トークイベントつるとはなの気持ち 岡戸絹枝+松家仁之+糸井重里

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2014/10/24 19:49
こわい日

松家さん
「まぁ、岡戸さん、いいじゃないですか。
 発売日ってどうですか?」

岡戸さん
「発売日は、こわいですね。
 かなりこわい日です」

松家さん
「本の発売の日というのは、ふだんは
 書店に並ぶことからはじまるんですけれども、
 今回はTOBICHIで、
 ここに一括納品したことからはじまりました。
 ギリギリまで校了作業、下版をしていましたので、
 まちがいがあったらどうしよう、
 どういうふうに仕上がったかな、
 なんて心配していましたが、
 ここで梱包の荷をといて、ページを開いて
 『ああ、これならだいじょうぶだ!』
 と、TOBICHIの店先でぼくは感動したんです」

 


 
2014/10/24 19:50
脱ぐ

会場がすこし暑いため
糸井が上着を脱ぎまして。

 


 
2014/10/24 20:03
恐怖感

糸井
「でも、こわいことって、わからないでしょ?
 なにがこわいのか、その正体が
 わからないですよね。
 それに気づいてから、
 ぼくはこわくなくなったんです。

 仕事にひとりぼっちのイメージがあるときには
 こわくなってしまうんじゃないかな。
 チームで仕事をしていたら、それが変わってきます。
 もしも俺が怖いと思ってたら
 それがなにかをつきとめて、準備しとけ、と
 誰かに言わなきゃいけない。
 そういう感覚に変わってからは、
 ぼくはこわいという言葉を
 ぷっつり言わなくなりました。

 『つるとはな』も、会社ですし、チームですから
 そのうちこわいと言わなくなって、
 備えて用意するだけになるんじゃないかなと思う。
 だだ、読み手に通じないかも、という
 恐怖感は、たしかにわかります」

 


 
2014/10/24 20:03
買っている人を見たら

松家さん
「ぼくはある先輩に言われたことがあるんですけど、
 自分が作った本を
 誰かが書店で買ったり読んだりしているのを
 見たとしたら
 それは10万部以上のベストセラーだ、と。
 つまり、それはめったに見られない、
 ということなんです。
 正直に言うと、ぼくは自分が作った本を
 買った人をいちども見たことがない。
 買いそうな人はいましたが、
 けっこう戻すんですよ(笑)。

 でも、このTOBICHIの店に立ってみたら
 来るお客さん来るお客さんが
 みなさん買っていかれるわけです。
 これは、いままでと極端なちがいです。
 すごい多幸感です(笑)」

岡戸さん
「私は、本屋さんで
 立ち読みする方を見ていることがありますよ。
 買ってくださった方には
 ありがとうと言いたくなるし、
 買われなかった方にはどうしてですか、と
 問いかけたくなります。
 ですから、ここで買われなかった方が
 いらっしゃったら
 たぶん聞くだろうなと思います」

糸井
「だけど、作ったのがこのおふたりですから
 いいにきまってんじゃん、
 と言いたくなる自分もあるでしょう」

おふたり
「いやいやいやいや」

 



 
2014/10/24 20:21
完璧主義者?

糸井
「おふたりとも、いいものをずっと作ってきた
 方々ですからね。
 でも、たとえば、なにかの事情で、
 ハズレのものを作った、なんてことは、
 あるんですか?
 会社の作った変なものを
 売らなきゃいけない営業マンみたいな仕事が
 世の中にはときにあると思うんですが‥‥
 このおふたりはできるかぎり
 最善のものを作ってきた気がする」

岡戸さん
「ううーん‥‥どうでしょうか。
 たとえば、いち編集者として取材をしたり
 記事を作成したりするときには、
 どこかのページについて編集しているわけです。
 本全体のことを考えているわけでないので、
 そういった意味で、できあがったものを見て
 これでいいのかな? と
 思ったりしたことはあります」

糸井
「でも、ぼくは
 このおふたりほど
 完璧主義ではない、と思いますよ」

松家さん
「いやぁ‥‥あのですね、
 岡戸さんはぼくから見ても、
 ここまでやるか、と思います」

岡戸さん
「そんなことない、松家さんも
 激しいですよ」

糸井
「ですよね、あんなに編集長を兼任して‥‥」

 



 
2014/10/24 20:44
引き返しもあった

糸井
「俺なんてね、クズの仕事をしてきましたよ。
 頼まれ仕事、義理の仕事‥‥後悔があります。
 いまは、断ります。
 いままで、そうなるためだけの
 道のりだったような気がします」

松家さん
「マガジンハウス時代の岡戸さんは、
 いろんなところで、けっこう
 引き返しているらしいんですよ」

糸井
「ああ、それはなかなか勇気が要ることですね」

 


 
2014/10/24 20:48
不思議な才能

糸井
「こんなおふたりが雑誌を出すなんて、
 よくできあがったなぁ、と思います。
 できなくなっちゃうんじゃないか、と
 まわりの人は思ったんじゃないかな?
 お互いに、『やれ!』と命令で動くことは
 ありえない人たちだし、かといって
 どうやら部下という名の人たちも
 いないみたいだし‥‥」

岡戸さん
「なにも考えませんでしたね。
 たのしそうだなぁ、と思っただけで」

松家さん
「ぼくは最初から、
 編集長は岡戸さん、ということは
 決めていました。
 岡戸さんは、きわめてめずらしい才能の持ち主です。
 その不思議な才能をフルに発揮してもらうことが
 ぼくの役割でした」

 



 
2014/10/24 20:54

糸井
「はじめるとき、どなたかに助言を
 もらったりしたんですか?」

松家さん
「いえ、あまり誰にも‥‥あ、そうだ。
 マガジンハウスの木滑良久さんには
 岡戸さんとふたりで、ごあいさつに行きました。
 木滑さんは、岡戸さんを長年見てきた方で、
 おとうさんのような存在です。
 できあがったものを見ての
 感想を聞くのが、ちょっとこわいです」

糸井
「なんでもいいとは言わない人ですからね」

岡戸さん
「そうなんです。
 この雑誌、いま出すには
 時期尚早じゃないの、って言われました。
 あれは、どういう意味だったんだろう」

糸井
「それは、なんだかぼく、
 意味がわかる気がする。
 つまり、石をどかす人が必要ってこと」

 



 
2014/10/24 21:00
突破する人が必要だ

糸井
「つまり、なにかをはじめようとすると、
 突破するために
 石をどかさなきゃいけないんです。
 耕しはじめたらけっこう行けるんだけど‥‥」

松家さん
「いやぁ、石は、たくさん出てきましたね」

糸井
「そうでしょうね。
 ぼくは、石をどかす人たちを
 いいぞと思うし、
 応援したいです。
 だけどね、『そこは荒れ地だよ』って思います。
 そういう意味では早いと思うんだ。

 これが、なにかの真似ごとだったら
 整地されている大地です。
 でも、『つるとはな』もぼくらも、
 やりたいことはそうじゃない。
 いつでも荒れ地。
 だから応援したいんです。
 ほめたい。これを英語でいうとhold me tightって
 言うんだけどね‥‥あれ? ウケない」

 



 
2014/10/24 21:07
ターゲットを絞ること

糸井
「この『つるとはな』には
 人生の先輩に聞く、というコピーが
 ついているでしょ?
 これは、ターゲットの年齢層が一見、
 わかりやすいように感じちゃうんですよ。
 だけど、人の欲望というのは、
 ピタッとくる年齢のところでおさまらないわけで、
 ターゲットを絞ることは
 けっこう難しいことになってしまうケースが
 あるんです。
 
 でも、『つるとはな』は、そんなことがない。
 なぜなら、この本に雰囲気があるからです。
 読む前からすてきなんです」

松家さん
「はい。岡戸絹枝という人には、
 真似しようとしてもできないなにかがあります。
 それを、今回、近くでやるとわかるかな、
 なんて思ったけど、とうとうわかりませんでした。
 この本の独特な仕上がり方は、謎です。
 アートディレクションの有山達也さんの
 お力も大きいです。
 これが、岡戸さん、有山さんペアの
 不思議なところです」

糸井
「ターゲットがありそうに見えていて、
 普遍化できているんですよ」

松家
「そういえばクウネルもそうですね。
 岡戸さん、クウネルのときは
 読者層って
 考えていたんですか?」

岡戸さん
「読者層は、考えていましたよ。」

糸井
「そりゃそうだ、
 大黒柱がないと家が建たないですもんね」

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