はちみつ探検隊 蜂名人の誠太さんに会う、の巻。 1万年以上前から人が食べていて、いまも変わらない食べかたで親しんでいるもの、それは、はちみつです。ある日、わたしたちはひと瓶の、花のかおりあふれるはちみつに出会いました。それは作家の塩野米松さんからいただいたものでした。日本の花と蜂がもたらすめぐみをもらう旅。はちみつ探検隊、一歩ずつ進みます。 はちみつ探検隊 蜂名人の誠太さんに会う、の巻。 1万年以上前から人が食べていて、いまも変わらない食べかたで親しんでいるもの、それは、はちみつです。ある日、わたしたちはひと瓶の、花のかおりあふれるはちみつに出会いました。それは作家の塩野米松さんからいただいたものでした。日本の花と蜂がもたらすめぐみをもらう旅。はちみつ探検隊、一歩ずつ進みます。
藤原誠太さん、1957年盛岡生まれ、明治34年創業、藤原養蜂場の3代目。東京農業大学客員教授。みつばち飼育の普及に努める。/はちみつ探検隊ほぼ日乗組員3人、S 蜂が好き、O 花が好き、T 酒が好き
第2回 蜂名人。

藤原養蜂場の屋上にあった巣箱のはちみつをなめて、
さわやかなおいしさに驚いた我々は、
なんだか、目の色がかわりました。
(そのくらいおいしかったのです)
次は、もっとたくさんのみつばちに会える! 
と、やや興奮ぎみに、
誠太さんに案内されるまま、
次の養蜂場に向かいました。

誠太
ここもぼくたちの養蜂場のひとつです。
探検隊O
防護服が、ぜんぜん似合いません。
探検隊T
似合わなくていいんじゃないかな。
探検隊S
うわぁ、ここ、すごいですね。
巣箱がいっぱいあります。
いったいいくつあるんだろう。
誠太
さっきと同じで、
巣箱の真正面には立たないようにしてくださいね。
探検隊S
巣箱の入口にみつばちが
集まっていますね。
探検隊O
なぜ、自分がここにこうしているのか、
わからなくなってきました。
探検隊S
え?
探検隊O
私は、入社時は総務として、
ほぼ日に入りました。
探検隊T
なに?
誠太
ここにいるのもみんな西洋みつばちで、
いま、巣箱には
ヤブカラシの蜜がたっぷり入っています。
ヤブカラシのはちみつも、おいしいんだよ。
探検隊S
誠太さん、この養蜂場には、
いくつか水たまりというか、池を
つくっていらっしゃるんですね。
ビオトープですか?
誠太
ああ、そうですね。
入口付近と建物の屋根部分に
水たまりをつくっています。
みつばちって、花の蜜だけじゃなくて、
水も飲むんですよ。
探検隊O
へぇええ。知らなかった。
誠太
これまでは田んぼの水などを
飲んだりしてたんですが、
薬の成分のうち、みつばちに合わないものがあって、
その水を飲んでしまった蜂は、
すぐに死んでしまったり
少しでも病気になりやすくなってしまったり、
いろんな影響があるんです。
ですから、みずからの養蜂場で
安全な水場を確保することが、
いまの養蜂業の重要な要素になっています。
探検隊S
角館のあんづえさんも、
ここ最近、とんぼなどの昆虫も減ってきているから、
水場を確保しているとおっしゃっていました。
誠太
うん、養蜂家にとっては
みつばちの健康を守るのがいちばん大事なんですよね。
あっ! 
ほら! 
オオスズメバチが来た。
あいつだけは、捕らないと!
探検隊O
(心の中で)きゃあああああ。
誠太
虫取り網、虫取り網、あった。
誠太
シュッ。
はい、これがオオスズメバチ。
探検隊O
えー?!
刺される、刺されます!!
あ、もう死んじゃってるんですか?
誠太
生きてます。
探検隊O
うえー! 
探検隊T
たしかに生きてますね。
探検隊S
なんで逃げないんですか?
誠太
ペチっと頭を叩いたから。
探検隊T
網ひと振りでとらえて、
しかもその瞬間に網をねじって逃げないようにして、
デコピンした、と。
誠太さん、すごい。
さすが蜂名人だ‥‥。
探検隊O
あっ! 
あれも同じ奴じゃないですか?!
誠太
あれはちがう。
キイロスズメバチです。
探検隊O
あれは、つかまえなくていいのか‥‥。
誠太
オオスズメバチだけは、だめなんです。
こいつがおそらく偵察蜂で、
つかまえないと、次々多量にやってくる。
10匹来たら、みつばちの群れは
1時間で全滅してしまいます。
探検隊S
もももも、もしかして、あれぜんぶ、
オオスズメバチですか?
誠太
ああ、そうだね。
探検隊S
私、こんなにいっぱいいろんな蜂が
いるとこに来るの、はじめてだ‥‥。
探検隊O
私も人生ではじめてです。
探検隊T
ふたりとも、何をあたりまえのこと言ってんですか。
誠太
あ、またいた! 
オオスズメバチ! 
ああ、逃げられた。おっ、つかまえた!
探検隊S
誠太さん、すごい。
探検隊O
ほんとうに、すごい。
あんなに虫取りが得意な人を見たことがなかった。
探検隊T
虫取り‥‥って‥‥そこに感心してるんですか‥‥。
(つづきます。
次はいよいよ、日本みつばちに会うよ!)
おしえてBEEKEEPER!
天敵スズメバチ。
みつばちの天敵はさまざまにいますが、
大きな天敵はスズメバチと、くまです。
くまははちみつも幼虫も大好物なので、
巣ごと破壊して食べます。
スズメバチは、みつばちそのものを捕食します。
特にオオスズメバチは、仲間を呼んで
数匹から数十匹で襲いに来るので、
数時間で群れが崩壊してしまいます。
ですから、私たち養蜂家は
なるべく自分たちの手でオオスズメバチを
退治しなくてはなりません。
オオスズメバチはアジアにしかいない、
日本の在来種です。
しかも、日本にいる種がなぜか最大で、
たいへんやっかいです。
しかし、同じく日本の在来種である
日本みつばちは、
このオオスズメバチと闘うために進化したのでしょう。
尻振りダンスで威嚇したり、
ダンスで気をまぎらわせておいて一斉に襲いかかって
集団で包み込んで殺すことができます。
しかし、相手の数が多いと、
闘いに負けることもありますよ。
(こたえ:藤原養蜂場 藤原誠太さん)
2017-11-18-SAT