世界を回って、故郷で見つけた。NAOTの宮川敦さんにイラストの福田利之さんがインタビューしました。
ほぼ日刊イトイ新聞
3 loop & loopは「ありがとう」の輪。
福田
いまは奈良と東京2つのお店のほか、
フェスとかにも出されているんですよね。
音楽フェスに靴屋さんって
ちょっと面白い発想ですよね。
宮川
僕自身、音楽が好きで、
FUJI ROCKによく行っていたんです。
だから音楽が自分の仕事と一緒になったらいいな、
と思っていたんですが、
思い切ってこちらからコンタクトをとったら、
どうぞってお返事をいただいて。
だから音楽フェスへの出店は、
自分の楽しみを半分入れての仕事です。
「ほぼ日」は楽しむのが上手だなって思うんですが、
僕の中にもちょっとだけ
「ほぼ日」が入ってると思うんです。
僕自身、仕事が自分の生活と密接に関係しているから、
仕事を通じて「楽しむ」っていうことをしたい。
だからフェスにも出てみるんです。
「こんな所になんで革靴屋が?」
っていう感じのお客さんもいますが、
意外と好意的に見てもらったりして。
福田
そういう所に躊躇なく
オファーできるんですよね、宮川さんって。
悪く言うと、ズケズケと、
っていうことになるんですが、
そういう感じではないんですよ。
考え方が大陸的というか、
コスモポリタンな感じというか。
ここ東京店のこけら落としの時も、
この狭い所で高野寛さんが
ライブをやってはった。
宮川
奈良にライブに来られた時に観に行って、
「この人すごいな」と思って、
サイン貰う時に、「是非、なんかご縁あれば、
よろしくお願いします」って言ってたんですけど、
東京をオープンする時、
「『その時』って、今じゃないかな」と思って
高野さんにメールを送ったんですよ。
長い熱烈オファーのメールを。
よくOKくださったなって思います。
福田
NAOTの靴の魅力、物の持っている力、
そしてそういうものを販売してるお店、
というところで、信用があるんだと思います。
そこに宮川さんの独特な人徳が加わるんですよ。
宮川
好きなものって、ジャンルが違っても、
どこか点と点でつながっているんじゃないかなって、
最近思っているんです。
福田さんともそうですが、
出会うべき人とは絶対どこかで出会うな、って。
福田
それが、「loop & loop」っていうことですね。
宮川さんの会社名。
あ、いまうまくつなげましたよ僕!
▲鹿が跳ねまわっているようなイメージでロゴを作画したという福田さん
宮川
ありがとうございます。
NAOTってお客さんから
「ありがとう」って言ってもらうことが
とても多い靴なんですよ。
不思議ですよね、こちらがありがとうなのに‥‥。
でもそれが僕の生きがいというか、
やりがいになっていて、
だから「ありがとう」っていう輪っかの中に、
自分たちが居れたらなぁと、
そういう想いで付ました。
「ありがとう」と言って、
「ありがとう」って言ってもらって、
生活できるって、仕事としては
ムチャクチャ幸せなことです。
それって、僕が20代の頃に働いていた
外資系商社でも一緒だったはずなんですが、
その時には全然気が付かなくて、
ノルマに追われて「売らなければ」と、
そういう世界でした。今になって、
「本当は仕事ってそこじゃなかったなぁ」
と思います。
福田
なるほど。
やっぱりあの旅は必要だったんですね。
──
でも、外資系商社で培ったことが、
きっとイスラエルとの交渉にも活きたのではないですか。
宮川
そうですね、たぶん、やりとりとか。
英語はそんなに流ちょうではないんですが。
福田
宮川さんは年に1回はイスラエルに行って、
1週間くらい、向こうの人と
ガチで交渉をしてくるんですよ。
日本人向けの商品開発であるとか、
好きなデザインの相談とか。
向こうは向こうで「これがいい」と考えるところを、
「いや、それは日本人には」って。
その1週間でヘトヘトになって帰ってきはります。
──
福田さん、よく知ってますね(笑)!
福田
ふふふ。
イスラエルって、僕ら、
よくわかってないじゃないですか。
そういう所でちゃんと商売されてるっていうのって、
すごいなあと思うんです。
こういう経験をすると、向こうの国への理解も
また深まるんちゃうかなという気がするんです。
(つづきます)
2016-11-17-THU