第5話

simicoさんの悩み。

糸井
simicoさんは
「しみことトモヱ」という
2匹の猫について
描いていらっしゃいますね。
simico
はい。

糸井
「comico」
連載なさっていまして、
スマホアプリでも読めるんですが、
simicoさんは「comico」があるから、
描きはじめたんですか?
simico
えーと、私は猫をもともと飼っていまして。
糸井
はい。
simico
1匹目は自分が拾ってきたんですが、
2匹目の三毛猫は、保護されて、
保護した人からもらい受けました。
そういうとき、そこまで育ててくれた人に
「元気です」「こんなに大きくなりましたよ」と、
写真なんかでよく報告するんですよ。
そういう感じで、
猫を保護してくれた人に
その後の猫のようすを報告するために
ブログで描きはじめたまんがなんです。
糸井
ブログだったんですか?
simico
ブログです。
最初は写真を載っけて、
言葉で報告していたんですが、
自分としては、まんが形式で描いたほうが
やりやすかったんです。
だいたい1回4コマ程度にして
描きはじめたのが最初でした。
糸井
それは何年前ですか?
simico
2年前くらいでしょうか。
糸井
そんなに最近!
simico
そうです。
2匹目の猫をもらってから描きはじめたので、
たぶんそのくらいです。

糸井
連載する媒体はなかったんですか?
simico
というよりもまず、
それをどこかに持ち込もうとかいう気は
まったくありませんでした。
たしかにブログという場所で
描きはじめたけれども、
みんなに見てもらおうというよりは
「保護してくれた人」に報告するための
メールがわりのような気分だったので。
糸井
絵手紙みたいな?
simico
はい、そんな感じです。
メールでもよかったんですが、
返事が来たりして、むこうにも
気を遣わせてしまうかな、と思って‥‥。
垂れ流しだけど
ターゲットはひとりに限ってブログを描く、
ということになりました。
考えてみればおかしなことなんですが。
糸井
ターゲットはひとり(笑)。
simico
はい(笑)。
しかし、その「ブログの報告」が
連載10回もいかないくらいのときに
「comico」が立ちあがる時期に重なって、
ちょうど描き手を募集していたんです。
ブログのまんがを見てくれていた方が、
「応募してみませんか?」と声をかけてくださって、
じゃあ、と応募したら、
1回めはだめで。
糸井
だめだったんだ。
simico
内容が簡単すぎたみたいなんです。
「もう少し長くふくらませて、
 再度見せてくれませんか?」
とおっしゃっていただいて、描きまして、
2度めで合格しました。
そうやって「comico」の立ちあげと同時に、
参加できることになりました。

糸井
じゃあ、そこまでは、
別のお仕事をメインで
なさっていたんですよね?
simico
アルバイトで週2日、
夜勤をずっとやってて、
その仕事が収入のメインでした。
じつはいまも同じバイトをつづけていて、
週1回の勤務にしています。
糸井
じゃあ最初は、まんがの収入は
あてにしてなかったんですか?
simico
まんが家にはなりたかったんですが、
ストーリーまんがの「お話」をつくるのが苦手で、
1作品描くのに1年以上かかってたんで(笑)、
自分でちょっと無理だなと思いまして。
糸井
描いたことはあるわけですか?
simico
はい、描きました。
いま描いている
「しみことトモヱ」とはまったく関係ない
ファンタジックなまんがです。
でも、ほんとうにぜんぜんだめなので、
まんがは趣味でできればいいなぁと思ってて、
「COMITIA」という、
コミケみたいなところに作品を出したりしていました。
それも、お客さんがひとりかふたり、
来たり来なかったり、
1冊も売れないとか、そういうレベルでした。
自分にはあんまり期待していなかったのですが、
なんだかそういう場にいて、
座ってるだけで、楽しかったんです。
糸井
そうかぁ。
でも「しみことトモヱ」は
書籍化もされたわけですよね。
simico
はい、おかげさまで。

▲『しみことトモヱ』PHP文庫 2015年11月発売

糸井
4人とも、結局、昔の
「まんが家になる」だとか、
「まんがで仕事をしていきたい」とかいうところから
断ち切ったところから
何かが発生しているような気がします。
小山
そうですね。
とよ田
みんな、スタートがビジネスじゃなく、
「好き」からはじまってる。
なんか純粋な創作っぽくていいですね。
糸井
でも、「商業にはしたくない!」って、
拒絶するような姿勢はないですね。
とよ田
売れるなら売れるで構わないとぼくは思います。

つづく!

2015-10-05-MON