ゼロから立ち上がる会社に学ぶ 東北の仕事論。 セキュリテ被災地応援ファンド 1周年記念シンポジウム 篇
セキュリテ被災地応援ファンドのこと 2012年4月24日、よく晴れた日。 気仙沼港を見下ろすように建つチャペルに 6つの食品会社の代表が集まりました。 フカヒレ専門店、石渡商店さん。 ほぼ日でもおなじみ、アンカーコーヒーさん。 気仙沼で唯一の製麺業、丸光食品さん。 陸前高田の老舗醸造業、八木澤商店さん。 「金のさんま」の、斉吉商店さん。 そして南三陸町の水産加工業、ヤマウチさん。 ちょうど1年前、 「セキュリテ被災地応援ファンド」は この6社から、この場所で、はじまりました。 そんな「はじまりの6社」が再び集まって 1周年の記念シンポジウムを開催したので そのようすを、 ダイジェストに編集してお届けします。 なお、司会進行は ミュージックセキュリティーズ猪尾愛隆さんと ファンド立ち上げに関わった山田康人さんの 息の合ったナイスコンビです。
第1回 お醤油屋さんとコーヒー屋さんの コラボレーション。
猪尾 工場ができれば「ひと安心」というような
印象がありますけれど、
どうやら、そうではないようです。
お金が集まって、工場が完成したとしても
そこから先が
実は「本当の試練」だとうかがっています。

陸前高田の八木澤商店さんでは、
震災以前、
「水産加工会社への売上」が「5割」を
占めていました。
今後、順調に自社工場ができたとしても
同様に、取引先の会社さんにも
復活していただかなくてはなりません。
河野 はい、そのとおりです。

私どもの会社は、売上では「半分」が、
お客さまの数にして「8割」が、
この地域の水産加工会社さんでした。

でも、震災から1年が経った今、
八木澤商店とコラボレーションして
商品を出そうと
おっしゃってくださるお取引先が増えています。
みなさん、立ち上がろうとして
必死になって、やってらっしゃいます。
私ども、そうです。

であるならば、
新しい価値を創造していかなきゃならない。
いろんなところに
可能性は秘められていると思います。

たとえば、一関市にアーク牧場といいまして、
豚肉を加工してネットで売る
すごく売れているソーセージ屋さんが
あるんですけど
先日、そこへうかがって
味噌とソーセージでなにかできないかな、と
話していたんです。

で、そのときに、
そういえば、どっかのコーヒー屋さん
おいしいサンドイッチを出してたな、と‥‥。
会場 (笑)
河野 あのコーヒー屋さんでは
フランスから
クオリティーの高いパンを輸入しています。
そこで、すぐに電話したんです。
そのコーヒー屋さんの、誰かさんに。
そしたら
その誰かさんも「今から行きます!」と。

まあ、頼みかたはかなり勇み足だったと
思うんですけれど(笑)、
話を振ったらすぐ反応してくれる仲間がいて
一緒にチャレンジしながら
世の中に商品を出していくことができる。

だから、新しい可能性は、
いろんなところに、秘められているんです。
三陸、気仙沼という地域を
新しくブランド化してゆく可能性
追求していきたいと思います。
猪尾 コーヒー屋さんとお醤油屋さんの
コラボレーションって、
これまで、震災の前には、あったんですか?
河野 ないです。
小野寺 ないです。
猪尾 じゃあ今回、コーヒー屋さんのやっちさんが
やってみようと思われたのは?
小野寺 ま、電話がかかってまいりまして、
その方、いきなり
「ソーセージサンドのパン、
 売ってくださいよ!」

と、こう、おっしゃるんですよ。

私どもアンカーコーヒーでは
基本的に「卸」はしないという考えがあって、
これまで
「B to B」をやってこなかったのですが、
でも、勢いづいた、その方を納得させるには
どうしたらいいかなぁ‥‥と思った末、
「じゃ、うちで売ります」と。

それなら、社内的にも、お客さん的にも
納得してもらえますし、
単純に
「味噌の入ったソーセージ、
 食べてみたいな」
という思いもあって。

味噌の入ったソーセージのサンドイッチ、
何だかおもしろそうじゃないですか。
 
タッグを組んだ、 気仙沼のフカヒレ屋さんたち。
山田 石渡商店さんは、8月くらいから
新しい工場を稼動されるということですが、
生産能力的には
震災の前とくらべると‥‥?
石渡 施設の規模は同じぐらいですが
新しい建物、新しい機械が入ることにより
過去の問題が一掃されて、
プラスになると考えています。

また、従業員のモチベーションも
かなり高まっています。
以前から熱心な従業員ではあったんですが
震災後は
みんなの士気が、特に高いです。

全国的に「気仙沼=フカヒレ」という
イメージもあると思いますが、
地元の気仙沼の人が食べているかというと、
食べいてないんですね。

ですから、今はコラボレーションしやすい
状況でもあるので
新しい商品開発を進めていきたいです。

やっちさんのところ
フカヒレとか‥‥。
小野寺 やりましょう。
会場 (笑)
石渡 ありがとうございます。

とにかく今は、いろんな可能性があるので、
夜も眠れないくらい
頭の興奮している状態が続いています。
気仙沼の水産加工会社どうし、
あるいは異業種どうしで協力し合うことが、
とても大切になると思います。
猪尾 水産関係の現場については、
震災前は「あまり希望がなかった」という話も
聞いています。
ですから、
「今、眠れないほどわくわくしている」
という言葉を聞いて、すごいなと。
そのエネルギー、どこから生まれるんでしょう。
震災前と後で、どういう変化がありましたか?
石渡 私自身、仕事に対する意識が変わりました。
震災後に
まず「気仙沼のフカヒレ」という
大きな看板が頭に浮かんだんです。
踏ん張って、この看板を掲げ続けなければ
気仙沼の水産は復活できないと思いました。
一企業としての力は小さいですが、
精一杯やってみようと
気持ちを切り替えて、進んできました。
フカヒレは
とても景気に左右される商品です。
震災前の日本といえば、
景気がどんどん、落ちていたときですから、
私自身、とても悩んでいたんです。
猪尾 そんな中、震災に遭われて、
「気仙沼ブランドを背負っていかなければ」
と思った石渡さんは
同業者さんと連携したんですよね?
石渡 はい。震災後に
「気仙沼ふかひれブランドを守る会」
を立ち上げました。
実は‥‥フカヒレ業界というのは
これまで、あまり仲よくやってこれませんで、
震災前は
お互いに一切、仕事の話をしなかったんです。
猪尾 そうなんですか。
石渡 個々の業者が、それぞれに
伝統、独自の技術を築き上げていたという
状況だったんです。
でも、再建していくには
協力してブランドを守っていかなければ
ならないと思いました。
私が「守る会」の構想を考えついたとき、
自分と同年代で
後継者にあたる息子さん、娘さんなど
30代の方に声をかけてみたんです。
そうしたら、
みなさん、思っていることが一緒でした。
「ぜひ、協力してやっていきたい」と。
やはり、
1社だけでは再建していけないんだなと
そのとき、思いました。

<つづきます>
2012-07-02-MON
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第1回 お醤油屋さんとコーヒー屋さんの
    コラボレーション。
2012-07-02-MON
第2回 流された顧客名簿、11万人分。 2012-07-03-TUE
第3回 丸光食品の熊谷敬子さん、
    客席から登場。
2012-07-04-WED
第4回 出資金が「負債」ではなく
    「資本」と見なされるようになった。
2012-07-05-THU
第5回 復興とは、みんなの復興の集まり。 2012-07-06-FRI
 
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