第6回 考えざるを得なくなった

糸井 白岩さんは、どういう自分が
いちばん儲かるのかとか考えないですよね?
白岩 そうですね。うん。
お金のことは、関わってないですね、自分は。
糸井 あの、たとえば、
「じゃんじゃん整形手術してもいい」
っていうタイプの人、いるじゃないですか。
白岩 はい、はい。
糸井 まぁ、誰かが割り切って
そうやってどんどん変わっていくのは、
他人としては、ちょっと愉快ですよね。
白岩 そうですね。
糸井 でも、自分がそれをしない理由って
なんだろうって考えるんですよ。
白岩 ああ(笑)。
糸井 ほどよく不細工だったり、
もうちょっと背が欲しかったりしても、
その自分とずっとやっていくわけで、
それって、さっきの「潰さないレストラン」の
話に近いかもしれないですね。
白岩 あー、そうかー。
糸井 だって、ばりばり自分を変えてね、
「いちばんモテる男になってやる!」みたいに
思ったってかまわないわけですよ。
白岩 「いちばんモテる男」に
なりたくないわけじゃないですけど、
1日だけでいいですよね。
糸井 うらやましくはない。
白岩 そうですね。
価値を置いてるとこが
ぜんぜん違うんでしょうね。
糸井 そうなんだろうなぁ。
いや、おもしろいですね。
ぼくらは若いころに
そういう現実的な考え方って
あんまりしてなかったと思うなぁ。
白岩 そうなんですか。
糸井 やっぱりだから、
世の中が世知辛くなったんでしょうね。
白岩 考えざるを得なくなったっていうのはあります。
糸井 こんな子に考えさせちゃダメだって
ぼくは思いますけどね。
白岩 あ、そうですか。
まだ考えなくていい年代ですか。
糸井 そんなことはぜんぜん考えないで、
バカなことしか思わずに35ぐらいまで過ごして、
たいへんなことにもなるけど
そこまでに吸収した栄養がついてる、
っていう感じだったんじゃないかなぁ、ぼくらは。
いまの子たちはみんな、そんな感じですか?
白岩 いや、わかんないですけど。
でも、ぼくが思ってるだけかもしれないですけど、
なんていうか、こう、見渡したときに
助けてくれるような人が
いないような気がするんですよ。
糸井 あーー。
白岩 なんていうか、
起こってることの速度がすごく速くて。
実際、ぼくのまわりの友だちも
大勢仕事辞めてますし。
糸井 そうですか。
白岩 はい。ぼくの友だちって、
やっぱり広告とかデザインの業界に
進んでる人が多いんですけど、
情報をずっと取って出ししていくなかで、
「これになんの意味があるんやろう?」
と感じてしまったり、
しっかりと考えて辞めてしまったら
そのつぎがなかったりっていう感じで。
社会のある種の
セーフティネットみたいなものがなくて、
だから、ま、みんな、不安なんでしょうけど。
そういうことってみんな考えてると思うし、
この年齢になって「考えなあかんやろ」って
思ってるのは自然なことかもしれない。
糸井 いま、おいくつでしたっけ?
白岩 僕、25です。
糸井 あー、25っつったらもうね、
タリラリラーンでしたね、ぼく。
白岩 タリラリラーンでしたか(笑)。
糸井 うん。
白岩 もう広告の世界には入られてたんですか?
糸井 ええ、いちおう、
ちっちゃいプロダクションにいて。
で、なんていうのかな、
そのときいた場所っていうのはたのしくてね、
それなりにいろいろ感じつつも、
このまんまかなぁ、どっちでもいいや、みたいな。
ほんとになにも考えてなかったな。
白岩 あー。
「どっちでもいいや」っていうのは
まず思えないですね。
糸井 そうでしょうね。
だから、それがやっぱり、ぼくらの時代が
右肩上がりだったということでしょうね。
白岩 ああ、そうか。
糸井 申しわけありません、ほんとに。
白岩 (笑)
糸井 いや、だってね、自分のせいじゃなく、
ラクしてたっていうことですからね。
いや、ほんとに申しわけない、それは。
ほんとになにも考えてなかったもん。
白岩 考えてなかった。
糸井 うん。そのくせ、生意気なことを言ったりね。
読みもしない全集をそろえてみたり、
関係ないよなーって知りつつ
政治的なお芝居を観に行ってみたり。
白岩 そうかー。そんなに考えなくていいのかなぁ。
糸井 だけど、なんていうんだろう、
国民総生産みたいなことでいうと、
当時の何も考えてない25歳のぼくらと、
いま不安がってる25歳の白岩さんたちを比べたら、
ぼくらのほうが得ていたもののレベルは
ずっと低かったと思いますよ。
買えるものの少なさとか、
食えるものの小ささとか、
その、贅沢度みたいなものが。
白岩 ああ、はい。
糸井 贅沢度でいうとぼくらの若いころの方が
ずーっと低かったのにへっちゃらで、
いまの子たちの方がたっぷりしてるんだけど
へっちゃらじゃないっていうのは、
これはちょっと切ないですね。
白岩 そうですね。
へっちゃらな人もいるにはいるんですけどね、
そういう人たちを見たときに、
同世代として「大丈夫か?」って
やっぱり思ってしまったりするので。
どうなんですかねー、時代なのか、人なのか。
糸井 どうなんでしょうねぇ。
ぼくよりもっと上の人たちは
もっと貧乏だったと思うんですけどね。
白岩 ああ、そういえば、ぼくより年上の方、
40代、50代の方にお会いすると、
「お前、ちょっと考え過ぎや」
って言われるんですね。
糸井 ああ、そうですか(笑)。
白岩 なんでそんなに考えるん、
もっと好きなことを考えずにやったらええねんて
みんな、言うんですね。
糸井 関西弁だから関西の人ですね。
白岩 そうですね、関西の人しか
そんなこと言わないかもしれない(笑)。
東京の人は余計なこと言わないから。
糸井 関西の人は上手ですよね、そういう言い方が。
関西、とくに京都なのかもしれないけど、
店主と常連のお客さんが
店のカウンター越しに
「そんなん、あかんがな」みたいなことを
両方で言い合ってて、
たいして繁盛してるわけでもないのに、
すごく明るく元気に
毎日やってたりするじゃないですか。
白岩 やってます、やってます(笑)。
大阪のおばちゃんなんかも究極の
セーフティネットみたいなもんですからね。
もう、歩きながら全員に声かけてるし。
糸井 「なんとかなる感」ね(笑)。
白岩 そうそう(笑)。
でも、なんていうか、
前の世代はなんとかなったかもしれんけど、
オレらの世代、なんとかならへんで、
っていう気持ちがすごいあって。
糸井 うん。でもね、考えすぎなのかもしれないけど、
いったん考えはじめちゃった人は、
「もっと考えればいいんじゃない?」って
ぼくはニッコニコ笑いながら言いたいですね。
白岩 (笑)
糸井 せっかく、ここまで来ちゃったんだからさ。
その、数学の問題を解くのと同じで、
せっかく、ここまで来ちゃったんだから、
お前しかぶち当たらない壁ってものがあるから、
それを超えればなにか発見があるぞって、
こう、囁いてみたいですね。
そういうぼくも、やっぱり、
考え過ぎた部分はあるもの。
白岩 あ、そうですか。
糸井 あるよ、あるよ。
その、余計なこと考えてたおかげで
いつまでも持ち越し続けた
宿題っていうのがあってさ。
で、何年も経ってから、
「あ、あれ、ここで解いてたじゃん」みたいな、
そういう喜びって、ありますから。
白岩 へぇ(笑)。
(続きます)
2009-07-28-TUE
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