- ──
- HUISっていうブランド名には、
何か由来があるんですか。
- 松下
- 家族みんなで着られる服っていう感じで、
ハウス、っていう名前にしました。
- ──
- HUISさんのお洋服の特徴は、
ワンサイズっていうのがまず衝撃的で。
しかも、着た人それぞれに似合う。
なぜなんだろうって思うくらい。
- 松下
- それはやっぱり、生地のよさですよ。
もうずっとお話ししてますけど、
シャトル織機で織られた、
しなやかで落ち感がある生地なんですね。
細番手の高級な糸を高密度で織ってますから、
生地をたくさん使っても軽いですし、
薄手でも適度なハリがあるから、
すっきりしたシルエットになるんですよ。
- ──
- サイズの制約がなければ、
より多くの人に生地を感じてもらえますね。
- 松下
- 僕、今でも定期的に売り場に立つようにしていて、
そうするとお客さまの声が聞こえるんですよ。
試着して、ここがきついわ、とか
こっちはもっとスッキリできないかな、とか。
そうやって、お客さんのニーズと生地の強みを
ミックスできるようになっていきましたね。
- ──
- 店舗は、いまではどのくらいあるんですか?
- 松下
- 直営のところはショールームと言っていて、
いま全国に6か所あります。
それから、商品を取り扱っていただいている、
セレクトショップや、イベント出展している
百貨店が全国にあります。 - あと、うちの特徴かなと思うんですけど、
パートナースタッフって言って、
販売を手伝ってくれる方が20から30名ぐらい、
各地にいるんですよ。
- ──
- 日本中に。
- 松下
- そう、札幌、関東、関西みたいに
その場所その場所でチームができてて。
遠州織物やHUISに共感してくれて、
産地ってすごいんだよっていうことを
伝えようっていう気持ちのある人が
自然に集まってきた感じですね。
- ──
- みんな、志があるんですね。
- 松下
- 伝え手ですよ、産地に必要なのは。
売り場での伝え手が一番大事だと思います。
- ──
- お客さんを前にして、伝える人たちが。
- 松下
- そうそう。
うちって、ウェブでの販売もしているんですけど、
売り場での接客コミュニケーションを通じて
価値を伝えることをいちばん大事に、基本にしていて、
それがウェブに循環していくって考えてるんです。
- ──
- 産地のことを、服をとおして、言葉も添えて
伝えていくのがHUISさんの大きな目的なんですね。
生地産地の奥深さを、もっとみんなに。
- ──
- この先は、どんな風に考えてらっしゃるんですか?
- 松下
- とにかく、遠州織物がすごいっていうことを伝えたい。
産地の情報って、こんなに楽しいのに、
一般のお客さまがあまりにも知らないんですよね。 - 日本人って超ラッキーなんですよ。
日本だからこんなすごい生地ができる。
たとえばシャトル織機って、海外に持っていったとしても
扱える人がいないんですって。
日本の職人じゃないと、できないんです。 - 遠州のほかにも全国各地に素晴らしい生地産地があって、
そんな素晴らしい生地を楽しめるのに、
みんなが知らない、知ってもらえないまま、
消えてなくなっちゃってる産地や技術がある。
もったいないです。
なくならないうちに知ってもらわないと。
- ──
- そこは、糸編の宮浦晋哉さんと同じ考えですね。
- 松下
- そうですね。
宮浦さんとは理念が一致してるんです。
宮浦さんとずっと付き合ってるから
余計そう思うようになったのかもしれないですけど。 - 自分たちの活動を通じて、今まで目に見えなかった、
奥深い、生地産地っていう世界を
多くの人に伝えることができたらいいですね。
地域産業の振興のために。
- ──
- 松下さんは、アパレルとは違う視点から入ってますよね。
ちょっと引いた視点、っていうのかな。
それは市役所にお勤めだった経験から?
- 松下
- 行政にいた経験が大きいですね。
たとえば、いま、棚田を借りて、
綿花を育ててもらってるんです。
市役所にいたころ、農林水産業の振興を
担当していたんですけど、
そんなご縁もあって、地元の農家さんと組んでね。
- ──
- 農家さんと?
- 松下
- そう。綿って、麻もそうですけれど、
農産物なんですよ。
そもそも農業なんだ、って伝わらないんですよね。
でも、繊維業のはじまりって、そこなんです。
地域産業なんですよ。
- ──
- そう考えるとHUISさんも、
お洋服は売ってるけど地域産業なんですね。
- 松下
- そう、地域産業って言えますね。
地域産業の振興をしてるのは、ずっとそうですね。
本当に、日本の繊維産地はどこでも、
何か動かないと消えてなくなっちゃう、
それは間違いないと思うんですよ。 - 国際的に考えても、繊維業って
発展途上にある国が多くを担う産業なんですよね。
でも日本は特殊で、遠州のように技術を磨いて
差別化して今も生き残っている産地がある。
それは残ったほうが、
日本人の幸せにとっていいと思ってるんです。
とにかくまずは伝えないと、です。
- ──
- HUISのお洋服を着てもらうことで、
伝えることができそうですね。
ありがとうございました。
明日からは、HUISの生地を作っている、
古橋織布さんのインタビューをお届けします。
(つづきます)
2024-04-09-TUE