ほぼ日ニュース

長い、元気、働き者。
(後編)

▲写真提供:NHK     

こんにちは、ほぼ日のスガノです。

前編につづき、
NHK BSプレミアムの音楽番組
「The Covers」の矢野顕子さんがゲストの放送のトークを
ほぼ日編集バージョンでお伝えします。


仲:
糸井さんが作詞をするときに、
大切になさっていることは、ありますか。

糸井:
「できた」というまでは手を離さないようにします。
形は整ってるけども「できてないな」と
思うものに対しては、しぶとく、
もっといいのができるのを待ちます。
ある点数になるまでは手離れさせないということが、
まぁ、あえて言えば「やりかた」かもしれないです。
コピーも同じ。
「ああ、整った」という瞬間が
あるかもしれないけど、それは完成じゃない。
「これじゃなぁ」という時間が長いですね。

リリー:
リリースしてしまったら戻ってこられないし、
直せないし、という気持ちもありますよね。

糸井:
逆に言うと、締切りがあったおかげで手離れができて、
「ああ、助かった。もう悩まなくてすむ」
ということも‥‥あります(笑)。
曲でもあるだろうし、小説だってありますよね。

リリー:
ありますね。
最新曲でおふたりの共作の
「SUPER FOLK SONG RETURNED」は、
元になる最初の歌が、
1980年に糸井さんが出したアルバムに
入ってるんですよね。

糸井:
はい。ぼくがなぜかアルバムを出すという、
ふざけたことをしたときに、
矢野顕子が作ってくれた歌が2曲ありました。
そのうちの1曲が「SUPER FOLK SONG」でした。
やがて矢野さんが自分で歌うようになったら、
そのほうが圧倒的にいいから、
「あれは矢野顕子の歌だ」というふうに
なったわけですね。

リリー:
このアルバムのことを、糸井さんは俺に
いっさい話してくれませんでしたけど、
まぁ、当然俺は知ってました。
糸井さんがボーカルのアルバムで。
ちょっとかけてみましょうか。

糸井:
いや、とくに「SUPER FOLK SONG」は
やめてほしいです(笑)。

矢野:
大変だったんだよね、これ。

糸井:
うん。歌って、痩せたもん。

矢野:
(笑)

仲:
おいくつくらいのときですか?

糸井:
31とかじゃない? 
誰だってそういう時代があるんですよ、
おじいさんとして生まれたわけじゃないんだから。

一同:
(笑)

リリー:
「SUPER FOLK SONG」は確実に、糸井さんより
矢野さんのほうがたくさん歌った曲に‥‥

矢野:
それはそうですね(笑)。

糸井:
ぼくは2回ぐらいしか歌ってない。

リリー:
37年の時間を経て、
今回の新作「SUPER FOLK SONG RETURNED」が
できたわけですが。

糸井:
1作目の「SUPER FOLK SONG」
聴くとわかるんだけど、
あの歌の続き、どうなったんだろう? 
「ハッピーエンドにしておくれ」
と最後に言ってるんだから、
どうなったかを自分で書いてみようって思って作った。
そしたらもう、おもしろいようにできるの。
10分とか15分でチャーッと書いて、
うれしくなっちゃってさ。
「アッコちゃん、できたよ」と送った。
で、そしたら、アッコちゃんもすぐまた作ったね。

矢野:
詞が送られてきたときにひと言、
「お見事」って返事して、
こっちはこっちですぐできた。

糸井:
こんな宿題をくれた、
37年前の自分にも感謝してるんです。
仕事って、するもんだね。

矢野:
そうだね。

リリー:
40年近く経って、
この曲の続きをまた2人で作ろうとする。
そしてなおかつ「作れる」ということが、
考えてみたらすごいことですよね。
だって、1980年には、
「春咲小紅」もできてないわけでしょう? 

糸井:
できてないですね。

リリー:
物語の続きが語られた歌詞に、
「春咲小紅」の言葉散りばめられてるんですよ。
つまり、ふたりのセッションの歴史が
「SUPER FOLK SONG RETURNED」に入っているんです。
それはもう、グッと来ました。
お互い健康で、
お互い第一線で仕事をしてて、
お互いに好きなことをして‥‥、
これはぼくらにとって、夢のある話ですよ。

矢野:
うん、そうだね。そうだよ。
長生きはするもんだ。

リリー:
長い、元気、働き者って、
すごいことですよ。

糸井:
いつかアッコちゃんと1001曲作れたらと
言ってたんだけど、
ちょっとそういう気分にさせるよね。
九十何歳で、450曲目ができたとか(笑)、
そういうことがあってもおかしくないですね。

(「SUPER FOLK SONG RETURNED」が
ピアノの弾き語りで演奏される)

仲:
糸井さん、矢野さんの演奏を目の前でごらんになって、
いかがでしたか。

糸井:
いつも思うんだけど、
アッコちゃんの演奏は、楽しいですよね。
何かがワーッと湯気になってる。
生はとくにうれしいです。

矢野:
それは、私が楽しいからだね。

糸井:
そういうことか(笑)。
うつるのか。

矢野:
うん、そうね。

リリー:
いろんな意味で、
聴いてて元気になりました。
異様な多幸感を得られる曲ですね(笑)。

一同:
(笑)

これで、「The Covers」矢野顕子さんゲストの放映の
ほぼ日バージョンの掲載「前後編」はおしまいです。
11月29日の矢野さんのあたらしいアルバム
「Soft Landing」のなかには、
・野球が好きだ
・夕焼けのなかに
・SUPER FOLK SONG RETURNED
の糸井重里作詞作品が収録されています。
7年ぶりの、ピアノいっぽんの矢野さんのアルバムです。
とてもとても、たのしみです。


矢野顕子さんの
7年ぶりの「ピアノ弾き語り」アルバム
「Soft Landing」
が、11月29日(水)に発売されます。

内容についてくわしくはこちらをごらんください。

矢野顕子さんの、
ピアノひとつで歌うスタイルの演奏は、
矢野さんのほぼすべてのコンサートで見られます。
ピアノと矢野さんだけが生み出す音楽は、
ある種特別なもので、
そこが好きだというファンの方も多くいます。
矢野さんのピアノ弾き語りを、
もし聴いたことがなかったら、
このアルバムをおすすめします。
矢野さんだけじゃなく、ピアノも歌う、
ほかではあじわえない音が聴こえてきます。
しかも今回は矢野さんにとってもはじめての
「ベヒシュタイン」というピアノを使用しています。
YUKIさん、フジファブリックさんの歌など、
カバー曲もたくさん収録されています。
初回限定盤には、メイキング映像や、貴重なライブ映像、
ほぼ日アプリ「ドコノコ」の投稿参加企画で制作された
シングル「Soft Landing」のミュージックビデオも
ついています。
iTunes
Amazon(CD+DVD)


The Covers(出演番組)
BSプレミアム 金曜午後10時放送 ※最終週
HP:nhk.or.jp/thecovers/
twitter:nhk_coversnhk_covers

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