これは焼いてもだめだな、っていうのは、わかります。つくったとき、自分に正直だったら、わかりますよ。


2014年のインタビュー(その2)フッと生まれて来んといかんのですよ。

この頃、お花の方が忙しくなってね(笑)。
2月には京都の建仁寺で、
ミヒャエル・ボレマンスさんっていう
ベルギーの絵描きさんと私の花でコラボしたり、
大垣のほうでも花の会をさせてもらったりね。
いろんな縁で広がっていて、
まぁ、この先はどこへ発展するか、わからんです(笑)。
好きなことを好きなように、させてもらってます。
もう70歳、古希になりましたから(笑)。



若い頃から、絵は好きだったので、
京都の工芸の学校にいったり、
油絵を習ったりもして、
今でもデッサンをしたり、絵を描いたりとか。
今度は、墨絵でも描こうかなと、
スケッチしているところです。

ここは、娘に渡しましたから、
私はもう好き勝手で(笑)。
お花と、絵とか字とか、
座禅会や漢詩の会に行ったりとか、
なんでもやってます。

好きなように、思いつくまま。
自分の身を違う所に置くと、
また違うことが見えてきたりしますからね。



骨董が好きなので、
花を生けるのに、古い銅のうつわを使ったり、
この間も、鎌倉時代のお経を入れる箱、
説相箱っていうのをみつけて、
それがおもしろいので、そこに生けたりね。

そういうことを楽しんでいると、
今度は自分が花器をつくるんだったら、
どんな花を、どう生けようかって考えると、
ただの筒だけがいいなとか、
だんだんシンプルになってくるんですよ。
そういう発見があるのも、また楽しみでね。



「あぁ、こういううつわを作りたい」というのが
フッと、うまれてくるんですよ。
「こういうふうに作ろう」と思ってたってね、
ただ頭の中でひねってるだけでは
だめなんです。

フッと生まれて来んといかんのですよ。
もう自然に出て来んと。
頭の中でね、こっちひねり、あっちひねりしたって、
大したものはできませんよ(笑)。



骨董買ったりとか、うまいもの食べたりとか、
そういうことを楽しんでると、
それが糧になるんです。
それは、身銭を切らんといかん(笑)。
そこをケチったら、いかんのですよ。

たとえば、ご招待ばっかりで
料理食べに行ったってね、
なかなか、本当には心に残りませんよ。
やっぱりね、
「高い金を出してでも、ここへ行きたい」という、
そういう気持ちがないと。
楽しむことだって、真剣に楽しまんとね。



料理をつくるのも、いっしょですよ。

白洲次郎さん、正子さんとか、里見弴さんとか、
うちに来てくれましたけど、
そういう人たちと、
ここで飲んだり食べたりするときには、
そりゃあ私も真剣勝負でかかりましたよ。

料理は、食べたら消えてしまう。
だからこそ、真剣にやらないと。
しかも、ここで出す料理は、
料理屋で出す料理じゃない。
この人に、いま、本当に
心底満足してもらうためには、
どうしたらいいのか?
そこには心の問題も入ってくるんですけど。



二十歳代のころから、そういう、
真剣勝負をする人たちが、
いつも、いてくれてたからね。
いい勉強させていただきました。
ああいう人たちは、
もう、ちょっとでも悪かったら、
二度と来ないからね(笑)。

自分がやりたいと思うことをやって、
しかもそれが、
楽しみでやっていることであっても、
あるレベルよりも上にならんといかんわけですよ。
素人に毛の生えたようでは困るし、
素人でも、なにか抜けきってなかったらいかん。
そういう中から、新しいものは生まれるのです。



(次回につづきます)
2014-06-27-FRI


前へ はじめから読む 次へ
メールをおくる ツイートする ほぼ日ホームへ
HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN