トークイベントつるとはなの気持ち 岡戸絹枝+松家仁之+糸井重里

本日10月24日19:00より
創刊された雑誌『つるとはな』をテーマにした
トークイベントが開かれます。
場所は「ひとつの雑誌だけを売る本屋さん」開催中のTOBICHIです。
トークに参加するのは、
『つるとはな』編集長の岡戸絹枝さん、
編集制作の松家仁之さん、「ほぼ日」の糸井重里です。
そのようすを、ここでテキスト中継いたします。


つるとはな「ひとつの雑誌だけを売る本屋さん」 border=

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2014/10/24 23:37
おしまいです

これで、本日の
「つるとはなの気持ち」の
トークイベントの
テキスト中継はおしまいです。

なるべく多くの言葉を拾うように
心がけましたが、
急いで文字を打ちましたので、
きちんと表現しきれていない
箇所があるかもしれません。

お読みいただき、ありがとうございました。

明日10月25日、明後日26日、
ここTOBICHIでひきつづき
『つるとはな』の
「ひとつの雑誌だけを売る本屋さん」
が開かれます。
先着100冊にコットンバッグがついてきます。
みなさま、お待ちしています。

それでは、おやすみなさい。
ありがとうございました。

(おしまい)

 



 
2014/10/24 22:36

糸井
「じゃあ、ホントの最後に、
 ぼくが聞きたかったことをおふたりに
 聞かせていただきたいと思います。
 先を考えて仕事することと、
 考えなしでやっちゃった、ということがあるとする。
 おふたりは、そのグラデーションの
 いまどのあたりにいらっしゃいますか」

岡戸さん
「私は、先のことはわからずにやっています。
 松家さんはどうですか?」

松家
「ぼくは、1年先くらいまでは
 考えようと思ってやってます。
 2年先はまったくわからない、そういう感じです。
 闇雲にはじめたわけじゃないんですけど
 そんなに先まで考えてない」

糸井
「これから『つるとはな』は
 どんなペースで刊行していくんですか?」

岡戸さん
「うーーーん」

松家さん
「岡戸さん、うーーんって言うのが多いんですよ」

岡戸さん
「うーーーん」

糸井
「いい質問が来ると、人は答える前に
 うーーーんって言っちゃうものなんですよね。
 松家さんのインタビューなんて
 ぼくは『うーーーん』ばっかりですよ。

 どうだろうな、釣りをしていて
 なにかがわかることがあれば、
 釣りは、2匹目なんです。
 1匹目を釣ったときにはわからなかったことが
 2匹目を釣ったときに、点が線になって
 わかってくるんです。
 共通点があったり、わざと変えたりトライしたことの
 結果がわかるからです。
 だから、2号は、すぐに出しちゃえばいいかも、
 という気持ちがあります。
 だって、ぼくが、見たいと思う。
 1でこんなことやる人たちが、
 2でなにするの? 見たいです」

岡戸さん
「ありがとうございます」

糸井
「映画でもなんでも『2』って
 おもしろいんですよね。
 自分の弱いところやあんがい強いところが見えて‥‥
 そうすると、おふたりとも、
 3年先のことにニヤリとしたくなる、
 そんなふうになっているかもしれませんね。
 まだ創刊号が出たばっかりだけど、
 すごくたのしみにしています」

松家さん
「ありがとうございました」

岡戸さん
「ありがとうございました」

 



 
2014/10/24 22:26
老いについて

松家さん
「最後に、糸井さんに
 聞きたいことがあるんですが」

糸井
「なんでしょう」

松家さん
「糸井さんは、この先の
 老いというものについて
 どのように考えていらっしゃるのかな、
 と思いまして‥‥」

糸井
「そうですね‥‥老いのことを考える、
 ということを考えています。

 たしかな手応えがというのは
 結局、体のことしかないんですよ。
 老いると具体的に目が悪くなるし
 ちょっと徹夜に弱くなる。
 わきたつようななにか、というのは
 どんどん減ります。
 そのかわり、わきたたないけどおもしろいなにか、に
 移っていきます。

 わきたつって、たとえば
 好きな女の子の家のまわりを用もないのに
 ぐるぐるまわったりすること。
 青少年時代のむやみな行動です。
 老いると、それがないのに、おもしろいんです。
 
 わきたっていないのに、できることが増えたり
 喜んでもらうことがうれしかったり
 人がいいね、と言ってくれる。
 それがすてきなんです。
 『老いてますます盛ん』ではないんです。
 冷静かもしれないし、大騒ぎはしないけれども、
 つまらなくはないんだよ、
 たのしいし、おもしろいということを
 もうちょっと人に見せたいし、表現したい」

 


 
2014/10/24 22:20
定価

糸井
「そういった、いろんな問題に足を取られて、
 たくさん守らなきゃいけないものがあるんだったら
 やめちゃおうか、ということがなかったのは
 この雑誌の表紙を見ればわかります」

松家さん
「これはやっぱり
 会議にかけたら、通らない表紙ですよね」

糸井
「雑誌を作りたいんだという気持ちが
 強くある人たちだったから、
 こういう乱暴ができる理由があったんです。
 知らず知らずにそうとう大冒険していると思います。
 しかもそれは、ちゃんと定価がついている商品で」

松家さん
「はい。定価ってこわいものです」

岡戸さん
「定価を決めなきゃいけない、という日まで
 ギリギリ、かかりましたね」

糸井
「定価は1本のコピーを考える以上の
 表現だと思います」

 



 
2014/10/24 22:07
辞表

松家さん
「いっしょにやりましょうよ、と
 声をかけたのはぼくです。
 そのときにはすでに岡戸さんを編集長とした
 雑誌を作ろうと考えていました。
 岡戸さんも、雑誌を作りたいって、言ってましたよ」

岡戸さん
「うーーーん、言ってたんでしょうかねぇ。
 そうでしたかねぇ。
 そうだったとしたら、忘れてるんですね」

糸井
「うん、だって、そのあとこうして作ってるからね。
 こうしてちゃんと作ったときには、
 最初の気持ちは忘れちゃうものなのかも
 しれないと思います。

 おふたりのほかに、代表の佐藤真さんが
 いらっしゃるわけですが、
 こういう事業をはじめるときって、たいてい
 もっと組織だってやればいいのに、とか
 どういう要素がこの会社を食っていかせるの?
 ということを問いかける人が
 あちこちにいるものです。
 たくさんややこしいことを指摘されて
 そんなんだったらもう辞めた! と
 言いたくなっちゃう。
 でも、3人で、そこを乗り越えられたということは
 雑誌を作りたいという気持ちが強かったのでは
 ないでしょうか。

 自動車を好きな人が、とりあえず
 運転はじめちゃった! みたいな感じかな?」

松家さん
「きっと、『ほぼ日』もそうですよね」

糸井
「ええ、はげしく、野蛮にはじめました。
 若い人が夢を語るときでさえ、
 もっと頭を使っていると思います。
 『つるとはな』は3人ですが、
 ぼくはひとりではじめたので、
 いつも自分に出す辞表を持ち歩いている気分でした」

松家さん
「あ、それはぼくらもです。
 ぼくらも、辞表を懐に入れてますよ」

岡戸さん
「辞表、ありますね」

糸井
「わははは。それ、貧乏な人のコツかもしれないね」

 



 
2014/10/24 21:59
会社を辞めるとき

松家さん
「岡戸さんとぼくは、
 お互いに勤めていた出版社を辞めたんですが、
 その時期が3ヶ月くらいしか違わないんです。
 ぼくは岡戸さんがマガジンハウスを辞めたと聞いて
 すっごくびっくりしました」

糸井
「松家さんは新潮社を辞めてなにをするんだろう、と
 思っていましたが、
 まったくみごとに、なにも考えてなかったですね。
 いいなぁ考えてなくて(笑)、と思っていました」

松家さん
「考えていませんでした。
 糸井さんに、
 なにも考えてないと言っている人の95%以上は
 次を決めて辞めるんですよ、と
 言っていただきましたけど、
 ぼくにはなにもありませんでした。
 岡戸さんもでしょ?」

岡戸さん
「はい、考えてなかったです」

 


 
2014/10/24 21:34
嘘をつかない人

岡戸さん
「怒る理由‥‥ですか。
 どうですかねぇ‥‥、
 本を作るということに関しては、
 取材のありよう編集のありようを
 ただ言えばいい、ということになりますが、
 怒るというのはつまりそういうことではなく、
 社会的に、人として、どうなのかな?
 という場合が多かった気がします」

糸井
「ああ、なるほど。わかります。
 編集者としては直るんですよね。
 やってることを正せばいいだけだから。
 でも、人としてだめだろう、ということは
 怒るしかありませんね。
 でもそれ、仕事の質と一致するんですよね。
 人としてどうかが直れば、仕事のやり方も直る」

岡戸さん
「ああ、なるほど」

松家さん
「糸井さんが怒ることってなんですか?」

糸井
「それはやっぱり、
 いまの岡戸さんの話と通じるものがあります。
 いちばん怒るのは、やっぱり、嘘をつくことです。
 何かを褒めたり、形容したりするときに
 ついつい書いてしまうことって、あると思います。
 いかに正直になっているかが
 その人の仕事に、出てくることがあるんですよ。

 しかし、『つるとはな』はそこを前提としています。
 『つるとはな』には嘘をつかれてないって
 直感でわかるんです」

松家さん
「ああ、そういう意味では、
 岡戸さんは、あきれるくらい
 嘘をつかない人ですね」

 



 
2014/10/24 21:24
部下

糸井
「『つるとはな』の社内のスタッフは
 いまなん人ですか?」

松家さん
「えーと、いち、に、さん‥‥5人です」

岡戸さん
「お手伝いしてくれる人もいれて7人」

松家さん
「マガジンハウスの編集部には
 たくさんの部員がいたわけでしょう?
 いままで岡戸さんにとって
 部員とはどういうものだったのですか?」

岡戸さん
「なぜそんな質問を松家さんが私に(笑)」

松家さん
「まぁ、いいじゃないですか」

岡戸さん
「‥‥そうですね、
 たとえばオリーブには、20人近くの人が
 編集部にいましたので、
 怒りたい人がいても名前を憶えられず
 怒るチャンスを逃した、
 なんてことがありました。
 それを先輩に相談したら、
 先輩もそうだよ、とおっしゃっていたので、
 そういうものなのな、と思っていました」

糸井
「その、岡戸さんが怒る理由って、
 なんですか?」

 




 
2014/10/24 21:14
知らない人に声をかける岡戸さん

糸井
「まず、表紙です。
 この写真が表紙だと決めたのもすごいし、
 もはや、許してくれた人が偉いと思う」

一同
(笑)

糸井
「これは、家庭内アルバムの写真のような1枚です。
 いらっしゃいませ、ではなく、
 俺んちにようこそ」

松家さん
「この写真もね‥‥岡戸さんは、
 ホルトハウスさんの料理教室に
 2年くらい通ってるわけですよ。
 時間をかけて
 ホルトハウスさんご夫妻のようすを見てこられて
 この写真に至るわけです」

糸井
「岡戸さんは、とけこんでいるんですね」

松家さん
「『つるとはな』のシニヨンのページ、
 ごらんになりましたか?
 あそこに出てくださる方を探して、
 岡戸さんはあちこちでナンパしたんですよ。
 街で、気になる人を見かけたら
 声をかけるんです。
 なんの面識もない人です。
 幾度も交渉して、断られたこともあれば
 取材を実現できた方もいる。
 そういうこと、ぜんぜん、おしまないなんですよ」

糸井
「岡戸さんは
 役割分担をしないんですね。
 役割分担しなさかげんがすごいです。
 でも、ぼくも松家さんも、わりと
 役割分担が下手なほうでしょう」

松家さん
「そうですね」

糸井
「でも、かんたんに役割分担をしないことで、
 逆に、人に『ここは』と頼むときには、
 心から、お願いすることになります」

 



 
2014/10/24 21:07
ターゲットを絞ること

糸井
「この『つるとはな』には
 人生の先輩に聞く、というコピーが
 ついているでしょ?
 これは、ターゲットの年齢層が一見、
 わかりやすいように感じちゃうんですよ。
 だけど、人の欲望というのは、
 ピタッとくる年齢のところでおさまらないわけで、
 ターゲットを絞ることは
 けっこう難しいことになってしまうケースが
 あるんです。
 
 でも、『つるとはな』は、そんなことがない。
 なぜなら、この本に雰囲気があるからです。
 読む前からすてきなんです」

松家さん
「はい。岡戸絹枝という人には、
 真似しようとしてもできないなにかがあります。
 それを、今回、近くでやるとわかるかな、
 なんて思ったけど、とうとうわかりませんでした。
 この本の独特な仕上がり方は、謎です。
 アートディレクションの有山達也さんの
 お力も大きいです。
 これが、岡戸さん、有山さんペアの
 不思議なところです」

糸井
「ターゲットがありそうに見えていて、
 普遍化できているんですよ」

松家
「そういえばクウネルもそうですね。
 岡戸さん、クウネルのときは
 読者層って
 考えていたんですか?」

岡戸さん
「読者層は、考えていましたよ。」

糸井
「そりゃそうだ、
 大黒柱がないと家が建たないですもんね」

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