、
全然違うじゃないですか。
「こんにちは土曜日くん。」みたいに、
本気で変わってから言っているわけじゃない。
マツヤマ うんうん。
それで、「みたい」っていうのを
付けられたのかも(笑)?
徳光 そうそう、そんな気がするな。
きっと土屋さんは、こういう言葉で、
伊勢丹に「かわってくれよ」と
伝えていたんだと思います。

あ、風がかわったみたい

企画からのメッセージを、
こんな風に話しことばで、やさしく書くなんて、
あまりないこと。
と指摘されたことがありました。
たしかに「あ、風が」のように
書きはじめるキャッチは、企業広告らしくない。
でも、デパートというのは、
そんなに肩ひじ張って
かしこまってモノを申す企業じゃないでしょう。
「風がかわる」という言葉は、
世の中の景気の動きに
ひとつの期待をこめて発したもの、でもあります。

(文:土屋耕一
 伊勢丹社内報 1996年10月号より)

徳光 しかも、企業広告らしくない。
一種のファッション広告みたいですもんね。
ほぼ日 世の中は元気なんですけどね。
徳光 糸井さんはもう仕事をなさってましたよね。
ほぼ日 1978年は、矢沢永吉さんの自伝本
『成りあがり』を手掛けた頃です。
徳光 そうですか。西武百貨店の
「不思議、大好き。」や
「おいしい生活。」のコピーは80年代ですものね。
でも、この頃から
西武さんが圧倒的に強かったのを覚えています。
そして同年、伊勢丹はこの広告を打ちます。

戻っておいで・私の時間

記憶のいい人なら、おぼえているでしょう。
竹内まりやが歌った「戻っておいで、私の時間」は、
ちょっと前までよくラジオから流れていたと思う。
タイトルが視覚的なため、
歌には適していないのですが。
作ったときには、
まさかポピュラーソングになるとは想像していなかった。
でも、どうでしょう、ここで呼びかけている内容
「自分の時間をどうとり戻すか」は、
いまの世の中でも通用するテーマですね。

(文:土屋耕一
 伊勢丹社内報 1996年11月号より)

徳光 これ、いい広告だよね。
ほぼ日 素敵ですね。
徳光 うん、うん。
本当に、もう一度、個の生活に戻るというか。
「ニューファミリー」が流行し、
家族で動いてた時から、もうちょっと、個人へ。
食品で言えば「個食」が流行った頃ですよ。
たとえば、パンを1斤で売らないで、
2切れで売ってみたりとか、
食品売り場がそんなことやって。
いわゆる、都心生活の独身者とか、
そういう人たちへの売り方も始まった。
伊勢丹
宣伝部
この時、徳光さんは、
このコマーシャル・フィルムを
作ってませんでした?
徳光 そう、映像を担当していました。
CMソングは、竹内まりやさんの
デビュー曲でもあったんですよ。
ほぼ日 ♪手を伸ばせばそこに 私の時間が広がる♪
徳光 その曲は特別で、作詞が安井かずみさん、
作曲は加藤和彦さんによるものなんですけれど、
伊勢丹では
「こんにちは土曜日くん。」
(1972年秋 作詞:土屋耕一/作曲:大野雄二)や、
「土曜日には汗をながそう」
(1973年春 作詞:土屋耕一/作曲:小坂忠)、
「友だちみつけよう」
(1973年秋 作詞:土屋耕一/作曲:小坂忠)、
「も・め・ん・と・木」
(1974年秋 作詞:土屋耕一/作曲:喜多嶋修)など、
音楽を作ってたんですよ。
土屋さんは、作詞って、本格的に言えば、
伊勢丹が初めてだったはずです。
伊勢丹
宣伝部
「こんにちは土曜日くん。」が最初ですよね。
徳光 歌詞を大野雄二さんが見て、
「どうやって、これ、楽譜付けるんだよ?!」
って、すごい悩んでたの。
マツヤマ それは、店内で流されてたんですか?
徳光 店内で流してました。
テレビやラジオのCMに使ったりもしたかな。

1978年(昭和53年)はこんな年


4月・「サンシャイン60」開館
5月・新東京国際空港開港
8月・日中平和友好条約調印
11月・集団コレラ発生


・「サタデーナイトフィーバー」
・「未知との遭遇」
・「スター・ウォーズ」
・「野生の証明」


・「ザ・ベストテン」
・「熱中時代」
・「24時間TV愛は地球を救う」
・「おていちゃん」


・「UFO」(ピンクレディー)
・「君のひとみは10000ボルト」(堀内孝雄)
・「時間よ止まれ」(矢沢永吉)
・「微笑がえし」(キャンディーズ)
・「ストレンジャー」(ビリー・ジョエル)
・「ハロー・ミスター・モンキー」(アラベスク)


・なんちゃって
・フィーバー
・アー、ウー
・窓際族


・パンクファッション
・竹の子族
・タンクトップ
・VAN倒産


・口裂け女
・インベーダーゲーム
・ぶら下がり健康器
・試験管ベビー


・「君の嘘は10000ボルト」(資生堂)
・「Mr.サマータイム」(カネボウ化粧品)
・「あんたが主役」(サントリー)
・「ネバーギブアップ」(角川文庫)


・ガソリン(1リットル) ¥109
・牛乳(1本) ¥55
・米(10kg) ¥3000
・はがき(1枚) ¥20

2013-08-22-THU