第3回 室町時代の人でもわかるおもしろさ。

糸井 おそらく、宮本さんがゲームをつくるときには、
商品だったり、作品だったり、
あるは趣味に近いものだったり、
いろんな段階があると思うんだけど。
宮本 自分の立場が、いろいろと。
糸井 そうそう。で、宮本さんの場合、
やっぱりいちばん大きいのは、
「商品をつくってるんだ」っていう、
おとっつぁんっぽい自負だと思うんですよ。
宮本 はい(笑)。
糸井 その「商品をつくってる」という意識って、
じつはいちばんクリエイティブを鍛えると思うんです。
つまり、「好きなようにやってごらん」
って言われて、自由につくり続けてるものって、
やっぱり、ダレちゃうんですよ。
岩田 「制約はクリエイティブの母」なんですよね。
糸井 そういうことです。
宮本 あの、ぼくは、この仕事をはじめてから
「アートじゃなくて商品をつくってるんだ」
っていうことをずっと言ってるんですけど、
結果的には、それでラクをしてると思うんです。
糸井 「ラク」ですか。
宮本 はい。さっき糸井さんがおっしゃったように、
作品とか、商品とか、つくるときには
いろんな立場があると思うんですけど、
自分の目標をどこに置くのか見えなくなるのが
いちばんつらいと思うんですよ。
その意味では、「売れる」とか、
「お客さんに届ける」っていうのを目標に置いてると
ある意味、ラクなんです。
糸井 ああー、なるほど。
宮本 だって、
自由を与えるから好きなことしなさい、
って言われたら困るじゃないですか。
糸井 困るねぇ(笑)。
宮本 「あなたの永遠の夢はなんですか?」とか
取材で訊かれても絶対答えられないですし。
「いつか成し遂げたいビデオゲームはなんですか?」
なんて訊かれても、それは、わからない。
糸井 うん。
岩田 宮本さんは、そこに動機がないんですよ。
宮本 そう、ないんですよね。
糸井 それよりも、「お客さん」とか「商品」のほうが、
目標として、はるかに実感がある。
宮本 はい。
糸井 それを聞いて思い出したのが、
宮本信子さんに教えてもらった
伊丹十三さんのことばなんだけど、
伊丹さんは家を出るとき、子どもたちに、
「とうちゃんは味噌醤油代を稼いできます」
って言って出て行ってたそうです。
岩田 へぇぇ(笑)。
糸井 で、映画をつくってた。
伊丹さんにとっての映画が
完全に味噌醤油代の手段だったとは思わないけど、
そう言えちゃう強さって、あると思うんですね。
若いときって、絶対そう言いたくないじゃないですか。
「お金のためにつくるんだったらやめる!」
みたいなことを言ったりして。
宮本 うん(笑)。
糸井 あるいは、
「作品というのは時代につくらされる」とかさ。
まぁ、そういう考え方がいけないわけじゃないけど、
「時代性がないとなにもつくれない」
っていうところまで行っちゃうと、
やっぱりちょっと頭でっかちだと思うんです。
自分のことでいうと、ぼくは若いころ、
取材で、つくったものと時代についての関係性を
訊かれることが多くて、ほんとに困った。
「アメリカで起こってる動きと似ていて‥‥」
とか言われても、
いや、ぜんぜんそういうんじゃないから、って。
そうじゃなくてさ、なんていうかな、
もう、室町時代の人でも
おもしろいと思うようなことをやりたいんですよ。
宮本 ああーー。
岩田 うん、うん。
糸井 鎌倉時代でも室町時代でも、
ピラミッドの時代の人でも
おもしろいって思うようなもの。
そういうものが根っこのところにあれば、
あとは時代性だとか、ファッションだとか、
いくらでも色づけできるわけだからさ。
宮本 おもしろいものを
より売れるようにするだけですからね。
糸井 そうそうそう。
おおもとのところにあるのは、もう、
「ネアンデルタール人との涙の別れ」
みたいなおもしろさでさ。
岩田 「ネアンデルタール人との涙の別れ」(笑)。
糸井 こりゃ、ネアンデルタール人でも
悲しむに違いない、みたいなことで。
どこの国の人だろうと
よろこぶことってなんだろう、とかさ。
それは、『マリオ』のおもしろさが
世界共通なのと同じことですよ。
岩田 うん、そういうことですよね。
宮本 ぼくも、たとえばなんかの遊びのルールについて、
「こっちがこうなったら勝ちっていうのは、
 エジプトの時代の人がつくっても
 こういうルールにするやろうな」
って思うことがありますよ。
自分もそういうルールを考えたいなぁ、
と思うんですけどね。
糸井 そうそう、そういう感じ。
宮本 スポーツなんか、いい例ですよね。
ゴルフはよくできていて、
カップにボールを入れたら「あがり!」ですよね。
野球のルールは複合的ですが、
よくできてるなあと思います。
ボールを投げて、打つ。
捕れなかったら、セーフ。
このへんは必然的だと思いますが、
そのあとの、アウトが3つでチェンジとか、
そういうバランスは誰が決めたんやろうなって。
「こういうことが起きたらどうしよう」って
ひとつひとつ積み上げていったから
見事に成り立ってるんでしょうね。
その意味でいうと、『ピクミン3』っていうのは、
けっこういい積み上げ方をしてるんですよ。
糸井 ああ、なるほど。
宮本 複雑な遊びというよりは、
わりとシンプルなことが積み重なってて。
その結果について、
バランスをとるルールだけ足してます。
岩田 シンプルなことが組み合わさると、
すごくいろんなことが起こるという。
宮本 そうそう、思わぬことが起こるんです。
でね、そういう遊びって、
室町時代の人にも伝わると思うんですよ。
糸井 うん。
宮本 だから、『テトリス』なんて、
室町時代の人でもわかるゲームだと思うんです。
糸井 なるほどー。
宮本 そういうものを
ぼくはつくりたいのかなぁと思うんです。
だから、『ピクミン3』は
ファミコンのころのおもしろさに
戻ってると言いましたけど、
じつはもっと、戻るのかもしれない。
糸井 もっと戻るんでしょう。
だから、ボール1個くらいにまで戻るんですよ。
ぼくも目指しているところは同じです。
宮本 うん。
そういうことを、Wii Uをつかってできないか、
ずーっと考えてるような気がしますね。
(続きます)
2013-07-17-WED