1年とすこしの時間をかけて、
日本のすべての県を
みうらさんは、語り終えました。
名残惜しいのですが、
お開きの時間が
やってきたようです。
●エピローグ またお会いしましょう。
ほぼ日 和歌山県では、
笑いでバランスを取るという
大切なことを教わり、
このコーナーの
みごとな〆となりました。
みうら

ものごとは、なんでもバランスであると
ぼくは思っています。
あの人いいなぁ、と思う人は
みんな、バランスがいいです。
でも、ものすごくいい人というのは
バランス悪いです。
ものすごく悪い人もバランスが悪いんです。
悪魔のように繊細に、天使のように‥‥、
天使のように‥‥ええっと、忘れました。
黒澤明さんがよく言っておられたことですが
忘れてしまいました。

ほぼ日 ええっと、
悪魔のように細心に。天使のように大胆に、
のようですね。
みうら

ええー、こうして、今日、
旅を終えましたけれども、
47都道府県で、
ぼくが最大に言いたかったのは、
旅とは何であるか、
ということです。
いちばんはじめにも
言ったかもしれませんが、
旅の条件は戻ってくることです。
行きっぱなしは蒸発です。
戻ってこなければならないという
宿命を背負いながら、旅をするわけです。
いつまでも、おセンチになっていても
しょうがないんです。
いつまでも旅行気分でいても、
社会生活ができないわけです。
それもまた、バランスです。

ほぼ日 なるほど。何ごとも。
みうら だから、今後は日本の政治も、
バランス政治ということが
おそらく大切になってくると思います。
ほぼ日 政治も。
マニフェストは、バランス政治。
みうら いいことばっかり言わないで、ね?
そうやって、バランスを保って
生きていくということが
旅から学べることなんです。
「おれは旅人なんだ」なんて言いきらないで、
旅人でもあり、社会人でもある、
そうやって、バランスを保っていきましょう、
これが、この1年半を通して、
口をすっぱくして
言ってきたことです。
ほぼ日 今日はじめてうかがった気が‥‥。
みうら

あ、そうですか。

ほぼ日 そうです。
みうら

うまくいかないときって。
バランスが悪いんですよ。
そういうときには、
「バランス悪いなぁ、おれ」
と、自分で言ってみると、
なんだかパッとわかるものです。

ほぼ日 ほんとだ‥‥なるほど。
そうですね。
また、大切なものを
この島国と、みうらさんから
教えていただきました。
ほんとうに、
どうも、ありがとうございました。
みうら

ありがとうございました。
長いこと、ありがとうございました。
さよならですね。

ほぼ日 さよならですね。
1年とすこし、無謀な企画かと思いましたが
おつきあいいたただきまして、
読者のみなさまも、ほんとうに
ありがとうございました。
みうら

でも、旅にはまた、
リピートってのも、
ありますからね、ええ。
次は世界文化遺産ですかね?

ほぼ日

え‥‥?

みうら 数が多いものを、また考えて
みなさんにぶつけていきたいと思います。
「恩返し」のときだって、50個くらいだったでしょ?
次は何がいいかなぁ、例えば
一匹一匹の虫に対する意見などでも
ぜんぜんかまいませんよ?
ほぼ日 ‥‥‥‥。
みうら 「ほぼ日」とつながっているということは、
どう言ったらいいんですかね、
地獄に落ちても
一本の蜘蛛の糸が下りてきてることだと
思いますので、
ぼくは、糸が下がっていたら
それにしがみついていきますからね。
ほぼ日 いや、あの‥‥。
みうら

あの、天上にのぼられた飛行船、ね?

ほぼ日 はい、はい。
みうら あの飛行船から、
蜘蛛の糸が垂れてるんだと思って
ぼくは手を振っていました。
ほぼ日 いやあの、あの飛行船の旅は、
ほんとうにハードで‥‥すみません、
ありがとうございました。
この1年と数ヶ月のあいだ、
あんなことがあったり、いろいろありましたが、
「この島国」を語ったことを振り返って、
思われることはありますか。
みうら 語り足りなかったことも
多々あったと思いますし、
その県にお住まいの方からしたら、
「なんでここなんだよ」
ということもありましょうが
それは、ぼくは「自伝家」という
新しいジャンルでやっとりますんで、
ということになると思います。
ほぼ日 自伝家。
みうら はい。ぼくは、
書くものは、すべて
一人称でしかやってきませんでした。
話の流れ的には
三人称にしたほうが広がるにもかかわらず、
その技法がなくて、
「ぼくが思った」ということだけで
いままで生きてきました。
だから、この47都道府県の旅も、
「ぼくが思った」ということばかりです。
そこには、嘘偽りもございませんので
勘弁していただきたいと思います。
ほぼ日 毎回、カメラを回してから
くじ引きをするという、
ぶっつけ本番であったにもかかわらず、
いつもすごい内容が待ち受けていたので
たいへん楽しくお話を聞かせていただきました。
みうら きっと、この旅には、
「じゃらん」にも「るるぶ」にも
載ってないことが
書かれていると思います。
これは、ちょっとした巡礼ということですよね?
ほぼ日 巡礼?
みうら そうです。
そして、必ず、地獄はあると思っております。
天国はないかもしれなけども、
地獄はあると、
思って生きています。
ほぼ日 ‥‥ほんとに、どうもありがとうございました。
またいつか、何か思いつかれたら、
「ほぼ日」にご登場、お待ちしています。
みうら いや、この企画は、
ぼくが思いついたわけじゃなくて
そちらから来たような気がします。
ほぼ日 あ‥‥! そうですね。
みうら 前の「恩返し」も、
ぼくから出した案ではございません。
そこだけは、
ちょっとはっきり言っておきたいんです。
何かぼくが、
調子こいてそちらに振ってるような感じですけど、
事実はちがいます。
ほぼ日 うはははは。
ほんとです、ほんとですね。
発端をすっかり忘れていました。
みうら そこは、ぼくはまだまだだと
思っております。
ほぼ日 いやいや、すいません。
では、我々が、何か思いついたら。
みうら そうですね。
それのほうがたぶん早いと思います。
わたしが何か企画を持ち込んだとしても
通らないと思いますので。
ほぼ日 いえいえいえ。
みうら そちらが思いつかれたときには、
ぜひお願いします。
ほぼ日 はい、お願いいたします。
みうら どんな形でもなってみよう、
という気持ちは、
もう、ぜんぜん、ありますのでね。
「これは苦手だ」というものは、
まずありません。
もう、何ごとでも、
話していきたいと思います。
ほぼ日 ありがとうございます。
では、また、いつか、ですね。
みうら シャローム。
ほぼ日 ありがとうございました。
今回のお話をノーカットでごらんになりたい方は
下の動画でおたのしみください。

これで、
「みうらじゅんに訊け!
 ──この島国 篇──」
を終わります。
これまで長いあいだ、ご愛読いただき
ほんとうにありがとうございました。
ご感想や、みうらさんへのメッセージを
どうぞpostman@1101.comまで
お寄せください。
またいつか!

CREWS:
出演 みうらじゅん
協力 みうらじゅん事務所
臼井良子
ちちあきこ
メディアミックス&ソフトノミックス
元木恵里
企画 糸井重里
動画 ゆーないと
デザイン 南郷瑠碧子
取材 菅野綾子

ありがとうございました!
2008-08-17-SUN