第3回:ウケたいという情熱。

奥野 ほかには、何かございますでしょうか。

ささいなことでもけっこうです。
これだけ人がいますので、誰か答えると思います。
SFC いわゆる「リード文」とか「小見出し」について
ちょっと、お聞きしたいです。
そういうのを考えるのが、すごーく苦手なんです。

でも、記事を読んでもらうためには
魅力的に書かなきゃならないわけですよね‥‥?

ほぼ日のみなさんが、
コンテンツのリードや小見出しっぽいもの、
そういう、いちばんはじめに
パッと読者の目につく部分を書くときに、
意識してることとか、教えていただきたいです。
奥野 永田さん、いかがでしょうか。
永田 技術、という意味では、とくにないと思います。
ええー、これは本当です。
で、それをチェックするシステムもありません。

そのコンテンツを担当するチームが
どのように伝えたいか
きちんと話し合えていて、共有できているときには、
そこに載せる文章は
すでに出来てしまっていることが多いので。
糸井 うん、それは実際そうなのかもしれないけど、
永田さん、それは不親切ですよ。

絶対、面白がらせようとしてる、その言いかた(笑)。
全員 (笑)
SFC じゃあ、面白いリードと
面白くないリードのちがいって、何ですか?
奥野 むずかしいこと聞きますね‥‥。
糸井 たとえばさ、あなた、
あの壁の向こうへ行ってごらん。歩いていって。
SFC はい、えーと、ここですか?
糸井 で、いったん隠れて、壁に。
SFC ‥‥こうですか?
糸井 みんなが、あなたが出てくるのを見てますから、
「こんにちは」と言って、出てきてください。
SFC はい。‥‥こんにちは(といって顔を出す)。
糸井 ‥‥というのも「リード」なんだよ。
SFC ‥‥導入部分?
糸井 つまり、どういう顔で出ていこうか、
どういうトーンで「こんにちは」って言おうか、
いろいろ考えたでしょう。

そこには「どう思われたいか」という
自分の気持ちが入ってるはずなんです。
SFC ああー‥‥。
糸井 つまり、それがリードなんですよ。

逆に言うと、自分はどう思ってほしいのか、
それがないままに書いても
面白いリードなんて、書けっこない。
SFC わかりました。
糸井 永田くんは、すごくうまいですよ。
知ってる? あ、そう。
全員 (笑)
武井 タイトルやリード、小見出しって、
こういうコンテンツをやりたい、
という気持ちによって
押し出されるもの、ですよね。
糸井 そうそう。
武井 だから、永田さんの言うように
表面的なテクニックというのは、ないと。
糸井 うん。だから、ちょっと上手になるだけで
すっごくうれしいんだよね。
そういう気持ちで「ウケたいなー」とか
思ってたらいいんじゃないかな。

永田くんなんて、ウケたい一心ですから。
永田 はい、そうです。
松家 あの、ほぼ日に入ってくる人っていうのは
そのあたりのことを
糸井さんの「フリ」を「見て真似る」んですか?

それとも「これはダメだよ」って‥‥。
永田 そういうやりかたは、してないですね。

おそらく
「見て真似る」という人が多いと思いますが、
そうじゃない人も、たぶんいますし。
奥野 ぼくは、入社してからしばらくの間は
すべての原稿
糸井さんが添削してくださってました。

ほんとの意味で「すべて」です。ほぼ毎晩。
なので、ぼくの場合は
そこで、だんだん覚えたという感じです。
松家 それは、糸井さん‥‥すごい!
糸井 ウケなくてもいいって考えかただって、あるしね。

つまり、ウケるとかウケないじゃなくて
「正確に伝えなきゃ」という文章もあるでしょう。

だから、さっきの壁のうしろから
背筋をぴんと伸ばして、
お行儀のよい口調で「こんにちは」という挨拶だって
あるわけじゃないですか。
SFC はい。
糸井 それは、その文章を書いている人が、
うそをつかずに、
自分の思ったとおりにやっていれば、
きっと好感を持たれますよ。
松家 なるほど、なるほど。
糸井 心から思ってることを、きちんとやること。
そうしたら「いい顔」になっていくと思う。
奥野 ぼく、小見出しを書く人として
たいへん尊敬してる人がひとり、おりまして、
ハリさんなんですけど。
糸井 ほー‥‥。
奥野 ハリさんと呼ばれる、ほぼ日の播口さんは、
Tシャツだとか、パーカだとか、
永久かみぶくろだとか、
主に商品をつくっている人なのですが、
原稿も書くんです。

で、同僚を褒めてアレですが、
「ハリさん、小見出し的確だわ」
いつも感心させられています。
松家 それは、どんなふうに‥‥?
奥野 ええと、具体的に説明するとなると
難しいのですが‥‥見たら、わかるんです。
「あ、ハリさんが書いたな」って。

ぼくのなかでは
「ハリさんの小見出し」という
言葉があるほどなので、
ご本人から、少し、話してもらえますか。
播口 はい、えーーーー‥‥。

ぼくは商品を紹介する記事を書くことが多いので、
文章を読んだ結果、
好きになってもらわないと、非常にこまるんです。
糸井 それは、こまる!(笑)
播口 本文って、ズラッと並んでるじゃないですか。
小見出しというのは、
その前に「ポンッ」と飛び出してますよね。

そこで目を留めてもらえれば、
もう少し先の本文まで、
読んでもらえるかもしれないですよね。
SFC はい。
播口 タイトルがあって、リード文があって、
小見出しがあって、本文がある。

タイトルがよければ「あ、読もうかな」と思うし、
続くリードもよければ
「あ、もうちょっと読もうかな」と思ってくれる。

コンテンツの途中途中で、
目を留めてくれるかどうかの関所
あるんだと思うんです。

その関所のひとつが「小見出し」なので
そこをきちんと書くことは、
絶対おろそかにできないなと思っています。
糸井 ‥‥ハリさん。
播口 はい。
糸井 ‥‥いいこと言う。
播口 あーーーーーーー、びっくりした。
まちがってるのかと思った(笑)。

‥‥でも、このことは、
以前、糸井さんに教えてもらったことなんです。
糸井 そうだっけ?
全員 (笑)
播口 はい(笑)、まだ入社したてのころ、
糸井さんに
「ほぼ日のタイトルや小見出しは、
 編集プラス広告なんだ」
ということを、
教えてもらったことがあったんです。

「そこで人をグッとつかまないと、
 みんな時間のない中で
 ネットの記事なんて読んでくれない」
って。

それ以来、気を付けていることなんです。
糸井さん‥‥何か補足がありましたら。
糸井 ‥‥そうなんじゃない?
SFC ありがとうございました。
奥野 それでは、次の質問のかた‥‥、
SFC 手フェチのコンテンツをしたE班なのですが、
正直、すごい盛り上がったんです。

で、テープ起こしを読んでみたら
やっぱり、おもしろいなと思ったんですけど、
テープ起こしって
「その場の熱」を帯びたままなので
このままだと、その場にいなかった読者には
よくわかならい。
でも、この熱気はぜひ伝えたい‥‥と。

つまり、熱を殺さずに
うまく伝えられる文章のまとめのさじ加減が
なにかありましたら‥‥。
奥野 武井さん、いかがでしょう。
武井 会話というのは、基本的に
そのままではコンテンツにならないですよね。
テープ起こししたものを、
そのまま、何もせずに出すわけには行かない。
SFC はい、そう思いました。
武井 ぼくの場合だと、誤字脱字を直したり、
言い回しを換えたり、表現を整えたりという
いわゆる「原稿整理」という作業を
いちど、頭からおしりまでやっちゃいます。

で、そのなかから、おもしろいところや
伝えたい部分を選び出して、
それを軸に、いくつかの塊に切っていく。

で、切ったあとに、細かい部分を
並べ替えたり、組み合わせを替えたり‥‥という
編集作業は、じつは、けっこうやってます。
SFC へぇー‥‥。
武井 ただ、ある会話を「おもしろく演出しよう」と
考えたことはなくて、
話をしている人が、このことを伝えたくて
話してるんだってことを
逃さないようにする、という作業ですね。
奥野 永田さんが編集されている「黄昏」には
40行とか50行ぐらい、超短く終わってる回があって、
それを読んだとき「超カッコいい‥‥」と。
全員 (笑)
糸井 はー‥‥。
武井 あれは、糸井さんと(南)伸坊さんの話だから
できる芸当ですよね。
永田 やっぱり、最終的には
「読んでる気持ちで編集する」ということに
尽きるんだと思います。

原稿を作り終えたら、
まだ読んでない気持ちで読み直して推敲する。
時間をかけられるのであれば、
その繰り返しで、コツを掴んでいけると思います。
武井 一日、寝かせてみたりとか。
永田 あとは、やはりウケたいという情熱ですよね。
だから、森さんでしたっけ、
とりわけ「手」に対しての情熱の強かった‥‥。
SFC はい(笑)。
永田 この人がいた時点で、あのコンテンツは、勝ち。
糸井 うん。
永田 森さんがいた時点で「ラッキーだったな」と
チームの人は思っていいんですが、
全員が、森さんになれるわけではないですし、
森さん以外の人は
「森さんをいかに編集できるか」とか、
「森さんをうまく写真撮るには」とか、
チームでの自分の役どころを、
見つけていければいいんじゃないでしょうか。
糸井 ‥‥なんていい教室なんだっ。
全員 (笑)
糸井 帰りに3000円ぐらい取っても‥‥。
全員 (笑)

<続きます>

2011-05-04-WED