第2回 すっきりした構造。

糸井 『ピクミン3』をつくり終えたということが
いまの宮本さんをずいぶん
クリアーにしているみたいですね。
宮本 そうみたいですね。
糸井 それはきっと、いい手応えとともに
フィニッシュできたからでしょうね。
「もっとあそこをああすれば‥‥」
みたいな終わり方だったら、
そんなに晴れ晴れとしてないと思う。
宮本 そうかもしれません。
岩田 たしかに今回の『ピクミン3』は、
できたゲームの構造がすっきりしてるっていうか、
宮本さんが「うまく解けた」っていう表情で
いろいろ語ってくれることが多いんですよ。
糸井 「構造がすっきりしてる」というのは?
岩田 やっぱり、ゲームの仕組みって、
「あちらを立てればこちらが立たず」とか、
「これとこれがこういう関係になってるから
 駆け引きが生じておもしろい」、
みたいなことにが根本にあるんですね。
しかも、いまのゲームって、
そういうおもしろさの軸が
1本じゃなくて複雑に絡み合ってるんですよ。
糸井 だから、「すっきりしない」。
岩田 そう、「すっきりしない」んですよ。
宮本 それは、簡単にいうと、
ふつうは安易に足すからですよね。
岩田 「足して、足して、足して‥‥」
っていう構造になってますから。
糸井 足すことで、お客さんはよろこぶに違いない
っていう感じで構造が複雑になってるんですね。
岩田 最近は、とくにそういう傾向があると思います。
一方、今回の『ピクミン3』は
構造の根本のところがとてもシンプルで、
それゆえに、もともとやりたかったことが
きれいにできたっていう感じなんです。
宮本 ちょっと不安があるとすれば、
演出があんまり派手じゃないんで、
「盛り上がりに欠ける」とか「地味」とか
言われちゃうと思うんですよ(笑)。
糸井 ははははは。
宮本 けど、ゲームのなかで演出をつかって盛り上げると、
どの人の遊ぶゲームも同じになってしまうので。
ぼくらとしては、遊ぶ人がそれぞれの頭の中で
演出してくれたら理想なわけで。
糸井 あーー、それは、わかるなぁ。
やっぱりそこは、お客さんを信じるんだよね。
宮本 ですよね。
とくに、今回の『ピクミン3』は
そういう気持ちがすごく強いんです。
だから、さっきも言いましたけど、
これがわかって受け入れてもらえるなら、
まだまだやれることがあるし、
逆に、わかってもらえなかったとしたら
つぎのことを考えるのもいいかな、って。
糸井 そういう気分はぼくにもありますよ。
違う道を考えるのも、
それはそれで悪くないぞっていう感じなんだよね。
ある種、建設的な気分というか。
宮本 そうそうそう。
糸井 ぼくもだから、そういうことを
しょっちゅう小さい規模でやってますよ。
たとえば、お客さんを信じて、
あえていつもと違う方向へ振ってみる。
それで、うまく行かなかったときに、
「お客さんを信じて失敗しちゃった」って
がっかりするんじゃなくて、
なんか、違う道具を持ってきて立て直すというか。
宮本 うん。
じゃあこれでいこうかなっていう感じ。
糸井 つまり、わかってることじゃなくて、
「まだ解説しきれてないこと」について
興味があるんですよね。
そういうエリアってじつはすごく広いんだけど、
解説ばっかり言ったり聞いたりしてると
わかんなくなっちゃうんですよ。
また野球のたとえになっちゃうけど、
実際に野球場に行って野球の試合を観ると、
解説者の声もアナウンサーの声も
聞こえないじゃないですか。
岩田 はい。家のテレビで観てるときには
実況や解説があるほうが当たり前だけど。
糸井 実際の野球場にはそんなものないんですよ。
だけど、4万人、5万人の人が球場で
解説のない野球をたのしんでるじゃないですか。
宮本 ほんと、そうですよね。
だから、ぼくらもPRのときに
自分たちでつくってるものを
自分たちで解説しすぎてるかもわからん。
岩田 (笑)
糸井 話を「すっきりした構造」というところに戻すと、
ハリウッドのアクション映画なんかでも、
「足して、足して、足して」って盛っていくと、
「いまのところ、よくわからなかったな」
っていうことになるじゃないですか。
宮本 はい、はい、はい。
糸井 CGとワイヤーアクションを駆使して
すごいんだけど、何が起こってるか
イマイチよくわからない、みたいな。
そういうときに、ぼくとしてはやっぱり、
「みんなが理解できることが行われている」
ということを、取り返したい気持ちがあるんです。
宮本 ぼくも、そうですね。
CGをどれだけつかっても
おもしろい映画は、いまなにが起きているかが
観てるだけでちゃんとわかるから。
糸井 そうそう、だから、
きちんとした表現ができてたら、
いろいろ足しててんこ盛りにしなくても
いいんですよね。
宮本 うん。
糸井 あと、技術がほんとうに成熟したときって、
むしろ「減らせる」んですよ。
宮本 ああー。
糸井 たとえばね、みなさんお若いから
おわかりにならないと思いますけど、
カラーテレビが家庭に入ってきた時代って、
ニュース番組を放送するときでも、
こう、アナウンサーの横に
大きな花瓶が置いてあったんですよ。
宮本 (笑)
岩田 つまりそれは、色を使いたくて。
糸井 そうなんです。
「7時のニュースです」って言ったときに、
机の上に花があるんですよ。
なぜなら、カラーテレビだから。
宮本 それ、ぼく、
テレビ局の現場にいたら言いそうやね。
「ここに花ぐらい置かへんと、
 カラーの意味がないやろう」って(笑)。
一同 (笑)
糸井 で、これはメディアの話になると
よく言われることなんだけど、
たとえば本なら「本でしかできないこと」を
テレビなら「テレビでしかできないこと」を
追求して発見しろ、みたいに言うじゃないですか。
あれ、個人的には、疑ってるんですよ。
少なくとも、そこばっかりを追いかけるのは
ちょっと違うんじゃないかと思う。
だって、そのメディアが成熟したら、
「ならではのこと」なんてなくなっちゃうから。
あえてモノクロの映画を撮る人はいるし、
3Dにしなくてもリアリティーは出るし。
だから、なにかをつくるときに、
「このメディアはこういう特徴があります」
みたいなことは、ぼくの距離感に限れば、
いつも無視しちゃってる。
宮本 ああ、なるほど。
岩田 一方で宮本さんは、
取り組むプロジェクトに応じて
距離を変えてますよね。
近くに行ったり、遠くに行ったり。
宮本 それはやっぱり、立場が変わりますからね。
ハードつくってる立場からすると、
特徴があったら絶対それを活かしたくなる。
でも、つくる人に向けては、
必ずしもそれをつかわなくてもいいですよ、
って言いたくなるんですよね。
つかわなくてもいいっていうんじゃなくて、
あって当たり前のものとして
つかえばいいんじゃないかな、って。
糸井 そうそう、そうそう。
宮本 できたものから逆算すると、
ハードのその特徴がなかったら
できないわけですから。
だから、ハードの特徴に振り回されるんじゃなく、
そのハードがあったほうが便利だと思えたら
なんか新しいものがつくれるというか。
糸井 電子レンジがなくったって料理はできるし、
かまどで炊いたご飯が
いちばん美味しいのかもしれない。
っていうことが、ぜんぶわかったうえで、
新しい電子レンジを買ったら、
さぁ、これでなにつくろうってなるわけで。
宮本 そうですね。
だから、『ピクミン3』の取材を受けると、
「Wii Uのどこが活かされてるんですか?」
って訊かれるんですけど、
「いや、なかったらできないですよ」
っていうのが、いちばん正しい答えなんですよ。
糸井 なるほどね。
(続きます)
2013-07-16-TUE