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ふくもり まさたけ

1944年、三重県伊賀市生まれ。
江戸時代から続く伊賀「土楽」の7代目当主。
著作に『土楽食楽』『土楽花楽』(文化出版局) 
などがある。 
2008年、「ほぼ日」とコラボした土鍋
「ベアシリーズ」の原型を制作。

参考ページ:
「うちの土鍋の宇宙。」
白洲正子『日本のたくみ』より
『樋口可南子のものものがたり』より
土楽の公式サイトはこちら。


これは焼いてもだめだな、っていうのは、わかります。つくったとき、自分に正直だったら、わかりますよ。


2014年のインタビュー(その1)いつも自分をリセットして。

粘土って、
たとえば京都では京都ならではの粘土が出ます。
京都の性質があるんです。
もう地の底から、そうなんですよ。
伊賀は伊賀。地の底から。
信楽はすぐ隣だけど、
信楽にもそういうものがあります。

いちばんの基本は、
土を知るということですよ。
つくるものの形よりも、
粘土を、ちゃんとわかっているかどうか。

粘土屋さんから買ったものを使う人が多いでしょ?
でも、その粘土がどこでとれているのか、
そのくらいはわからんとね。
で、それをそのまま使ったら、どうなるのか?
とか、そういう粘土の性質というものをよくわからんと。



まぁ、山ほどつくるべきですよ。若いときは。
山ほどつくって、つくってです。
うちの若い者たちには、
「焼いてしまったら土にもどせないから、
 焼くまでに潰せ」
といって、潰させています(笑)。



このあたりの粘土は、
だいたい350万年から400万年経っています。
そのくらい経たんと、やきものの粘土にならない。
だからね、テレビドラマなどで
焼き上がったうつわを
ボンボン割る場面を観ることがあるけど、
それはね、粘土がかわいそうですよ。

焼く前の、粘土の状態のときに、
これは焼いてもだめだな、っていうのは、わかります。
つくったとき、自分に正直だったら、わかりますよ。

もちろん、焼きの問題はあるんですけど、
本当は、少々、景色(※)がなくてもだいじょうぶです。
魅力的であればいい。
※景色:焼くことで偶然できる色合いや、ムラ、貫入、釉薬の垂れなど。



うつわは、理屈じゃないですからね。
使ってみて、いいかどうかです。
それと、「品(ひん)」、「品格」があるかどうか。

うつわにかぎらず、絵でも、料理でも。
つくるものは、みんなそうですよ。
品というものは、
つくる人のからだに、身についていなかったら、
出ないものです。

品はね、
テクニックで出そうと思ったって、
出ないものですよ。
もう、いわゆるDNAになってしまわんと。
それくらいの気持ちでやらないと、
テクニックやデザインで出せるものではないんです。
その人のからだに身についてなかったら、
取ってつけたようになる。
茶碗であれば、
胴と高台がちゃんと繋がらないんですよ。
高台は高台、胴は胴、口は口のかたちになっちゃう。
バラバラのうつわになっちゃうんですよ。



それから、やっぱり大切なのは、
いつも自分をリセットして、
真っ白なところから、
また始めるということです。

いちど「いい」といわれたからって、
前のようにつくればいいと思ったら、
もう、指先でつくるようになっちゃうんです。
そして、どんどん嫌なものになっていく。



「違うものをつくろう」と思うのとは、違います。
同じものをつくろうとしているけれど、
新しい気持ち、というのかな。
それは、冬を耐えた草が、エネルギーを蓄えて、
春、芽生えるように、
同じ種類なんだけど、新たなものになるでしょう?
そういう気持ちがなかったら、
「昔のほうがよかったな」と、
こうなるわけよ(笑)。

そうしているうちに、
まったく違うものが生まれることもある。
なにが正しいとか、いいとか悪いとか、
いつのまにか決まり事のようになったものにとらわれずに、
心の余裕というか、そういう空間を残しておく。
いつも心が柔らかい、ってことなんですよ。



(次回につづきます)
2014-06-26-THU


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