『大合奏!バンドブラザーズ』に注目!

 

数々の動画などを紹介しながら
『大合奏!バンドブラザーズ』の
魅力をご紹介してきたこの企画、
みなさまおたのしみいただけましたでしょうか。
発売当時、どちらかといえば、
あまり知られていなかった『バンブラ』ですが、
一時期は店頭で品切れ状態が
続くほどの評判を呼んだようです。
このページをきっかけに、
『バンブラ』のたのしさ、合奏のたのしさに、
気づいてくださった人もたくさんいらっしゃったようで、
『バンブラ』ファンの我々としても
たいへんうれしく思っています。
さて、連載の最後となる今回は、
特別なゲストをお迎えいたしました!
任天堂社長の岩田聡さんです!
ふだんは会社の方向性など、
全体的なコメントを求められている岩田さんですが、
ここでは連載の終わりの記念として、
『バンブラ』に対する思いを
特別につづっていただきました。
これから発売されるソフトの話もありますので
どうぞたのしみにお読みくださいね。
あ、『涙のバンブラ開発物語』の
最終回ももちろんありますよー。
まずは岩田さんのコメントをじっくりどうぞ。

ほぼ日読者のみなさん、こんにちは。
任天堂の岩田です。
長期にわたり、
バンブラ開発物語を楽しんでいただいて、
ありがとうございました。

このソフトは、長い間、
なかなか日の目を見ることのできなかったソフトで、
開発の道のりは、
決して平坦なものではありませんでしたが、
今回、バンブラというちょっと変わったソフトが
どのように作られてきたのか、ということが、
よくおわかりいただけたのではないかと思います。

ゲームボーイアドバンス時代
(当時はゲームボーイミュージックと
 呼ばれていました)
から、合奏の楽しさに十分に手応えがあることは
わかっていても、
同じソフトを持った人が集まらないと
合奏が成立しないということが
課題として解けないまま、
なかなか商品としてまとまらず、
開発は中断となってしまいました。
その後、DSのソフト開発が本格化する頃に、
このソフトの構造が、
DSの無線機能ととても相性の良いことを、
私は強く感じていました。
それは、DSのゲームシェアリング機能
1本のソフトで、周囲の人と合奏することを
可能にすることが見えていたからです。
幸いにも、一度開発中断となってはいても、
チームの人達の心の火は消えていませんでした。
そこで、開発の組織替えと同時に、
DS向けにプロジェクトチームを
立ち上げることにしました。
プロジェクトチームの発足時に、
私は、3つのことを宣言しました。

・DSとの同時発売を目指すことを至上命題とする。
 このため、もし、同時発売が
 間に合わないと判ったら、
 その時点で、プロジェクトを解散する。

・1本のソフトで、
 周囲の人達と合奏ができるという
 部分をしっかり作れば、
 必ず商品価値があるものが作れるのだから、
 他にあれこれ1人用音楽ゲームとしての
 攻略要素を付け加えようと迷う必要はない。

・長く楽しめるように、
 しっかりとした作曲ツールを内蔵しよう。
 タッチパネルと2画面はここで活かせばいいから、
 ゲームの主となる演奏部分で、
 タッチパネルや2画面を活かすことに
 こだわりすぎるのはやめよう。

最初にやるべきこととやるべきでないこと、
そして制作の期限を明確にしたのは、
チームが迷わずに仕事に打ち込める状況を
作りたかったからですが、
DSとこのソフトのコンセプトの相性もあって、
今回の開発は比較的順調に進みました。
もちろん、開発期間が短かったので、
迷走しているヒマがなかったと
いうことでもあったのですが。

最初は、過去の迷走や中断のことが気になって、
チームのみんなも不安だったに違いありませんし、
それはありありと表情に表れていましたが、
合奏ができるようになってからは、みんなが
「合奏をしたくてしかたがない」状態になり、
チーム内部ではっきりと
手応えを感じるようになることで、
みんな揃ってみるみる元気になっていきました。
ちなみに、バンブラ合奏には
本当に不思議な魅力がありますから、
未体験の方は、ぜひ周囲のバンブラ・プレーヤーに
声をかけて、体験してみてくださいね。

こうして、チームのノリもどんどん良くなって、
最初の予定にはなかったハナウタ入力や、
合奏の合間にチャット
(通称:ヒマチャット)が実現されたり、
楽譜入力エディター(スコアメイクPRO)や
練習モードが私の要望に応えて
みるみる改良されて使いやすくなりました。
そればかりではなく、チームからの提案で、
追加楽曲の店頭での無線配信などの
仕組みも組み入れることができました。
2月末くらいから、一部店舗の店頭で
追加楽曲の無線による配信も
徐々に始めていきますので、
楽しみにしていてください。
(本日、任天堂のホームページ
 サービスの詳細をお知らせする予定です。)

今回、完成したバンブラを振り返ってみると、
開発チームの苦闘の甲斐あって、
音楽をテーマにしたゲームでありながら、
いわゆる「音ゲー」とは異なる、
誰でもカンタンに始められる間口の広さを持ちながら、
遊び手次第で自由な深さで楽しみ方が選べる
不思議な魅力を持つ
新しいソフトとしてまとまったと実感しています。
バンブラは、いわゆる狭い意味の
ビデオゲームとは呼べない構造になっているため、
「バンブラはゲームではなくて楽器だ」
と表現してくれる方もいるようです。
その観点で言い換えると、バンブラは、
「ビデオゲームの定義を広げる」
という役割を果たしたと言えると思います。

これはDSを開発した目的そのものでもあるのですが、
私が最近いつも考え、実現に向けて行動しているのは、
「以前に比べて、最近はゲームで遊んでいないよね」
とおっしゃるみなさんが増えている環境の中で
「ゲーム人口をいかに増やしていくか」
ということです。
そのためには、ゲームが
「自分に関係のある存在」として
より多くのみなさんに感じていただけるように
働きかけていく必要がありますよね。
このとき、ビデオゲームというものが、
アクションゲームか、
レースゲームか、
ロールプレイングゲームか、
スポーツゲームか、
アドベンチャーゲームか、
シミュレーションゲームか、
パズルゲームかというような、
既成のジャンルのどれかに
収まるものでしかなければ、
「今のビデオゲームは自分には関係のないもの」
と感じておられる方に、
なかなか振り向いていただくことはできないでしょう。

そのためにも、いろいろな新しい提案で、
ゲームの定義を広げていく必要があります。
4月に発売予定のnintendogsは、
いわゆる犬の育成攻略ゲームとは違い、
子犬が好きな方々全てを対象として
楽しんでいただけるという意味で、
ゲームの定義を広げる代表的な商品のひとつです。

このほかにも、
電子辞書を使った遊びを実現するソフトや、
脳の働きを活性化する効果のあるソフト、
音と光に触る遊びのソフトなど、
年齢や性別、ゲーム経験の有無を問わず、
幅広い層のみなさんにDSを楽しんでいただけて、
同時にちょっぴり役に立つ、
「ビデオゲームの定義を広げる」ための
新しいソフトの提案を、
nintendogs発売後も次々と準備していますので、
どうぞ、お楽しみに。

それでは、みなさん、ニンテンドーDS、
そして、バンブラを楽しんでください。
どうもありがとうございました。

岩田 聡


さて、最後はご好評いただいている
『バンブラ』開発秘話の最終回です。
旧開発チームが新部署に再結集、
そこに放り込まれた部外者とは‥‥?!

涙のバンブラ開発物語
最終回〜異分子混入編〜


ディレクター
アートディレクター
サウンド
西田 勝さん
北村典子さん
尾崎裕一さん
 
グラフィック
 
 
 
岡本直子さん
グラフィック
プログラマー
プログラマー
松原 祥さん
富沢俊和さん
北原慎治さん
 
西田 新しい部署で、開発が再開されて、
それでようやく
『大合奏!バンドブラザーズ』のかたちに
なるわけなんですけど、
旧開発チームが集められるなかで、
まったく違う部署から放り込まれたのが
岡本だったんです。
岡本 異動の発表見て、アゴ、落ちましたよ。
一同 (笑)
岡本 ひとりだけ、
よそからもらわれてきた子っていう感じで。
まあ、同じ、開発の部署にはいたんですけれど、
つくっていたものがまったく違ったんです。
だから、このソフトのことも、
まったく知らない!
一同 (笑)
岡本 まえに関わっていたプロジェクトも、
なくなってしまっていて、
ちょっと悶々としてたんです。
そしたら、岩田さんから、
「こういうグループ分けにします」っていう
メールが来たんです。
で、まあ、クリクリしながら
(マウスをスクロールする仕草)
「あ、ここかな? ここかな?」って
思いながら読んでたんですよ。
「あれ? 名前ないなあ。
 あっ、これ、まえ同じ部署だった子や!
 じゃあここかな‥‥あれ? ないな?」
で、クリクリクリクリーってやって、
いっちばん最後のところに、
「‥‥GBMプロジェクト 岡本」
はぁぁ〜〜〜?!
一同 (笑)
岡本 なんで? いくの? 私?
とかって思って。
なんか、訊いたら音楽ソフトやっていうけど、
そんなんぜんぜん知らないし、
「音楽好きです」とも言ったことないし。
え? なんで? とか思って。
そのままポイッて入って。
それでまあ、北村さんとは面識があったんで、
先につくられてたアドバンスのソフトを
触らせてもらったんです。
「ちょっとセッションやれへん?」
って言われて。
じゃあ、ちょっと‥‥ってやったら、
おもしろかったんですよ、それが。
で、あ、これ、おもしろい!
ってびっくりして。
その、なんか、社内のウワサでは、
あんまり評判がよくなくて、
あれはどうなんやっていう声も
聞いていたので。
西田 へええ。そんなこと知らなかったけど、
まあ、どんどんしゃべって(笑)。
岡本 まあ、ようするに、失敗したソフトだ、
みたいに言われてたのを聞いてたので、
入るまえは「大丈夫なんかな?」って思ってて。
で、入って遊んでみたら、
ぜんぜんウワサとちがくて、
ちゃんとできてるソフトやし、
セッションっておもしろいし、
あっという間に気に入って。
で、それから、ほかの部署の人に、
「どうなん、正直?」って
訊かれたりしたんですけど、
もう胸張って、
「おもしろいですよ!」って、
言いましたよ。言ってやりました(笑)!
西田 こういうふうに始まったんですよ。
みんな、不安たっぷりで。
ただ、捨てるには惜しいっていう、
そういう気持ちが集まって。
尾崎 そういうなかで、岡本さんが入ったというのは
すごく効果があったんですよ。
というのは、みんなこのソフトに
すごく慣れていたので、客観的に、
「え? なんでこうなの?」って
素朴な疑問を口にする人がいなかったんですよ。
西田 みんなすごく頭でっかちに
なってましたから、
岩田は、そういう意味で、
岡本をこのチームに
入れたんじゃないでしょうか。
北村 みんなが常識と思ってることを、
「これ、なんでなん?」って
訊いてくれる人がひとりいるだけで、
バランスがグッと変わるんですよね。
北原 たとえば、演奏モードは、
プレイヤーのレベルに合わせて、
「プロ楽譜」
(オクターブの上げ下げや
 #も自分で操作する。
 使用するボタンは10個)
「アマ楽譜」
(オクターブの上げ下げや
 #は自動で切り替わる。
 使用するボタンは8個)
「ビギナー」
(十字ボタンとボタンの
 ふたつだけで操作する)
と、三種類用意したんですけど、
それも彼女のひとことがきっかけで。
岡本 「できませ〜ん!」って(笑)。
西田 最初は「プロ」しかなかったんですよ。
ずっと演奏してたから、
難しいとは感じられなくなっていて(笑)。
岡本 いや、できませんって、
いきなり「プロ楽譜」は。
北村 すごく敷居が低くなりましたよね。
いま考えると、アドバンスでつくってたころは
かなりとっつきにくいものだったと思います。
西田 「ビギナー楽譜」は、
はじめてプレーする人やったら、
ちょうどいいのかな? って感じですよね。
あれで、かなり救われたと思います。
尾崎 鼻歌で入力するモードも、
岡本さんが推してたんだよね。
岡本 五線譜の企画はあったんですけど、
「五線譜なんて、絶対ムリ!」って思ってた。
だから、スタッフのみんなにずっと、
「鼻歌、鼻歌、鼻歌、鼻歌‥‥」って
しつこく言ってて(笑)。
西田 あんまり言うから、
「ほな、入れてみるか」って(笑)。
松原 でも、五線譜モードが簡単だってわかったら、
いちばんハマってたのも岡本で。
北村 そうそう(笑)。
私と岡本がふたりで、
「五線譜なんて難しい!」って
言ってたんですけど。
松原 最終的に、本屋で楽譜を買ってきたりして、
いちばん五線譜に打ち込んでたのが、
このふたり(笑)。
岡本 なんか、いっぱい、
記号を読めるようになりましたよ。
コーダとか、フェルマータとか。
一同 (笑)


『大合奏!バンドブラザーズ』の連載は今回で終了です。
お読みいただき、どうもありがとうございました!


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